【中山金杯】7歳レッドガラン、巧みに重賞初制覇! スローだけど持久力勝負、後半1000mのロングスパート合戦

勝木淳

2022年中山金杯のレース展開,ⒸSPAIA

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ゆったり進んだ前半1000m

新年競馬はじめの金杯。中山は逃げる牝馬2頭とトップハンデのトーセンスーリヤが真ん中の枠に集まり、読みづらかった。ハナを切りたいロザムール、引いてもいいシャムロックヒル。これらを行かせて控えたいトーセンスーリヤ。戦前の厩舎コメントからはそんな絵が浮かびあがる。正月から推理しがいのある駆け引きだった。

その先手争いは戦前のコメントとは裏腹にシャムロックヒルが主張。早々にロザムールの前に入り、ハナを決めた。そのロザムールはわずかだがスタートダッシュで劣った。その内から予想通り2頭を行かせ、3番手のインに潜ったのがトーセンスーリヤ。ここまでは隊列が比較的すんなり決まり、スタートから12.5-11.7-13.4-12.1-12.3と1、2コーナーで13秒台が刻まれるスローペース。1000m通過1.02.0は同条件の最終レース2勝クラス1.02.2とほぼ同じ。単調な流れだった。

しかし、最後、先行勢はみんな苦しくなり、その背後にいたレッドガランや後ろの馬群にいたスカーフェイス、ヒートオンビートが上位を占めた。一旦先頭のトーセンスーリヤすら踏ん張れなかった。その要因は後半1000mのペースアップにあった。静かすぎる前半1000m1.02.0に、後方にいたジェットモーションが好位を目指して進出。これでみんな目を覚ました。やはり22年初の重賞、このままではまんまと逃げきられるという気持ちが強い。

選択肢を広げたレッドガラン

残り1000m標識通過後から一気にペースアップ。後半1000mは11.0-11.2-11.6-11.9-12.4。3コーナー手前で記録した最速11.0は、その前の200mより1.3秒も速い。シャムロックヒルが押し寄せる後続を突き放そうと抵抗、4コーナー手前までに好位勢はみんな脚を使ってしまった。結果、1000mのロングスパート合戦になり、先行勢は坂をあがって脚を失くした。

こうした攻防のなか、無理せず好位のイン、トーセンスーリヤを追走する形で動かなかったのが勝ったレッドガラン。3、4コーナーでひと呼吸置いたことが勝因だった。前にいるトーセンスーリヤは小回り得意、立ち回りの上手な馬。同馬が4コーナー出口でうまく外を目指して動いたタイミングでレッドガランも進出開始。先に抜け出したトーセンスーリヤの外、アトミックフォースとの狭いスペースを抜け出すタイミングも見事。ここ3戦連続騎乗していた斎藤新騎手の、馬を信頼しきった騎乗だった。

レッドガランは2000m戦初勝利がうれしい重賞初制覇。戦歴をたどると、距離というよりコーナー2回の外回りコースへの出走を選択、自然とマイル前後が多くなった印象。昨年は中京の京都金杯6着。翌年に中山金杯勝利というのは珍しい。

トーセンスーリヤを目標にした立ち回りなどを見る限り、小回りコースは問題ない。後半1000mが58.1と極端に速く、ロングスパート合戦になった、中山でしばしば発生するスローの持久力勝負を制したので、距離もこなせる。新味をみせたことで、今後の選択肢も広がった。7歳馬だがキャリアは21戦。まだまだやれる。

追い出しを待たされたヒートオンビート

2着はスカーフェイスが差して最後に先行勢をとらえた。Cコース替わりは内側の芝がよくなるというより、コーナーが緩く、インが立ち回りやすく、外を回ると距離ロスにつながるという作用が大きい。だからこそ中山金杯は昨年まで8枠【0-1-1-22】。不利な17番からの好走は目につく。ただし、好位勢が早めにペースをあげる競馬にうまく乗った、いわゆる遅れ差しがハマった印象。次も好走できるとは言い切れない。

スカーフェイスは前走チャンレンジC5着。このレース、同じ芝2000m戦で前後半1000m1.02.9-58.1の緩い流れ。スカーフェイスは4コーナー後方2番手から外を回って上がり最速33.9を記録。今回の2着と合わせ、重賞通用の力は示した。とはいえ、どうしても好走は流れ次第。展開を考えて買いたい。

3着は1番人気ヒートオンビート。上記のチャンレンジCは2着。今回も中団インで流れに乗れた。しかしペースが上がった3コーナー。外から馬が来てスペースを失い、追い出しを4コーナー出口まで待たされてしまった。その間にレッドガランに勝負を決められた。鞍上ももっとじわじわと進出したかったはずで、もったいなかった。

5着トーセンスーリヤは流れを考えれば、巧みな立ち回りで一旦、外から先頭の場面を作るなど内容は濃かった。レッドガランと同じ7歳、健闘を称えつつも、こちらは大井出身でキャリア37戦。最後に粘り切れず、ヒートオンビート、タガノディアマンテに捕まり5着は状態下降の可能性も頭に入れておきたい。実績馬、崩れない脚質のため、GⅢなら上位人気に推されるので、あえて嫌ってみてもいいかもしれない。

2022年中山金杯のレース展開,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


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