【有馬記念】的中の鍵を握るのは1周目のペース! 先行・追込の有利不利を見極める展開予想

佐藤永記

有馬記念ペースと勝ち馬の2角位置

ⒸSPAIA

先行有利と単純に考えないほうがいい

有馬記念はちょっと昔までは「10番手以内にいないと厳しい」と言われていたレースで、東京で行われる天皇賞(秋)やジャパンカップとの違いを意識しよう、なんていうイメージのレースだった。しかし近年、傾向は年によって大きく異なる。前々決着の年もあれば追い込み殺到の年、混在している年や、クロノジェネシスのマクりが決まった昨年のようなこともある。単純に先行一辺倒で狙えばよい有馬記念はとうに終わっているのだ。

では展開が変わる一番の要因は何なのかを整理してみよう。まずは直近10年の有馬記念で、上位馬の決まり手と、スタート後100m~900mまでの「スタート後4ハロン」でのレースラップを比較する。すると、後方からの馬ばかりで上位独占となった4回のうち3回はスタート後4ハロンが、過去10年のうち上位4位以内に収まっている。つまり、前半が速いということだ。

なんだ、先行争いが激しければ追い込みが決まるという当たり前のことじゃないか。と思うかもしれないが、その当たり前が普通に起きている、とわかることは大事だ。

2019年はアエロリットがぶっ放したためスタート後4Fが過去10年で最速の45.4。2角10番手以下だった馬で7着まで独占し、9番手以内だった馬で8着以下を独占するという追込天国となってしまった。2012年は2位の47.1でアーネストリーが快調に逃げた結果、ゴールドシップ以下追込みが殺到。2013年はスタート後4Fが4位の47.4で、逃げたルルーシュが3角ですでに捕まる状況。そこに後方にいた馬たちが殺到し、4角ですでにマクりあげていた上位3頭は、2角10番手以下から4角4番手以内という内容だった。

例外も整理しておこう。後方勢殺到だったがスタート後4F順位が一番遅く49.6だった2011年は13頭立て。この年も逃げたのはアーネストリーだったが、700m地点からのラップは13.1-14.4-14.3という超スローだった。あまりに遅く頭数が少なかったこともあり、後方勢の追走が楽になり、勝ったオルフェーヴルの上がり3Fが33.3という中山らしくない爆速上がり勝負になったことから「例外」にしてよい。

逆に、スタート後4Fが47.3と3番目に速かった2016年は900m地点から13.4-12.8-12.9とこれも極端に遅くなり、速かったスタート後4Fから急激にペースが落ちたというアップダウンの激しい年だった。これにより後方勢が脚を削がれ、先行馬での上位決着という結果になった。

スタート後4Fは位置として1周目3コーナー入口から直線中程まで。つまり、ここのペースが速そうなら後方有利、遅そうなら先行有利と判断ができるということだ。

今年は強力な逃げ馬が出走!ハイペースで追込天国

というわけで今年はどっちだ?となるわけだが、逃げる可能性のある馬はアリストテレス、キセキ、タイトルホルダー、パンサラッサの4頭だろう。といってもアリストテレスは、前走ジャパンカップで初めて逃げたもののキセキに3角までに捕まっており、逃げ策に自信が持てるような内容ではなかった。だが、残る3頭は逃げ策を希望しているところがありそうだ。

キセキは引退レースでどう走るか注目されるところ。先行策も可能な馬だが引退レースで思い切った勝負に出る可能性は捨てきれない。パンサラッサは逃げで連勝し福島記念で初重賞制覇。現状うまくいっている作戦を大舞台で変える判断はあまりないと思われる。そしてタイトルホルダーだが、菊花賞を逃げて制しているうえに3勝全てが逃げ切り勝ち。控えたときには着を落としているので、ここで引く判断は考えにくいところだ。

そう考えると今年の有馬記念が前半スローになる可能性は低い。ならば、昨年マクりあげて勝っているクロノジェネシスや、差し切り勝ちでエリザベス女王杯を制したアカイイト、天皇賞を33.2で差し切ったエフフォーリア、菊花賞ではタイトルホルダーに完封されてしまった3歳勢のアサマノイタズラとステラヴェローチェの後方勢、この5頭をボックスにして勝負してみたいと思う。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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