【阪神JF】赤松賞がかなり強い内容 京大競馬研はナミュールの差し切りに期待

京都大学競馬研究会

阪神JFインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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前走好走はほぼ必須条件

12月12日(日)に阪神競馬場で行われる阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ・芝1600m)。昨年はソダシが優勝し、史上初めて白毛馬がGⅠを制覇したことで話題となったレースだ。

今年は白毛馬の出走こそないが、来年のクラシックを賑わしそうなメンバーが揃った。3連勝中で武豊、武幸四郎兄弟のコンビでも注目度の高いウォーターナビレラ、アルテミスS勝ちのサークルオブライフ、サウジアラビアロイヤルC2着のステルナティーア、赤松賞を完勝したナミュールあたりが人気の中心で、この順位付けがカギになってきそう。過去の傾向や人気馬の考察を踏まえながら予想していきたい。


過去10年阪神JF好走馬前走成績,ⒸSPAIA


まずは過去10年の阪神JFにおける3着内馬の前走成績を調べた。2歳戦のためやはり前走好走馬の割合が圧倒的に高く、30頭中21頭が前走1着、前走着外だったのはわずか2頭のみだった。

着外だった2頭(ユーバーレーベン、ウインファビラス)はいずれもマイル以上の重賞で2着に好走した経験があり、実績がなければ巻き返しは難しいだろう。また、好走馬の大半は重賞やオープン特別、1勝クラスなどを経由してきた馬であり、新馬戦や未勝利戦を制して直行で参戦してきた馬の好走数は少ない。特に好走数が多いのはアルテミスSやファンタジーSであり、今年もこの組は外せないところだ。


人気馬の考察

前項では過去の好走馬の前走成績を調べたが、基本的には成績上位の人気馬がそのまま好走している例が多い。そして今年のメンバーを見渡すと、上位人気馬が順当に能力も上位という印象で、各人気馬の取捨や順位付けがカギになってくる。そこで上位人気が予想される馬について、それぞれの長所や課題、能力について筆者なりに考察していきたい。

まずはファンタジーS覇者のウォーターナビレラ。デビューから3連勝中で、何よりレースセンスの高さがセールスポイントだ。新馬戦は逃げ、2戦目と3戦目は番手からの競馬だったが、いずれも折り合って直線で早めに抜け出す形。「競馬が上手」という表現がピッタリだ。ただ、これまでの3戦はコーナー3つのレースや内回りのレースで、外回りで直線が長いコースは未経験。また前走のファンタジーSは、距離に不安のあるナムラクレアが止まった分残せたように見えたのがやや気がかりだ。能力が高いのは確かだが、この中で抜けている存在とは言えないと考えている。

次にアルテミスS覇者のサークルオブライフ。この馬は前走と2走前の内容が非常に強い。前走のアルテミスSでは完全にベルクレスタが勝つような展開を大外から差し切って勝利。レースラップではラスト3Fが11.6-11.5-11.7と前もほとんど止まっていないが、その流れの中残り200mだけで差し切ってしまったのは能力の高さを表している。2走前の未勝利戦は出遅れて最後方だったが、3角から押し上げて4角で先頭に並び、直線では後続を突き放す豪快な競馬。内容としては無茶苦茶ではあるが、能力がないとできない芸当なのは間違いない。後ろからの競馬になりがちでエンジンのかかりが遅いのは気になるが、その点阪神外回りは向くタイプだろう。

続いてアルテミスSで2着だったベルクレスタ。前走は早めに抜け出したところを差されて2着となったが、内容としては好位で脚を溜める良い競馬で勝ちに等しいものだった。2走前では進路を切り替えながら馬群を割って勝っているように、操縦性が高く比較的器用な競馬ができるタイプだ。新馬戦の2着もかなり強く、マイル路線では恐らく1番強いセリフォスと0.2秒差。中京コースの4コーナーで大外を回らされたことを考えれば、この差はあまりないと考えてよく、前走で敗れはしたものの高評価できる1頭だ。

サウジアラビアロイヤルカップで2着のステルナティーア。ルメール騎手騎乗で上位人気に支持されるだろうが、能力は1枚落ちると筆者は考えている。確かに新馬戦の上がり3F32.7という数字にはインパクトがあるが、これはかなり上がりの出やすい条件が揃っていた。まず、新潟外回りは直線が600m以上あるためラスト3Fは全て直線部分が占める。そして直線に坂がなく、内回りとの合流点にかけてはやや下り基調。さらにこの日は直線で強い追い風が吹いていた。このようにとにかく上がりの出やすい条件が揃っていたため、数字を鵜呑みにすることはできない。

また、前走のサウジアラビアロイヤルカップについては、中団追走から直線で追い出しコマンドラインに並びかけるも最後は止まって2着。スローペースだったので全体タイムが遅いのは気にならないが、道中動いていったコマンドラインよりも最後伸びなかったのは不満。全兄ステルヴィオが短距離志向になっていったことも考えると、もしかしたら距離がやや長いのかもしれない。この日も直線強い追い風であり、スローペースの割に上がり33.4はやや遅い。33秒台の上がりタイムに遅いというのもおかしな話だが、道中のペースも考えると前述のサークルオブライフや後述するナミュールと比べて力が落ちるという印象だ。

最後に赤松賞を快勝したナミュールについて。C.デムーロ騎手が騎乗ということで過剰人気しそうな存在ではあるが、能力は間違いなく高い。その高さを如実に示したのが前走の赤松賞だ。やや出遅れたため中団からの競馬となったが、直線で鋭く伸びて快勝。レースの上がりは11.4-11.7だが、レース映像を見る限り本馬は11.0-11.0くらいの脚を使っている。このレースはスローペースではなく、ある程度流れており、自身の1000m通過は1.00.8でありながらラスト3Fを33.0という上がりでまとめているのは強いのひとことだ。

新馬戦もラスト2Fを10.8-10.7でまとめるという中京ではなかなかないラップ。こちらは自身の前半1000m通過が1.05.7という超スローペースだったため過剰な評価はできないが、それでも切れる脚があるのは間違いない(なおこの日は特に追い風があったわけではなく、ほぼ横風だったため風の面に上がりタイムを速くする要因はない)。恐らく今年のメンバーでは、1番高い能力を持っているのはこの馬だと筆者は見ている。


絞って勝負

以上を踏まえた本命はナミュール。前項で述べた通り、秘めている能力は最も高い。今回は中2週の強行軍だが、調教ではそれを感じさせないし初の右回りもそこまで気になるものではない。末脚を十分に活かせる阪神マイルでGⅠ制覇といきたいところだ。

対抗にサークルオブライフ。ここ2走はなかなかインパクトのある勝ち方で連勝中と、能力の高さを見せている。エンジンのかかりが遅いタイプだけに阪神マイルは合っており、初の関西圏への輸送をこなせばチャンスはある。デムーロ兄弟のワンツーなら2013年桜花賞(1着アユサン、2着レッドオーヴァル)以来2度目となるが、その際も武兄弟が注目されていた(武豊騎手:1人気クロフネサプライズ、武幸四郎騎手:4人気メイショウマンボ)。似たようなシチュエーションで再びワンツーフィニッシュを期待したい。

3番手にベルクレスタ。前走こそ敗れたがデビューから3戦とも内容が濃い。特に新馬戦で外を回る不利を受けながらセリフォスと差のない2着だった点が高評価のポイントだ。比較的前の方で競馬ができるので、上位2頭がスムーズに運べなければチャンスが巡ってきそう。

4番手にウォーターナビレラ。前述の通りレースセンスが最大のセールスポイント。有力馬の中で最も前で競馬ができるので、安定感という面ではこのメンバーの中でもひけを取らない。ただその反面、このメンバーで1着を取り切る爆発力があるかは疑問で、2.3着が濃厚とみてこの評価にとどめた。

ステルナティーアは考察の部分で述べた通り現時点では力が1枚落ちるか。調教後馬体重の時点ですでにマイナス体重なのも気がかりで、今回は思い切って消しとしたい。

また上位人気馬以外についてだが、これら4頭に肉薄できそうな馬は正直見当たらない。2歳戦なので何が起きるか分からない部分もあるが、それでも上位人気馬が強いと見ているので絞って勝負したいところ。

そのため買い目は◎ナミュールの単勝と◎-◯▲△の馬連で勝負したい。馬連のオッズがあまりつかなければ◎-◯▲△の3連複や3連単でまずまずの配当も狙いにいくのもアリだ。(文:川崎)

▽阪神JF予想印▽
◎ナミュール
◯サークルオブライフ
▲ベルクレスタ
△ウォーターナビレラ

ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で25周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。



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