【香港国際競走回顧】グローリーヴェイズ、ラヴズオンリーユーがGⅠ優勝! スプリントではショッキングな事故も

緒方きしん

ラヴズオンリーユーが制した2021年香港カップ,ⒸThe Hong Kong Jockey Club

ⒸThe Hong Kong Jockey Club

日本馬2勝の香港国際競走

香港ヴァーズ、香港スプリント、香港マイル、香港カップと4つのGⅠが開催される香港国際競走デー。日本馬は2019年に2001年以来となる3勝をあげるなど、近年は絶好調。今年もグローリーヴェイズ、ダノンスマッシュといった香港実績馬に加え、ラヴズオンリーユーやピクシーナイトら有力馬が日本から遠征した。

今年は香港スプリントで多重落馬事故が発生するショッキングなシーンもあった。香港国際4競走を振り返っていく。

グローリーヴェイズが香港ヴァーズ2勝目をあげる

過去にステイゴールドやサトノクラウンが勝利した香港ヴァーズ。昨年は出走しなかった2019年の覇者グローリーヴェイズが参戦とあり、香港ヴァーズ2勝目が期待された。前年覇者であるアイルランドのモーグルも参戦、前年王者VS前々年王者という様相を呈していた。

レースは先手をとったリライアブルチームとステイフーリッシュがスローペースを作り出す。グローリーヴェイズは後方から折り合い重視の競馬を選択。各馬にらみ合いながらの競馬となった。

直線に入ると先行勢の一角パイルドライヴァーが先頭に立ち、ステイフーリッシュは一杯に。そのままパイルドライヴァーが押し切るかと思いきや、後方から勢いよく伸びてきたグローリーヴェイズが差し切った。積極的な競馬に挑戦したステイフーリッシュは一度は失速したものの、5着に粘りこんでいる。

決して後方に有利な展開ではない中で、余裕をもって追い出してしっかりと勝利したグローリーヴェイズの走りに、鞍上モレイラ騎手からの絶対的な自信を垣間見ることができた。グローリーヴェイズの曽祖母はメジロラモーヌ。歴史ある牝系が、香港の地で再び花開いた。

2021年香港ヴァーズを制したグローリーヴェイズ,ⒸThe Hong Kong Jockey Club

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大事故が発生した香港スプリントは地元馬が勝利

香港勢の層が厚いスプリント戦。2012年に日本馬として初めて香港スプリントを制したのが"龍王"ロードカナロアだった。ロードカナロアは翌年にも同レースを制すると、2020年には産駒であるダノンスマッシュが日本馬としてロードカナロア以来となる勝利をあげた。今年はそのダノンスマッシュが連覇を狙って出走したほか、牝馬のレシステンシア・3歳馬のピクシーナイトといった多彩なメンバーが参戦し、好レースが期待された。

レースでは地元のコンピューターパッチが先手を取り、それをクーリエワンダーら地元馬が積極的に追う激しい展開に。日本馬はレシステンシアが中団、ダノンスマッシュ・ピクシーナイトは後方で進む。4角出口付近の各馬が追い出しを開始したタイミングで、先行していたアメージングスターが故障発生により転倒。後続馬も続々と巻き込まれ、合計4頭が競走中止する大事故となってしまった。日本馬も、ピクシーナイトが転倒、ダノンスマッシュはうまく飛び越えたものの大きなロスを受けた。

事故に巻き込まれなかった馬たちはそのままレースを継続し、地元馬スカイフィールドが先頭でゴールイン。長く良い脚を使ったレシステンシアは2着に食い込んだ。これがラストランだったダノンスマッシュにとっては不完全燃焼な結果となった。さらにピクシーナイトや鞍上の福永祐一騎手は怪我を負ってしまった上、競走中止したうちの2頭が予後不良というショッキングな結末を迎えた。この世を去った2頭の冥福と、残された人馬が1日も早く元気な姿を見せてくれることを祈るばかりである。

2021年香港スプリントを制したスカイフィールド,ⒸThe Hong Kong Jockey Club

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香港マイルは地元のゴールデンシックスティが16連勝達成

香港マイルは前年覇者ゴールデンシックスティが参戦し、圧倒的な人気を集めた。昨年はアドマイヤマーズが3着に敗れているが、今年は4頭の日本馬が参戦し、リベンジを目指した。サリオスはダービー2着以来となるレーン騎手とのコンビを再結成。インディチャンプは香港スプリントでの落馬により福永騎手からスミヨン騎手に乗り替わりとなった。

レースが始まるとラッキーエクスプレスが勢いよく飛び出したものの、サリオスがポジションを上げていき先頭に。内枠の利を活かし、道中を引っ張っていく積極的な競馬を試みた。直線に入ると、ヴァンドギャルド・ティータン騎手が絶好のポジションから追い出し、サリオスも粘り腰を見せる。

しかし、一瞬やや包まれたかのように見えた大本命ゴールデンシックスティが間から抜け出すと、すぐに他馬は置き去りに。そこからは独壇場で、やや流れた展開になったこともあってか、後続に大きく差をつけての勝利となった。

日本馬最先着はサリオスの3着。同馬にとっては昨年の毎日王冠(1着)以来となる馬券圏内となった。次走、陣営のレース選びや作戦にも引き続き注目したい。ヴァンドギャルドは6着、ダノンキングリーは8着。また、ラストランだったインディチャンプは後ろからの競馬となったが、5着と意地を見せた。ステイゴールドの血を繋ぐ一頭として、種牡馬としても活躍が期待される。

2021年香港マイルを制したゴールデンシックスティ,ⒸThe Hong Kong Jockey Club

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香港カップはラヴズオンリーユーが大激戦を制し花道を飾る

2019年ウインブライト、2020年ノームコアと日本馬が連勝中の香港カップ。日本からはラヴズオンリーユーとレイパパレ、ヒシイグアスと有力馬が参戦し、日本馬による3連覇への期待が高まった。

レースはレイパパレが中団に待機する展開になり、ラヴズオンリーユーは前から5頭目あたりで先頭を伺った。ペースは穏やかなものになったが、あえて動こうとする馬も現れないまま直線へ。最初にグイッと抜け出したのはロシアンエンペラーだった。

しかし、そこから日本馬2頭が外から素晴らしい末脚を披露。後方から突っ込んできたヒシイグアスがやや勢い優勢かのように思えたが、ラヴズオンリーユーが内からもうひと伸びすると、先頭でゴールイン。見事、引退レースで花道を飾った。

来年が楽しみになる末脚を発揮したヒシイグアスは2着、中団からの競馬となったレイパパレは6着での入線となった。ラヴズオンリーユーと川田将雅騎手はチャンピオンとしての堂々たる競馬。併せ馬になってからの勝負根性も素晴らしく、日本馬として初の海外GⅠ年間3勝という記録もついてきた。

12月8日には日本馬として初めてGⅠ昇格後の香港カップを制したアグネスデジタルの訃報があり、二刀流の名馬に捧げる日本馬の勝利だったとも言える。年度代表馬争いをさらに激化させる、素晴らしい引退レースを見せてくれた。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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