【有馬記念】女王クロノジェネシスの意地か、エフフォーリア世代交代か? 京大競馬研は人気2頭の一騎打ちと予想

京都大学競馬研究会

有馬記念インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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1年の総決算グランプリ

12月26日(日)に中山競馬場で行われる有馬記念(GⅠ・芝2500m)。今年はグランプリ4連勝を目指す女王クロノジェネシスと、3歳にして天皇賞(秋)を制して臨むエフフォーリア、他にもハイレベルな3歳馬からタイトルホルダーやステラヴェローチェなど、好メンバーが揃った。クロノジェネシスが意地を見せるか、それとも3歳勢による世代交代となるのか、過去の傾向も踏まえながら予想していきたい。


意外と差しが決まる

過去10年有馬記念通過順,ⒸSPAIA


まずは有馬記念における3着内馬のコーナー通過順について見ていく(過去10年)。2014年から2017年にかけては比較的先行勢が残っていたが、それ以外の年に関しては後方からの追い込みやマクリが決まっている傾向だ。

特にここ3年は好走馬9頭のうち6頭が2角で二桁番手であり、先行勢は厳しい結果となっている。これは、中山2500mというコースが比較的小回りであるため、強い馬が早めにスパートすることになりやすいからだと思われる。そうなるとやはり楽逃げしたい先行勢は苦しくなり、ギリギリまで脚を溜められる後方勢にチャンスが巡ってくるのだろう。

また、2014年から2017年では先行勢が健闘しているが、このうち3度はキタサンブラックが出走している。地力で残っていたとも言えるうえに、他の有力馬もキタサンブラックを意識するので後ろから運ぶことはあまりしない。つまり強い馬が先行してそのまま上位に入っていたと考えるのが自然だろう。

今年のメンバーで実績的に上位なのはクロノジェネシスとエフフォーリアだが、どちらも好位の後ろや中団から運ぶタイプ。3角から早めにレースが動きそうなので、先行勢は苦しい競馬を強いられるのが濃厚であり、いかに粘れるかがカギになってくる。


8枠以外なら大丈夫

過去10年有馬記念枠別成績,ⒸSPAIA


次に枠順別成績(過去10年)を見ていく。すると、1枠【1-1-1-16】、2枠【1-2-0-16】、3枠【2-2-0-15】、4枠【2-1-1-16】、5枠【1-2-3-14】、6枠【2-1-1-16】、7枠【1-1-3-15】、8枠【0-0-1-19】と、8枠以外はどの枠も万遍なく好走馬を出しており、あまり気にする必要はなさそうだ。

公開抽選が始まった2014年は抽選で選ばれた順に好きな枠を選べる制度だったが、最初に4番を選んだジェンティルドンナが1着、2番目に6番を選んだトゥザワールドが2着。この印象が強く、圧倒的に内枠有利だと思っていたが、意外と外枠も好走しているという印象だ。ただ、8枠は連対馬が1頭もおらず、3着が1度あるのみ。大外枠に入ったタイトルホルダーにとっては嫌なデータだ。逆にクロノジェネシスとエフフォーリアの上位2頭は真ん中あたりの好枠となり、この点に不安はない。


上位2頭の一騎打ちだが、警戒すべきは追い込み馬

以上を踏まえ、本命はクロノジェネシス、対抗をエフフォーリアとする。ただこの順位付けについては、印を打つうえで便宜上つけているものの、全くの横並びという評価だと受け取っていただきたい。

まずはクロノジェネシスについて。2走前の宝塚記念では、それまでとは異なり好位につけ、直線であっさり抜け出して完勝だった。昨年の天皇賞(秋)ではスタート後に接触しやや後手を踏んだがアーモンドアイと差のない競馬、有馬記念では3角から動いていって全てをねじ伏せる横綱相撲。これらの内容から、古馬の中では完全に勝負付けが済んでおり、実力という点ではエフフォーリア以外に負けることはまずないと考えている。

前走の凱旋門賞は欧州の雨馬場で流石に厳しかったが、それでも大崩れすることなく粘っており十分力を見せていた。今回は凱旋門賞以来で状態面がカギとなるが、正直完璧な状態ではなさそう。調教師のコメントは弱気で、疲れが多少残っているのかもしれない。ただ、この馬に関してはこれまで国内で4着以下は1度だけであり、戦前に不安要素がいろいろ囁かれても常に好走してきた馬でもある。調教に関しても時計自体は悪くなく、中間にどこかを痛めたという類のものではないので、力を出せる仕上がりにはあるだろう。地力の高さでねじ伏せることは十分可能だ。

エフフォーリアについては前走の天皇賞(秋)の内容がとにかく強かった。中団前寄りの追走から、直線で良く伸びて完勝。どこまでいっても抜かされなさそうなくらいで、終わってみれば力が抜けていたと言ってよい内容だった。予定通りの天皇賞(秋)→有馬記念という余裕を持ったローテーションも好感が持て、クロノジェネシス以外の馬に負ける姿は正直想像できない。また、比較的前で競馬ができるタイプで、皐月賞のように器用な競馬もできるので中山2500mのコースも無難にこなせそうだ。5枠10番という枠も申し分なく、力を出せる条件は揃った。レベルの高い3歳馬で、来年以降は不動の主役を張っていくべき馬。恥ずかしい競馬はしないだろう。

上位2頭について、実力とコース適性に関してはクロノジェネシスの方が上だと捉えているが、現時点での状態とローテーションに関してはエフフォーリアのほうが上だとみており、これらが相殺されて全くの互角という考えである。また、印の上でクロノジェネシスを上位にしたのはこの数日で状態が上がる可能性に期待したからだ。基本追い切りはレースの数日前に行いその後は軽い調整となるが、これは超回復という効果を狙ったもの。であれば最終追い切り以降に状態を上げてくることも十分にあり、そうなればクロノジェネシスの方が僅かに力上位だと考えている。

3番手にはアサマノイタズラを推したい。前走の菊花賞は9着に敗れたが、タイトルホルダーの単騎逃げにまんまとやられた形。逃げた馬が35.1の上がりを使った中で大きく離れた最後方を追走していては流石に届くわけがないので参考外だ。そもそもこの馬は一発に賭ける競馬しかできない面もあるので前走の敗戦は仕方なく、出番ではなかったと考えておけばよいだろう。

2走前のセントライト記念は逆に流れが向いたが、それでもソーヴァリアントを捉えきって勝ったのには十分価値がある。ソーヴァリアントは次走のチャレンジカップで圧勝しており来年の主役候補と考えると、展開の助けがあれば一発があってもいい。その展開についても、前述の通りエフフォーリアやクロノジェネシスが早めに前を捕まえにいく形になりそうなので、後ろの馬にチャンスが巡ってくる。イチかバチかの戦法がハマれば馬券内に来るチャンスは十分だ。

4番手にアカイイト。前走のエリザベス女王杯は、有力馬に不安点が多く力を出し切れなかったことも味方したが、それでも4角で大外から上がっていって2馬身突き放した点は純粋に強かった。スタートが全く決まらない馬でいつも後ろからの形になってしまうが、アサマノイタズラの所でも述べたように有力馬が先に動いていく流れなら、追い込み馬にもチャンスがある。また前走で早めに動く競馬ができたのは中山芝2500mを走る上でプラスに働きそうで、もしかしたらそのような競馬が実はこの馬に合っている可能性もある。前走がフロック視されて人気しないようならなおさら狙う価値がある。

5番手にステラヴェローチェ。前走の菊花賞は神戸新聞杯の疲れもあったようで、後方から伸びるも4着まで。レースの流れもタイトルホルダーに向いた形で、仕方ない面も多かった。レベルの高い3歳世代のクラシックで3着→3着→4着と常に好走してきたのは能力の証で、追い込み馬だが安定感があるのも魅力的だ。春の2戦で正直エフフォーリアとの勝負付けが済んでしまっているのは否めないが、3着候補としては十分チャンスありだ。

タイトルホルダーは痛恨の外枠に入ってしまったこと、そして2強が早めに動いていく厳しい展開になりそうなことから今回は消しとしたい。

買い目については馬連◎-◯にかなり厚く張るのに加え、3連単◎◯→◎◯→▲△×を中心に勝負したい。また▲アサマノイタズラの一発に備えて、馬連▲-◎◯は押さえておく。オッズ次第となるが、◎-◯の馬連で最低限の利益を出しつつ、3連単で大きく上乗せを目指す配分にしたい。1年の総決算ともいえる有馬記念。ホープフルSも楽しみだが、是非とも有馬記念を当てていい気分で年越しといきたいところだ。(文:川崎)

▽有馬記念予想印▽
◎クロノジェネシス
◯エフフォーリア
▲アサマノイタズラ
△アカイイト
×ステラヴェローチェ

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で25周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。



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