【阪神ジュベナイルF】大混戦も成長著しいベルクレスタが有力 穴馬は前走でスムーズさを欠いたラブリイユアアイズ

山崎エリカ

2021年阪神ジュベナイルFCPP指数,ⒸSPAIA

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今年は群雄割拠の大混戦

毎週月曜日に『2歳馬ジャッジ』を連載させてもらっているが、今年の牝馬路線は群雄割拠で、昨年のソダシのような指数断トツの主役が存在しない。また、例年以上にスローペースの上がり勝負が多く、ラスト1Fで加速しているレースが多かったことが特徴。ここも持久力ではなく、瞬発力を活かしたい馬が多数揃った。

さらには近2走で逃げて結果を出したパーソナルハイは大外枠。逃げ馬が不在だった赤松賞では何とか逃げられたものの、本質的にマイルは忙しいので、逃げたくない他馬が逃げる可能性は十分ある。一気にペースが速くなるとも考えにくいが、隊列さえも読みにくい。

しかし、2歳戦、特に重賞は成長比べで前走指数が高い馬が、さらに指数を上昇させて上位争いに加わってくるため、前走で何かしらの不利があった馬以外は巻き返しにくいのがポイント。過去の阪神ジュベナイルFを見ても能力値上位馬が活躍しているレースだけに、今年もそれを前提に予想を組み立てたい。その中でも逃げ馬を見ながら好位でレースを進められる馬が優勢と見ている。

能力値1~5位馬の紹介

2021年阪神ジュベナイルFPP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ナムラクレア】
新馬戦は3着に敗れたが、その次戦でいきなりオープンのフェニックス賞を勝利。フェニックス賞は出遅れて最後方からとなり、それを挽回するため内から3角3番手まで上がっていく、かなりロスの大きい競馬ながら勝利し、能力の高さを見せつけた。前々走の小倉2歳Sは外差し馬場。中団外で脚をタメる競馬が功を奏した面があるが、2馬身差の完勝と強い内容だった。

前走のファンタジーSは3列目の中目でレースを進め、2番手でレースを進めていたウォーターナビレラを目標に外から位置を押し上げ、4角では並びかける形。直線序盤で内のウォーターナビレラに半馬身ほどスッと前に出られ、その差をわずかにしか詰められなかったが、これで3戦連続で最速の上がり3Fタイムを記録。

また、マイルの新馬戦は距離が長かったというよりは、外へ外へと行こうとする気性の幼さを見せたもの。距離が長くなるのは好材料ではないが、底を見せた感はない。今回のメンバーが相手でも折り合いひとつでチャンスは十分ある。

【能力値2位 ウォーターナビレラ】
8月の札幌新馬戦では、逃げてラスト2F11秒2-11秒4となかなか優秀かつ余裕を感じさせ勝利した馬。その次走のサフラン賞では2番手から抜け出し最速の上がり3Fタイムで勝利。前走のファンタジーSでも逃げ馬から離れた2番手でレースを進め、最短距離で楽にラスト1Fで先頭に立つと、ナムラクレアの追撃を振り切って優勝した。

同馬はこれで3戦3勝。前走では4着以下を引き離しており、なかなかの好指数勝ち。これまでの3戦とも1~2番手で勝利しており、内容的にケチをつけるところはない。今回不安があるとすれば前走のファンタジーSはなかなかの好指数決着だったこと。その疲れが残っているかどうかという点だ。

【能力値3位 ラブリイユアアイズ】
タフな流れの札幌芝1200m新馬戦を2番手から押し切って優勝した馬。6月の札幌芝1200mでは一番タイムが遅かったが、そういうレースで好指数だった馬は意外とその後の伸びしろが大きく、次走のクローバー賞も3角先頭から押し切る強い内容で勝利。その時点では現2歳世代の芝部門トップの好指数を記録した。

前走の京王杯2歳Sは、秋の東京開幕日らしい内と前が有利の決着。同馬は出遅れ、好位の中目まで位置を押し上げるなど、コントロールに苦労してブレーキ気味の競馬。3着と一応恰好はつけたが、クローバー賞で負かしたキングエルメスに先着を許したのは、やや脚を余すような形になったせいだろう。力量上位の存在だけに、スムーズな競馬なら当然チャンスはある。

【能力値4位 ベルクレスタ】
新馬戦では後に新潟2歳Sを勝利することになるセリフォスの2着。それも上がり3Fタイムは最速を記録しており、負けて強しの2着だった。このタイプの馬が次走の未勝利戦で化けた場合にはかなり強くなることが多いと新馬戦直後の『2歳馬ジャッジ』で評価したが、その期待に応えて次走の未勝利戦は2着馬に3馬身半差を付けての完勝だった。

内枠の前走のアルテミスSは、差し競馬の前2走から一転してハナを狙っていく競馬。序盤で一旦先頭に立ったが、内と外の馬に競り掛けられたため、ブレーキをかけて控え、離れた3番手から。攻め過ぎたり、抑え過ぎたりとスムーズな競馬ではなかったが2着と、期待を超える成長を感させた。

同馬が2着だった新馬戦は超スローペース。出遅れて後方から中団外々を追走し、ペースが上がって行く3~4角でも外々とロスの大きい競馬。それを好位の内目で立ち回り、来週の朝日杯FSでも有力視されているセリフォスと1馬身半差。好位でレースを運べること自体が才能ではあるが、セリフォスよりも強い内容だったと言えるだけに、ここでもかなり有力な潜在能力の持ち主と見る。

【能力値4位 キミワクイーン】
6月東京の新馬戦ではラスト2F10秒8-11秒0の流れを勝利し、潜在的なスピード能力の高さから『2歳馬ジャッジ』で高い評価をした馬。前走の1勝クラスでは来週の朝日杯FS出走予定の逃げ馬オタルエバーを好位から差し切り、能力の高さを証明した。

前走はオタルエバーの後ろで同馬を目標に立ち回ったもの。馬体重8kg減が示すように、体も絞れており、さらなる上積みとなると簡単ではなさそうだ。しかし、新馬戦で見せた高いスピード能力から、ここでさらにもう一段階上昇というストーリーも考えられる馬ではある。

穴馬は潜在能力最上位のナミュール

ナミュールは5F通過65秒6の超スローペースとなった新馬戦を2番手から流れに乗り、ラスト2Fは10秒8-10秒7と驚きのタイムで勝利。破格のスピード能力を感じさせた。前走の赤松賞はそのスピード能力を瞬発力に転化させた。レースはパーソナルハイが単騎で逃げ後続との差を広げる展開。最後の直線半ばでもその差が詰まり切らず、大勢が決したと思われたところから、一気に差を詰め見事に差し切った。今回出走メンバーの中でも高いスピード能力から将来性は最上位と言っても良い馬だ。

新馬戦で同じような勝ち方をした2018年のダノンキングリーがその後、そこまで人気にならなかったことから、ナミュールも前売りの段階で1番人気に支持されるとまでは思っていなかった。しかし、勝負所で起用されるされることが多いC.デムーロ騎手に乗り替わること。また、同騎手はGⅠで3勝中2勝を阪神芝1600m(2013年の桜花賞・アユサン、2018年の阪神ジュベナイルF・ダノンファンタジー)で挙げていることが報道され、過剰人気になってしまった。あるいは『2歳馬ジャッジ』の高評価の影響という可能性も…(笑)

ラスト2Fから一気に伸び、ラスト1Fで楽にパーソナルハイを捕らえ、断トツの上がり3Fタイムを記録した、前走の赤松賞は確かに強烈なインパクトがあった。しかし、同時に疲れが出やすいレース内容でもあり、また、デビューから2戦とも出遅れていることも問題。今回は17番枠、差しに徹して開き直るにはむしろ良い枠かもしれないが、多頭数になるとそこはネックとなる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ベルクレスタの前走指数「-12」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.2秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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