【阪神JF】サークルオブライフ、春へ視界良好! スタミナを問われたレースから見えてくる適性とは

勝木淳

2021年阪神JFのレース結果,ⒸSPAIA

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ハイレベルな攻防は必ず桜花賞につながる

基幹距離であるマイルはスピードと持続力ともに求められ、長く速く走れる総合力が試される。牝馬クラシック戦線は桜花賞へ向けてマイルを舞台に戦いが続く。したがって同舞台の阪神JFは重要。その度合いは外回りコースが設置されて以降、上昇中。このレースの結果が桜花賞に結びつく。

ところが阪神マイルは、外回りコースの設置によってスローペースになるマイル戦もしばしば出現するようになった。外回りになったことで、短距離型が無理を承知で参戦というケースが以前より減り、どの馬も積極的に行きたがらない競馬が阪神JFでも増えた。

それでも19年レシステンシアは前後半800m45.5-47.2の超ハイペースを逃げて1.32.7。20年ソダシは46.8-46.3の持続ラップを好位から抜け出して1.33.1。ハイレベルな記録は必ずといっていいほど桜花賞につながる。

今年は連続開催の10週目。馬場状態は上記2年とは違う。開催が進んでもいい時計が出る絶好の馬場状態ではあるが、サークルオブライフの勝ち時計1.33.8はこの開催10週目の馬場を加味して考えたい。決してソダシの1.33.1に見劣るものではない。

タフな流れで最後まで伸びたサークルオブライフ

今年の前後半800mは46.4-47.4。確かに伏兵の逃げたダークペイジ、番手トーホウラビアンが3番手ウォーターナビレラ以下を引き離し気味だったので、後続はスローに近かったわけだが、行くだけ行った2頭を捕まえに行かなければいけないウォーターナビレラ、ベルクレスタら好位勢がレースをしっかり動かしたので、ラストは底力を試されるレースになった。決して軽いレースではない。

後半800mは12.6-12.1-10.9-11.8。直線入り口から坂下までの10.9で先頭を争った好位勢は最後の坂で苦しくなった。2歳牝馬にとって、10.9と最速スピードに乗ってからの急坂はさぞ苦しかったにちがいない。3番手から一旦先頭の3着ウォーターナビレラは立派。底力勝負だと最後に足りなくなるが、展開次第でマイル戦も十分戦える。決して距離が敗因ではない。苦しい競馬をしての3着は来年につながる。

勝ったサークルオブライフは戦前から“マイルは短い”というコメントが聞こえていた。アルテミスSも最後の最後にようやく間に合ってベルクレスタに届いたといった印象。万能型エピファネイアは桜花賞馬デアリングタクトを送ったが、そのデアリングタクトとてベストは中距離。サークルオブライフもいずれはマイルより長い距離を主戦場にするだろう。まして母の父アドマイヤジャパンはビワハイジ一族。父エピファネイアのシーザリオ一族との組み合わせでマイラーはちょっと考えにくい。それでも勝ったのはなぜか。

今回はゲートを決め、中団外目を追走。M.デムーロ騎手、これは自信があったと踏む。馬群に入れなくても不利さえ受けなければロスは構わないといった競馬だった。最後の直線は最速10.9の地点で中団の外。いい意味でズブさがあるので、厳しいラップ地点で全開にならず、遅れて徐々にエンジンに火がついた。バテない強みを活かし、みんなが苦しかった最後の急坂でもっとも伸びた。この持続力はオークスまで展望できる。得意とはいえないマイル戦で半馬身は快勝の部類。よほど好位に強力なライバルが現れない限り、桜花賞は再び大外一閃となっておかしくない。

勝ち馬と似た適性がある2着ラブリイユアアイズ

2着は8番人気ラブリイユアアイズ。スローの京王杯2歳Sで3着。戦歴からわりとタフなタイプであり、前走は牡馬相手、合わない軽い流れでの3着とプラスに考えたかった。今回はイーブンペースの持続力勝負になって、自身の長所をいかせた。この日もペースがあがった4コーナー付近では一旦手応えで見劣った。それでも最後の直線で再加速。こちらもサークルオブライフに似たイメージ。適性が似かよっていれば、桜花賞でワンツーという場面だってある。

4着、1番人気ナミュールは出遅れがすべて。そこから巻き返して序盤に脚を使い、それでも最後、状態がよくないインコースを伸びてきた。力は証明した。母サンブルエミューズは気性の難しい馬で、そこが災いしたか、最終的には短距離戦線へシフト。今回の出遅れがそういった母から譲り受けた気性によるものでなければいいが。

サークルオブライフの豪快な差し切りが強く印象に残ったレースではあったが、その分、ベルクレスタなど好位で流れに乗る組に物足りなさもあった。それは来年の牝馬クラシック戦線がソダシやレシステンシアのようなマイルに長けたタイプが少ない予感の裏返しでもある。サークルオブライフ中心は間違いないが、まだまだ桜花賞へ向けて新星誕生の余地は十分残されている。

2021年阪神JFのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。



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