【チャレンジC】来年は主役級! ソーヴァリアントを導いたルメール騎手の戦略とは

勝木淳

チャレンジC,インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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レイパパレに続くか、ソーヴァリアント

かつて秋に朝日チャレンジCとして行われていた頃は、3歳の夏の上がり馬が古馬重賞戦線へ挑戦するという意味合いが強かった。暮れに移され、チャレンジCになり、同週のチャンピオンズCと字面が紛らわしく、レース名に違和感を覚えるところもあるが、15年フルーキーから今年のソーヴァリアントまで7年連続で勝ち馬はここが重賞初制覇。昨年のレイパパレが同舞台の大阪杯でコントレイル、グランアレグリアを破ったように、確かにこのレースはチャレンジCという名にふさわしい。

だからこそ、勝ったソーヴァリアントは来年非常に楽しみになった。2着ヒートオンビートにつけた着差は3馬身半と圧巻だった。来年に向けて、このレースを分析しつつ、ソーヴァリアントの適性をしっかり見定めておきたい。

あえて強気に攻めたルメール騎手

ソーヴァリアントは夏の北海道で古馬相手に連勝。夏の上がり馬としてセントライト記念に挑戦し、アサマノイタズラの追い込みが決まる先行勢に厳しい流れを好位から先に仕掛けて2着と、能力の高さをアピールした。菊花賞を体調が整わずに回避、ここが仕切り直しだった。

戦歴をみても、好位で流れに乗る馬ではあるが、逃げる伏兵のマイネルフラップに対して、積極的に並びかけに行き、1コーナーの通過順は1番手。とりあえず逃げたい馬をいかせてと考えないあたり、ルメール騎手は恐ろしい。枠も近い離れた3番手モズナガレボシぐらいのポジションに収まっても不思議ではなかった。ルメール騎手はあえてそれをせず、馬の機嫌を損ねないようにいかせて、最初のコーナーで馬を収めた。

前半1000mは13.3-11.9-13.0-12.5-12.2で1.02.9。この時点で控えた組はほぼ出番なし。1、2コーナーでペースダウンするなか、無理に下げようとすれば400~600m地点13.0でソーヴァリアントは折り合いを欠いた可能性がある。流れに合わせ、馬のリズムを整え、いつでもどこからでも動けるポジションをとる。さすが年間200勝が見えてきた名手。その秘訣はここにある。

一方、見方を変えれば、ソーヴァリアントはまだそういった行きたがる面が残る。多頭数の内枠など、序盤で攻めにくい状況に陥った場合、どうなるかわからない。そういった課題はあるとして、残り800m11.7-11.6-10.8-11.6というラップをソーヴァリアントはマイネルフラップを利用しながら刻み、徐々にエンジンをかけ、直線入り口手前から坂下までの10.8で勝負を決めた。番手から楽な手応えで上がり最速33.9という脚を使えるのはさすが。

父譲りの瞬発力

最速ラップ10.8にこそ、ソーヴァリアントの長所がみえる。ステイゴールド系は持続力型で心肺機能の強さを武器に一流馬に駆け上がった印象だが、オルフェーヴルはパワーに瞬発力を備えていた。3歳有馬記念では上がり最速33.3を繰り出し、古馬を一蹴した。ソーヴァリアントは父より瞬発力を譲り受けた。パワーと瞬発力兼備となれば、もう敵はいなくなる。

2着ヒートオンビートはソーヴァリアントがペースアップした場面で馬群のなか、進路がなく、動けなかった分、そこで脚をためた。10.8で一旦は置かれてしまったが、最後の200mしぶとく伸びて2着。瞬発力では見劣っても持続力はかなりついてきた印象。今回は相手も悪く、スローペースで流れも不向き。2着確保は重賞レベル到達の証、未来は明るい。

2番人気ジェラルディーナは3連勝で重賞挑戦と、こちらもここは挑戦のレース。勝負所でヒートオンビートがタイトにコーナリングしたため、外に出す機会がなかった。ロングラン開催で荒れたインコースを通る形になり、伸びきれなかった。ソーヴァリアントと同じく瞬発力に長けたタイプだが、こちらは外回り向き。コースも展開も合わず、見直しが必要だろう。


2021年チャレンジCのレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。

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