【中山金杯】内有利の傾向ならトーセンスーリヤが有力 穴馬はアトミックフォース

ⒸSPAIA
中山金杯は内と前が有利な傾向
2021年はウインイクシードが11番人気で3着、2020年はテリトーリアルが11番人気で3着、2019年はタニノフランケルが9番人気で3着…。これらの共通項は、内々を立ち回った馬であるということ。中山芝コースは前年12月の開催はAコース、年明けからCコースに変わるため、中山金杯は内々を立ち回れる馬が有利な傾向がある。
また、Cコースに変わることで馬場が高速化するため、ペースが上がらず逃げ、先行馬の押し切りが決まることもしばしば。ウインイクシードは2番手、テリトーリアルは最内枠を利して先団のやや後ろからラチ沿いぴったりの競馬、タニノフランケルは逃げである。
過去10年で2017年の一度だけ、ツクバアズマオーが追い込み勝ちを決めているが、この年だけ逃げ馬が向正面でペースを引き上げ、レースの後半最速がラスト4F目(11秒5)というタフな流れになったもの。
今回の中山金杯でロザムールがそういう逃げを打った場合は、一転して差し有利の流れになる可能性はあるが、2017年に6番人気で2着と好走したクラリティスカイも2番枠を利してラチ沿いぴったりの好位でレースを進めた馬だった。どう転んでも内枠有利は変わらない傾向なので、それを踏まえて予想を組み立てたい。
能力値1~5位の紹介
![]()
【能力値1位 タガノディアマンテ】
4走前の万葉Sでは大外15番からゲートをゆっくり出して最後方から2週目の向正面で捲って圧勝し、スタミナの豊富さを見せた馬。同馬はゲートの甘い馬で、4走前のように道中でペースが緩まないとロスを挽回できないという弱点があったが、2走前のステイヤーズSでは、13番枠から五分のスタートを切って、1週目の3角でハナを取り切る形。休養明けながら逃げて2着に粘った。
今回は長期休養明けで芝2000mが舞台。ここ2戦でゲートの改善は見せたが、前走のAJCCでは序盤で置かれてレースの流れに乗り切れずに敗退したように、今回の距離には不安がある。果たして前走の距離経験が今回にどの程度繋がるか。次走以降の長距離戦が目標のように感じる。
【能力値2位 ウインイクシード】
一昨年の中山金杯では2着、昨年の中山金杯では3着しているように、このレースには高い適性を示している馬。一昨年は平均ペース、昨年はスローペースだったが、ともにゲートの上手さと二の脚の速さで好位の内を取って好走している。昨夏は関越S2着で上々の滑り出し。次走のケフェウスSは、開催が危ぶまれた台風一過の時計の掛かる馬場を、逃げたことで苦しくなったもので納得の敗戦。
しかし、前走のカシオペアSは前半4F49秒9-後半4F45秒2の超絶スローペースを2列目の内でレースを進めて伸び負けの形。瞬発力不足が敗因なのだろうが、ラスト1Fの坂でも前との差を詰められない不甲斐ない敗戦だった。今回は適性の高いCコースの中山芝2000mが舞台になることは確かだが、過去2年は12月に順調にレースを使われていた。今回は10月からレース間隔をある程度開けての一戦。それがどう出るか。
【能力値3位 ヒートオンビート】
昨年は目黒記念とチャレンジCと重賞で2度2着。昨春の目黒記念は前半5F64秒0-後半5F58秒0と前半が極端に遅いペースだったが、同馬は3番枠から3列目まで上がって行く形。向正面ではダンスディライトに締められて動くに動けず、前に離される場面があったが、前半で前の位置を取ったことは鞍上の好判断であり、これが結果に繋がっている。
昨秋の初戦、京都大賞典は向正面で一気にペースが上がり、レースの最速が6、7F目という、かなりタフで前が厳しい流れ。好位の外からキセキをマークしながら勝ちにいく競馬をしたため8着に失速した。
しかし、休養明けで厳しいレースをしたことで持久力が復活し、前走のチャレンジCでは2着と好走した。前走も超絶スローペースだったが、やや出負けを挽回しての好位の中目と位置取りも悪くなく、前走でしっかり走り切った感がある。さらなる上積みがあるかは微妙なところだが、鞍上・横山武騎手の勢いはかなりある。
【能力値3位 レッドガラン】
2019年の逆瀬川S、2020年の大阪城Sを勝利しているように芝1800mにとても高い適性を示している。逆に芝1600mでは少し届かず、芝2000mだと最後に伸び切れない結果になっている。昨年も芝1800mの前々走・カシオペアS4着時が一番高い指数で走っている。
デビューからここまで芝2000m戦で最高指数を記録したのは、後方待機策に徹した昨年の白富士S3着時だが、このレースでは前に行った2頭がプレッシャーを掛け合う形で、ペースが平均まで上がっている。その時のように、脚をタメる競馬ができるかが鍵となるが、ある程度は展開の助けも必要なところ。しかし、例年の中山金杯の傾向を考えると、脚をタメたとしても馬圏内に届くか微妙だ。
【能力値5位 トーセンスーリヤ】
昨夏の函館記念はレッドジェニアル、マイネルファンロンが競り合って前半3F34秒4、5F58秒5というかなり速い流れを、やや離れた単独3番手からレースを進め、3角外からじわりと上がり4角先頭から、2着馬を3馬身突き放して完勝。とても強い内容で自己最高指数を記録した。
前々走の新潟記念では五分のスタートを切ったものの、意識的に位置を下げて中団外目で脚を温存。3~4角では中団外々を回し、直線ではさらに馬場の良い外に出し、ラスト2Fでは先頭。しかし、そのさらに外から強襲したマイネルファンロンに差され、クラヴェルとの2着争いをハナ差で制しての2着確保。前々走は鞍上の好判断が功を奏しての2着だが、自己最高指数を記録した後の一戦で崩れずに走れたのは、地力強化の表れでもある。
前走の天皇賞(秋)は、グランアレグリアが最後に止まり、先行したカレンブーケドールも伸び切れなかったように、午後から降り出した雨の影響を受けて、実走ペース以上に先行馬には苦しい流れ。各馬が最後の直線で馬場の良い外に出していく中、先行策から最後の直線で馬場の悪い最内を通しては15着失速も仕方のない決着だった。今回のハンデ57.5kgはちょっと厳しいようにも感じるが、巻き返しの可能性は十分ある。
【能力値5位 スカーフェイス】
5走前に2勝クラスを勝利した馬だが、昨年10月の元町Sでは8着ながら上がり3Fタイムはメンバー中2位と能力の片鱗を見せると、前々走の岸和田Sで3勝クラス勝ち。前々走は外差し馬場を利したとはいえ、4角では内から8頭分外と、かなり外を回るロスがありながら、内目から差した2着馬ダノンレガーロとほとんど変わらない上がり3Fタイムで、同馬をクビ差差し切っての勝利。
前走のチャレンジCでは、上がり3Fタイム1位タイの脚で5着と上昇中の馬。前走は前半ペースが62秒9と遅く、3~4角でもさほどペースが上がらないという前有利の流れ。こそで上手く位置を押し上げられれば、あとひとつは着順を上げられたと推測される内容だった。今回は中山芝2000mが舞台。特に中山金杯は末脚が武器の馬には厳しい舞台ではあるが、先々は重賞でも面白い存在になっていきそうな馬だ。
穴馬は、極端な芝2000m適性を示すアトミックフォース
芝2000mの未勝利戦を勝利し、フリージア賞、精進湖特別、アメジストSと勝ち鞍は全て芝2000mとかなり極端な距離適性を示す馬。一昨年の芝2000mの新潟大賞典でも平均ペースで逃げてトーセンスーリヤの2着と好走した実績がある。
近2走はその得意の芝2000mで凡退しているが、前々走のオクトーバーSは2角までの距離が130mしかない東京芝2000mの17番枠で、前の位置が取り切れず、終始好位の外々とロスの大きい競馬になったことが一番の敗因。
前走は時計の掛かる11月阪神芝2000mのアンドロメダS。先行馬にはとても厳しい馬場状態だったが、道中2番手から最後の直線序盤で先頭の競馬では、苦しくなって当然のこと。また、復調気配を感じさせる行きっぷりだった。前走で厳しい流れを経験したことで、今回での粘りも増すだろう。もともとの力量から考えて、今回は十分にチャンスがあると見る。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)トーセンスーリヤの3走前の指数「-22」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
《関連記事》
・【中山金杯】外枠大不振、前走GⅠ組イマイチ 一番福を呼ぶのはヒートオンビートだ
・【京都金杯】コース傾向徹底検証! 浮上するのは左回り得意のザダル
・【中山金杯】新年を占う東の金杯の歴史 ここで覚醒、重賞6勝を挙げた2015年ラブリーデイ
