【カペラS】モズスーパーフレア最後の逃走も高速ラップを刻む 捕らえたダンシングプリンス今後の可能性

勝木淳

2021年カペラSのレース展開,ⒸSPAIA

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芝もダートも変わらないスピード

19年北九州記念で3番手から競馬して以来、芝、ダート、GⅠであってもハナを譲ることがなかった快速牝馬モズスーパーフレアが引退を表明。最後の舞台は、ダート短距離でも屈指の序盤が速い中山ダート1200mカペラS。芝スタートから一気に駆け下りるこのコースで大外枠。モズスーパーフレアにさあ思う存分そのスピードを発揮してくれといわんばかりの舞台だった。

そしてモズスーパーフレアは、スタートを決め、ダートコースに入る地点で後続に1、2馬身の差をつけてハナへ。これしかない。6歳牝馬の迷いなき逃走は気持ちいい。同じ中山でも芝1200mのGⅠスプリンターズSで19年前半600m32.8、20年33.3を記録したが、カペラSの前半600mは32.8。芝で飛ばした19年と同じラップを刻むとは。芝もダートも同じペースで走る馬といえば、クロフネを思い出すが、そう多くは存在しない。モズスーパーフレアのスピードに改めて敬意を表したい。

猛ペースに対応したダンシングプリンスの成長

ダートで前半32.8となると、ついてこられる馬は限られる。後ろで展開待ちの追い込み馬とてこれでは脚が貯まらない。ハイペースも限度を超えると、先行勢の競馬になる。その典型だった。連続10秒台から11.9-12.0と芝のようなラップが刻まれ、そこについてきたのが勝ったダンシングプリンスだった。

逃げて圧勝した春の京葉Sは、前後半600m33.6-35.6で1.09.2(重)。マイペースで上手く上がりをまとめた印象だったが、昨年のカペラSで番手に控えて33.2-36.6を経験、3着に敗れたものの、中山ダート1200m特有の猛ペースへの耐性が徐々についてきた。モズスーパーフレアに唯一、ついていき、最後に自力で交わした。

父はスプリンターズS2着パドトロワ、父譲りの中山特有のハイペースに強い適性が活きた。父の産駒はこれが重賞初勝利。また管理する宮田敬介調教師は開業3年目で重賞初V。この春はグレートマジシャンを日本ダービーに出走させた関東の若手調教師。じっくりとローテーションを組み、馬の成長を促しながら管理する手腕がここで実を結んだ。 昨年、このレースで初重賞をかけたダンシングプリンスだが、きっちりリベンジを果たした形。馬はJRA未勝利で船橋へ転出、そこから6連勝で中央OP入り。その後はオープンのペースに苦しめられる場面もあったが、消耗を避けるようにじっくり間隔をとって再浮上。モズスーパーフレアの猛ラップに対応できたことで、これからはどんなペースでも短距離なら走れるのではないか。

3歳には厳しかった特殊な流れ

2着はリュウノユキナ。ダンシングプリンスについて行く形で粘り込んだ。このレースで相性のいい1枠から先行、上手に流れに乗った。これで今年、ダ1200mは【4-3-0-0】。以前はムラっぽいところもあった馬だが、好位差しが身について、すっかり安定した。乗り慣れた柴田善臣騎手からの手替わりも問題なかった。父ヴァーミリアンは8歳で川崎記念を勝ったタフさが特徴。まだまだダート短距離路線で楽しめそうだ。

3着は6番人気オメガレインボー。前走武蔵野S3着好走から1200mへの条件替わりはどうなのかと不安視されたか、6番人気は低評価だった。スピード不足で脱落する馬が多いなか、こちらは地力とスタミナを味方に最内を鋭く伸びてきた。それでも1200mは短く、適性は1600m前後、やはりフェブラリーSで狙いたい。

4番人気デュアリスト10着。9着ゲンパチフォルツァ、14着ミスズグランドオーと勢いある3歳勢は奮わなかった。ゲンパチフォルツァ、ミスズグランドオーは中山ダ1200mの経験があり、期待された面もあったものの、条件戦とはまったく違うペースになったことで、そうした経験が活かされなかった。

だからといって、これらの馬をこのコースに適性なしと判断するのは早計。今回はあくまで特殊なラップ構成、特に好位から進めたデュアリストとミスズグランドオーは普通の中山ダ1200mであれば、十分走れるはずで、カペラSの着順から人気が落ちるようなら狙いたい。

2021年カペラSのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。

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