【阪神JF】武豊・武幸四郎、史上初の兄弟GⅠ制覇へ 競馬界の「兄弟・姉妹」アラカルト

東大ホースメンクラブ

武豊騎手と武幸四郎調教師に関するデータ,ⒸSPAIA

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「兄弟・姉妹」記録がかかる一戦

今週は阪神芝1600mを舞台に、2歳女王決定戦・GⅠ阪神JFが行われる。ファンタジーS覇者、無傷の3連勝で堂々と主役に躍り出たウォーターナビレラ、出世レースのアルテミスSを差し切ったサークルオブライフ、サンデーレーシングの良血2騎・ステルナティーアとベルクレスタなどが世代最初のGⅠウイナーの称号をかけ激突する。

今年は多数の「兄弟・姉妹記録」がかかるレースとなった。武豊・幸四郎兄弟のタッグで出走するウォーターナビレラが勝てば、JRA史上初の「騎手×調教師」による兄弟GⅠ制覇。サークルオブライフに騎乗するM.デムーロ騎手は、来日中のC.デムーロ騎手(ダノンファンタジー)に続く同一GⅠ兄弟制覇のチャンスがある。またステルナティーアは兄にステルヴィオ、ベルクレスタは姉にアドマイヤリードがいる血統で、それぞれ「きょうだい・姉妹」のGⅠ勝利達成のシーンもあり得る。

以上のような場面を目の当たりにできるのは、人馬ともに血統のスポーツとしての側面が色濃い競馬ならではの特色だろう。今週は「兄弟・姉妹」をテーマに各データをチェックしていく(データは2021年12月5日時点)。

大躍進の和生・武史兄弟

今季ともに活躍が目立つ「兄弟騎手」成績,ⒸSPAIA


<今季ともに活躍が目立つ「兄弟騎手」成績>
横山武史【95-86-61-487】勝率13.0%/連対率24.8%/複勝率33.2%
横山和生【76-46-49-408】勝率13.1%/連対率21.1%/複勝率29.5%
藤岡佑介【49-55-47-315】勝率10.5%/連対率22.3%/複勝率32.4%
藤岡康太【42-40-47-439】勝率7.4%/連対率14.4%/複勝率22.7%
※JRAのみ

まずは「兄弟騎手」だが、日本競馬では中央・地方を含め現役に10組以上の該当例があるため、全体を網羅することは難しい。そこで今回は「兄弟ともにリーディング30位以内」の条件を満たしている2組に絞って戦歴を確認する。

兄弟2人ともトップ10入りを果たしているのが横山和生・武史両ジョッキー。何といっても今年は武史騎手が華々しい活躍。エフフォーリアでの皐月賞制覇、ハナ差で敗れたダービーの悔しさを晴らした天皇賞(秋)、父・典弘騎手のセイウンスカイをなぞるかのようなタイトルホルダーの菊花賞逃げ切りとGⅠ・3勝。その他3歳世代のマイル王者としての威厳を保ったシュネルマイスターの安田記念3着・マイルCS2着など、22歳の若さにして大舞台で信頼できるジョッキーへのし上がった。

兄の和生騎手も負けていない。弟の活躍の裏で地道に勝ち星を積み重ね、北海道シリーズでの23勝などローカルで51勝、中央3場でも25勝。昨年までのキャリアハイは3年目の39勝だったが、11年目の今年は6月終了時点で40勝と早くも記録を更新し、大きな不振に陥る時期もなく暮れを迎えている。重賞ではトーセンスーリヤで函館記念を勝利、オメガレインボー、エイティーンガールとのコンビで穴を開けた。

条件に該当するもう1組は藤岡佑介・康太兄弟。兄の佑介騎手は昨年の68勝と比較すると若干勝ち星を減らしてはいるものの、重賞ではバスラットレオンのNZT・ビアンフェの函館スプリントS・セリフォスのデイリー杯2歳Sと3勝を挙げ、連続重賞勝利記録を5年に伸ばした。現時点の複勝率32.4%はキャリアハイで、堅実な騎乗ぶりの一端が伺える。弟の康太騎手は騎乗の大半を占める関西圏で存在感があり、特に阪神(19勝)・小倉(11勝)の2場で好走例が多い。京都大賞典で8歳馬マカヒキを復活に導いた。

絶好調の「武豊×幸四郎」タッグ

兄弟「騎手×調教師」今季・通算成績,ⒸSPAIA


<兄弟「騎手×調教師」今季・通算成績>
武豊【70-61-61-291】勝率14.5%/連対率27.1%/複勝率39.8%
武幸四郎【33-22-23-183】勝率12.6%/連対率21.1%/複勝率29.9%
(通算)兄弟タッグ【17-24-15-62】勝率14.4%/連対率34.7%/複勝率47.5%
池添謙一【48-48-50-359】勝率9.5%/連対率19.0%/複勝率28.9%
池添学【30-25-18-161】勝率12.8%/連対率23.5%/複勝率31.2%
(通算)兄弟タッグ【12-12-9-96】勝率9.3%/連対率18.6%/複勝率25.6%
※JRAのみ

次に「騎手×調教師」の間柄である兄弟の成績を確認する。

52歳になったレジェンド武豊騎手は今年も衰え知らず。4割に迫る複勝率は全体5位で、9月に11勝、11月に12勝とここにきて勝利数を伸ばしている。骨折により4月を全休したことを考えれば70勝は素晴らしい成績で、日本の競馬界を引っ張る地位はまだまだ揺るがない。

騎手から調教師に転身、今年で開業4年目を迎える幸四郎師も新進気鋭のトレーナーとして頭角を現してきた。貸付20馬房で33勝は見事という他なく(リーディング首位の中内田師は26馬房:53勝、2位の矢作師は30馬房:50勝)、単勝回収率は112%。2歳馬7頭が勝ち上がり、既に11勝を挙げている点も特筆に値する。

両者のタッグは弟の管理馬初出走だったグアンの未勝利戦で兄が初勝利をプレゼントする幸先いいスタート。2019年以降は3年連続で複勝率45%以上を記録し、今年は夏に8戦連続馬券圏内など【6-7-5-14】と絶好調。ウォーターナビレラの快走に期待が高まるところだ。

もう一組の「騎手×調教師」タッグは池添兄弟。兄の謙一騎手は現時点で48勝、重賞2勝に加え、大阪杯のモズベッロとNHKマイルCのソングラインでGⅠ・2着2回。惜しくも馬券圏内に届かなかったものの、見せ場を作ったスプリンターズSのメイケイエール(4着)もいぶし銀の騎乗だった。弟の学師は兄を上回る複勝率と重賞3勝が光る。兄弟タッグでは2019年の朝日杯FS・グランレイの14番人気3着、ヴィクティファルスで待望の重賞初制覇を飾った今年のスプリングSなどがある。

ブエナビスタ・ジョワドヴィーヴルに続けるか

きょうだい・姉妹GⅠ馬,ⒸSPAIA


<きょうだい・姉妹でJRA・GⅠ制覇を飾った馬>
シャフリヤール:2021年日本ダービー(アルアイン)
クリソベリル:2019年チャンピオンズC(マリアライト)
クロノジェネシス:2019年秋華賞(ノームコア)
サートゥルナーリア:2018年ホープフルS(エピファネイア・リオンディーズ)
ジュールポレール:2018年ヴィクトリアマイル(サダムパテック)
シュヴァルグラン:2017年ジャパンC(ヴィルシーナ・ヴィブロス)
サトノアラジン:2017年安田記念(ラキシス)
※過去5年

最後に馬の「きょうだい・姉妹」GⅠ制覇を見ていく。

過去5年でJRA・GⅠきょうだい・姉妹制覇を達成したのは7例。今年はアルアインの全弟・シャフリヤールがダービーを制覇したのが記憶に新しい。その他惜敗続きだった春二冠の悔しさを晴らした秋華賞からグランプリ3連覇につなげたクロノジェネシス、それぞれ偉大なる母シーザリオとハルーワスウィートの仔、サートゥルナーリア・シュヴァルグランのGⅠ制覇などがある。

今週、この面々に名を連ねるチャンスがあるのはステルナティーアとベルクレスタ。阪神JFできょうだい・姉妹GⅠ制覇を決めた例は、ともに同レースを制したブエナビスタとジョワドヴィーヴルの例がある(母ビワハイジ。自身も阪神3歳牝馬S覇者)。同じ勝負服から新たなスター誕生なるか。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開。秋GⅠシーズンに合わせ、新入部員募集中。



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