【チャンピオンズC】圧巻の6馬身差! テーオーケインズの強さとソダシの敗因とは

勝木淳

2021年チャンピオンズCのレース展開,ⒸSPAIA

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最大の注目はゲート

白毛の女王ソダシ、川崎記念、かしわ記念と交流GⅠ・2勝カジノフォンテン、これほど1枠が注目を集めるダートGⅠは珍しい。ダート競走において内枠とは。そんな命題を週末、多くの方が考えたにちがいない。揉まれて砂を被る危険性もあるが、中京ダート1800mで1枠が不利というデータはない。ソダシの父クロフネ、母系のシラユキヒメ一族はともにダートに強い。二刀流は絵空事ではない。最終的な1番人気は勝ったテーオーケインズにこそ譲ったが、このレースの主役はソダシだった。

ソダシの戦法含め、レースのポイントはゲートにあった。ソダシもこれまでゲート入りを嫌がる場面があり、不安定。1番人気テーオーケインズは前走JBCクラシックで出遅れが響き、4着。展開のカギを握る一頭ダノンファラオも陣営から課題としてゲート内の駐立があがっていた。

ダート適性はあったソダシ

ダノンファラオがゲートで立ち上がり、スタートのタイミングが難しくなった。それでもダートで好発を切ったソダシは一旦、スタンド前で行かないのかと思わせながらも、芝で鍛えたダッシュ力を武器にインティを制してゴール板付近でハナに立つ。スムーズな加速にダート適性の高さを感じさせた。ダートがダメであれば、初ダート、それもGⅠで先頭には立てない。

番手は武豊騎手のインティ。あえて競り合うようなことはしない。ソダシは後ろを離し、理想的な形で1、2コーナーに入る。12.9-12.8とコーナーを利用してペースを落とし、息を入れる。前半1000m通過1.01.4。19年1.00.8、20年1.00.3と比較しても緩やか。折り合いもつき、ソダシは極めて順調だった。

当然、後続にとっても優しい流れ。外から被されると難しさを出すインティは、外のサンライズホープ、アナザートゥルースらの押し上げを察知、早めにソダシに並ぶ。やはりダートの猛者たちは甘くない。仕掛けが早く、ソダシにプレッシャーがかかる。この時点でソダシの手応えは急速に悪化、直線を向いて失速した。

芝のようにギアチェンジが上手くいかなかったのは、適性の差だろうか。インティが来る前後の挙動を見る限り、精神面に課題があるようにみえる。正確な敗因分析は陣営に任せたいところだが、秋華賞で見せた「走ることに後ろ向きな心」が尾を引いてしまっているのではないか。ダート適性は血統通り問題なかった。でないとはじめてのダートGⅠでレースを引っ張れない。慣れてくればダート戦線でも戦えるだろう。まずは内面の整理が必要ではないか。

圧巻だった好位から上がり35.5

さて、勝ったテーオーケインズも今回はゲートをクリア。枠なりにインコース5、6番手付近で先行勢を見ながら理想的な運び。こうなれば3連勝で帝王賞を制した力を存分に発揮できる。残り400m付近、インティの外に出る場面で横にいたサンライズホープと接触する場面こそあったが、レースの最後600m12.2-11.8-12.0、36.0を上がり最速35.5で一蹴した。この35.5は驚異的。後方から最後だけ競馬しての記録ではない。道中は正攻法で攻め、最速11.8で敢然と抜け出しての記録だ。どの馬も伸びる軽い流れで2着チュウワウィザードに6馬身差、これは圧勝だ。

父シニスターミニスターというと、インカンテーション、ヤマニンアンプリメ、キングズガード、ゴールドクイーンといったちょっとムラっぽく、極端な戦法を好む馬が多かったが、テーオーケインズは緩い流れでも瞬発力を使える本格派。これまでの産駒イメージを覆す。

チュウワウィザードは前身のジャパンCダートで記録したトランセンド以来の連覇を狙うも2着。トランセンドと同じく今年はドバイWC2着。その力を発揮するには流れが緩すぎた。理想は昨年のような残り1000mから速くなる持久力勝負。最後まで伸びていただけに展開が向かなかった。骨折明け2戦、着実にパフォーマンスは上昇。まだまだチャンスはある。

3着アナザートゥルースは14番人気。前走みやこSで内枠から逃げを選択したのは、外から被されると嫌気を差すという気性の問題があるからこそ。外目の枠ならハナに行かずに、好位で流れに乗れる。スタミナロスなどお構いなし。徹底して外目を走らせ、気持ちを切らせなかった。坂井瑠星騎手の好騎乗が光った。戦法にブレがないタイプ。内枠ならハナに行けるかどうか相手関係を見極め、外枠で買いたい。ムラ駆けなので、好走と凡走がくっきりしており、走っても人気になりにくい。上手に付き合えば、おいしい。

4着インティはこれでチャンピオンズC3、3、4着と大敗がない。好走要因は内枠でも外から被されない競馬ができたこと。序盤はソダシをペースメーカーに利用、後続馬の動きを封じ、緩い流れを演出。自身も生きる競馬だった。

2021年チャンピオンズCのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2005-2009 00年代後半戦』(星海社新書)。



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