【阪神JF】来年の競馬を占う2歳牝馬決戦の歴史 ウオッカやアパパネなどの名牝がここから大きく飛躍!

緒方きしん

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過去にはウオッカやブエナビスタらが勝利

チャンピオンズCは1番人気のテーオーケインズが勝利。マイルCS、ジャパンCに続き人気馬が期待に応える結果となった。ただ、引退の花道を飾ったグランアレグリア・コントレイルとは違い、テーオーケインズは4歳馬。並み居るベテラン実績馬を相手にあの圧勝。新時代を予感させる走りだった。

今週は2歳女王決定戦、阪神JF。素質馬や良血馬、ひいては未来の名繁殖牝馬が集まるだけに、いつも以上に血統が気になるのも阪神JFの楽しみのひとつだろう。1995年勝ち馬のビワハイジは繁殖として2008年勝ち馬ブエナビスタ・2011年勝ち馬ジョワドヴィーヴルを送り出し、親子制覇を達成。今年の有馬記念へ挑戦を表明しているウインキートスの母、イクスキューズは2006年阪神JFの5着馬である。

前身である阪神3歳牝馬S時代にはメジロドーベルやビワハイジ、ニシノフラワーらを輩出。現在の阪神JFとなってからもウオッカやアパパネ、ブエナビスタらを輩出するなど、素質馬が集う一戦。来春以降を見据えて楽しみたいレースでもある。今回はそんな阪神JFの歴史を振り返る。

1番人気は安定感あり

阪神JF過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


ここ5年で1番人気馬は3勝。ソダシ、ダノンファンタジー、ソウルスターリングが人気に応えた。さらにその3頭が制した年は3年とも2着に2番人気馬がくる"1-2番人気決着"と、手堅いレースになった。特に2016年には3着も3番人気馬だったため、三連単の配当は42.5倍に収まっている。

一方で勝利できなかった1番人気馬は、リアアメリア(6着)とロックディスタウン(9着)。特にリアアメリアは単勝オッズ1.8倍と高い支持を集めた上での敗北だった。その2019年は4番人気レシステンシア・6番人気マルターズディオサと、ある程度は上位人気に支持された馬による決着だったが、馬連は万馬券になっている。

1番人気の信頼度は高いとはいえ、まだまだ力関係が明らかになっていない時期のレースのため、その後の活躍を考えると「当時はまだこんな評価だったんだな」と言えるようなオッズの馬も少なくない。

勝ち馬で言えば、ウオッカの4番人気11.1倍が象徴的。翌年、桜花賞で敗れながら挑んだダービーですらウオッカは3番人気10.5倍であり、阪神JFがウオッカの現役時代における最高オッズだった。また、ビワハイジは4番人気で阪神JFを制している。

大波乱が頻発したゼロ年代の阪神JF

レース名が阪神3歳牝馬ステークスから現在の阪神ジュベナイルフィリーズに変更された2001年からしばらくの間は、万馬券が連発した時期があった。タムロチェリー・ペリエ騎手とアローキャリー・ファロン騎手による外国人騎手のワンツー決着となった2001年は馬連253.5倍、ヤマニンシュクル・ヤマニンアルシオンの“ヤマニン軍団”ワンツーとなった2003年は馬連197倍(2着・3着でのワイドは216.7倍)。

そして2005年にも、馬連192倍の高配当が飛び出した。波乱を巻き起こしたのは、テイエムプリキュアである。テイエムプリキュアは当時デビューから2連勝中だったが、いずれも5番人気での勝利で、当日も8番人気の伏兵扱い。コイウタやフサイチパンドラ、アサヒライジングといった素質馬が揃っていたが、スローペースで進んだレースを一気に差し切った。

テイエムプリキュアはその後も波乱を多く演出した。逃げ・先行にシフトすると中長距離で開花。日経新春杯では、2008年に12番人気ながら3着に食い込むと、翌年の同レースでは11番人気で勝利する。その勝利を受け現役生活が延長されると、迎えたエリザベス女王杯ではクィーンスプマンテとの逃走劇で後輩の阪神JF勝ち馬ブエナビスタに先着する好走を成し遂げた。

多くの万馬券を演出した名牝として、今でも愛されるテイエムプリキュア。その伝説のエリザベス女王杯へと繋がる第1章が、2005年の阪神JFだった。さらに、同年の阪神JF3着馬フサイチパンドラはアーモンドアイを、9着馬シェルズレイはレイパパレを輩出。7着だったアイスドールも今年のJBC2歳優駿を制したアイスジャイアントを送り出し、多くの出走馬たちが、現在も競馬界を盛り上げている。

クラシックの登竜門としても注目

2000年代後半あたりから、それまで以上にクラシックや古馬GⅠに直結するようになった阪神JF。2006年〜2009年の間に阪神JFで馬券圏内に食い込んだ馬には、ウオッカやアストンマーチャン、トールポピー、ブエナビスタにアパパネと、翌年以降も大いに活躍した名馬がズラリと並ぶ。

そうした時代のなかでも、特に豪華メンバーが揃ったのが2016年。3着だったレーヌミノルが桜花賞を、1着だったソウルスターリングがオークスを制し、牝馬クラシックを席巻。さらに2着だったリスグラシューも秋華賞で2着になり、あと一歩で阪神JF組が牝馬三冠を分け合うところまでいった。その後リスグラシューは更なる成長を遂げ、5歳時には宝塚記念・コックスプレート・有馬記念を制して年度代表馬に輝いている。

昨年の阪神JFで掲示板に食い込んだ馬たちも、ソダシ、サトノレイナス、ユーバーレーベン、メイケイエール、ヨカヨカと、2021年の競馬を語る上で欠かせない馬たちばかり。今年もきっと、来春やそれ以降の競馬を盛り上げてくれる存在が、複数出走してくるはずだ。競走馬としても母としても活躍してくれることを期待しつつ、バラエティ豊かな血統馬が揃った今年の阪神JFを楽しみたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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