【ジャパンC】シャフリヤールvsコントレイル 新旧ダービー馬対決に期待が高まる一戦

山崎エリカ

2021年ジャパンCPP指数,ⒸSPAIA

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今年は外国馬3頭が出走

昨年は外国馬の参戦が1頭、一昨年はゼロだったが、今年は3頭が出走。外国馬が勝てば2005年のアルカセット以来となるが、ジャパンCの連対馬というのは、第1回からの歴史を振り返っても、自国NO.1かそれに匹敵する馬(自国最高峰クラスのレースで結果を出している馬)でないと通用していない。

前記のアルカセットも仏GⅠ・サンクルー大賞典の優勝実績があり、2002年に11番人気で2着と好走し、アドバルーンを打ち上げたサラファンにも米GⅠ・アーリントンミリオン(世界で始めて総賞金100万ドルが用意されたレースで、当時は米国の古馬芝部門の4大レースのひとつ)でアタマ差2着の実績があった。そういった実績の観点では、今回出走するグランドグローリーは満たしていないことになる。

また、前走で凱旋門賞やBCターフで連対した馬も苦戦傾向で、前走で凱旋門賞2着でありながら、ジャパンCでも連対したのは1991年のマジックナイトのみ。凱旋門賞やBCターフといった世界最高峰クラスのレースで好走した馬は、ここでの余力がなく、数々の歴史的な名馬が人気を裏切り、凡走している。その観点から、前走のBCターフ2着のブルームは苦しいと見ている。また、BCターフは前に行った2頭が競り合ってかなりのハイペースとなったことで、外差しが嵌っている。

前走のBCターフ4着のジャパンも序盤で促されても進んでいかず、中団中目でレースを進めた。3~4角では2列目で包まれ、直線で外に出すまで仕掛けを待たされてはいるが、ジャパンの走りとしては好走の部類。追走に苦労していたあたりから、高速馬場適性に疑問が残る。欧州のトップクラスの馬がジャパンCに出走してくれるのはとても嬉しいことだが、今年もやはり日本馬が優勢と見る。

能力値1~5位馬の紹介

2021年ジャパンCPP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 コントレイル】
史上3頭目の無敗の三冠馬。デビュー2戦目の東京スポーツ杯2歳Sで記録した指数はかつてのナリタブライアンを思い出させるもので、どこまで強くなるのかと期待された。しかし、昨年のジャパンCでは上の世代のアーモンドアイに敗れてしまった。三冠路線のライバルだったサリオスも古馬混合戦になってから伸び悩み気味、さらには前走の天皇賞(秋)では3歳馬のエフフォーリアに敗れたのだから、レベルが低調気味な世代だったと評価されるのも仕方ない。

前走の天皇賞(秋)は、5走前の神戸新聞杯時と同様に、スタート後に少しバランスを崩したが、無理に位置を取りに行かず、超スローペースの中団馬群の内で包まれる形。ちょうど前にいたエフフォーリアをマークしながらレースを進め、直線でもエフフォーリアの追い出しを待って進出したが、最後は苦しくなり内にモタれ気味になってしまった。

2番手外から逃げたカイザーミノルにプレッシャーをかけにいって、伸びあぐねたグランアレグリアは負けて強しと言える内容だったが、コントレイルは直線で先に動いたエフフォーリアとの差を詰められないままのゴール。それもコントレイルは昨秋の菊花賞やジャパンCと同等の指数「-25」で走っており、実力は出し切ったと言える。

またコントレイルはタフな馬場でレイパパレが骨を切らせて肉を立つ逃げを打った大阪杯こそ、中団待機から4角で外に出し、勝負に出たグランアレグリアのさらに外から勝ちに行く競馬をして3着に敗れたが、良~稍重馬場では連対率100%。幅広い展開に対応できるのが魅力で、前走から相手弱化のここでは能力値1位の存在だ。

この秋の目標は前走だっただけに、陣営からも弱気なコメントが出るのも無理はないが、それは「無敗の三冠馬」という重圧を背負っての発言でもあるはず。スタートで急がせるとバランスを崩す弱点こそあるが、ゆったりと入れる芝2400m以上のレースでは見せていないことから、ここも崩れずに走って恰好をつけるのではないかと見ている。

【能力値2位 サンレイポケット】
4走前の新潟大賞典でようやく重賞初制覇を達成。前走の天皇賞(秋)でも3強には離されたとはいえ、4着を死守した。しかし、新潟大賞典は、マイスタイルが緩みないペースで逃げたことにより、出遅れて後方内々を上手く立ち回ったサンレイポケットは展開に恵まれた。

前走の天皇賞(秋)でも五分のスタートから中団中目でレースを進め、序盤のコーナーを過ぎて、最内枠のコントレイルが外に出たことで生まれた内のスペースに上手く入り込み、そこからは3列目の最内で最短距離の競馬。直線序盤で中目に誘導し、ラスト1Fで抜け出して4着を死守した。

4走前も前走も鞍上がかなり上手く乗っての好走ではあるが、ここでも侮れない馬である。なぜかというと、中距離戦で追走に苦労していることと、トップスピードを長く維持できることから、本質がステイヤーと推測されるからだ。実際に初めての芝2400mで不良馬場の3勝クラス、ジェーンS時は、ずっといい手応えで勝利している。少なくとも前走から距離延長になるのはプラスだろう。

【能力値3位 アリストテレス】
昨年の菊花賞でコントレイル脅かした馬。その次走となった今年1月のAJCCでは重賞制覇を達成した。しかし、AJCC時は極悪馬場。さらにレースのラスト1Fが13秒3まで失速する消耗度の高いレースとなり、そこで休養明けながら中団中目から3~4角で早めに動いて激走したことで疲れが残り、その後は下降線となった。

しかし、立て直された前走の京都大賞典では2着に善戦。前走は向正面で一気にペースが上がり、レースの最速がラスト6、7F目。かなり前が苦しい流れになったが、それでも好位の中目から食らいついて2着を死守した内容は立派。負けて強しの競馬ではあったが、それだけに再び反動が懸念される。阪神大賞典時ほどの凡走はないまでも、上昇度は「?」で評価を下げたい。

【能力値4位 オーソリティ】
昨年と今年のアルゼンチン共和国杯を2連覇。3走前のダイヤモンドSでは好位の中目で流れに乗って、3着以下を5馬身引き離し、後に行われた天皇賞(春)の勝ち馬ワールドプレミアよりも高い指数「-28」を記録して2着と激走。前々走の天皇賞(春)は、ダイヤモンドS激走から立て直しながらの出走になったため、本来の能力を出し切れていないが、条件が揃えばGⅠでも好走できる実力を持っている。

前走のアルゼンチン共和国杯は、昨年の同レース以上の超スローペースになったが、オーソリティはまずまずのスタートから、じわっとコントロールしながら先行争いに加わる形。スロー過ぎたために流れに乗り切ったというよりも、掛かり気味になりながらも我慢させ、最後の直線では2列目の外からラスト2F目で先頭に立ち、2馬身半差の完勝。

トップハンデ57.5㎏を背負いながらも昨年の同レースよりも高い指数を記録していることから、今年に入ってさらに地力をつけているのは間違いない。しかし、昨年も長期休養明けのアルゼンチン共和国杯優勝後の有馬記念で二走ボケを起こしたように、今回もそのパターンが怖い。休養期間が長いほど、休養明けで好走するほど、二走ボケを起こす危険性が高まる。

【能力値5位 キセキ】
アーモンドアイが優勝した2018年のジャパンCをマイペースで逃げ、自己最高指数「-29」を記録。当時の指数はここではNO.1となる。もちろん、その頃の勢いはないにせよ、それでも今春のクイーンエリザベス2世Cで4着、前走の京都大賞典でもレースの最速がラスト6、7F目という前が厳しい流れを3番手から食らいついて3着と善戦するだけの実力はまだある。

キセキは歴史に残る名牝を相手に何度も善戦しながら、菊花賞以来、約4年間も未勝利。なぜ、このような現象が起こるのか?騎手も私もキセキの本質を正しく理解していないのかもしれない。ただ、一連の結果から思うことは、キセキはいつも手応えが良い馬のようで、騎手が乗り替わる度にその手応えに騙され、強気にポジションを取ってしまっているということ。

和田騎手に乗り替わった前走の京都大賞典でもやや出負けして中団から促してじわじわと2列目まで位置を押し上げる形。結局、前半で無理をさせたことで、3~4角でも外からしぶとく食らいつく見せ場を作りながらも、しまいが甘くなってしまった。

そのまま中団でレースを進めていたなら展開に恵まれ、勝てていた可能性は十分ある。実際に菊花賞も出遅れて後方待機策がハマっての優勝だった。また、最高の走りを見せた2018年のジャパンCでも1~2角では我慢させ、向正面では後続を引き離す競馬をしている。今回キセキ以外は、逃げたい馬が不在のメンバー構成。昨年のジャパンCのように暴走させるのではなく、上手く御して2018年の再現を狙う競馬なら、上位争いに食い込めるチャンスはありそうだ。

【能力値5位 シャドウディーヴァ】
一昨年の東京新聞杯で2着、今年は同レースで3着。さらに芝1800mの昨年の府中牝馬Sで2着、芝2000mの3走前マーメイドS3着と、これまで重賞で勝ち切れなかったが、前走の府中牝馬Sでようやく重賞制覇を達成。同馬が重賞で勝ち切れなかったのは、中団でレースを進めて、しまいの甘さを見せていたから。

しかし、前走では思い切って後方馬群の中目で我慢させ、3~4角で他馬が動いて行く中、ワンテンポ仕掛けを待って動いたことが功を奏し、直線で一気に差し切った。しまいが甘くなる馬は、もっと脚をタメれば最後まで脚を使えるようになるのは当たり前だが、その当たり前のことができない騎手が多いだけに、福永騎手の騎乗は光る。

今回は前走から3Fの距離延長。前走以上に脚をタメる必要はあるが、今回は相手も強化されるだけに、あまり後方からだと届かない可能性が高い。かと言ってある程度の位置を取りにいくと、またしまいの甘さを見せて早々に失速する可能性があり、後方の内々を上手く立ち回って、さらに展開の後押しがないと苦しいだろう。狙いにくいものがある。

穴馬はエフフォーリアと同世代のシャフリヤール

シャフリヤールはキャリア4戦目で日本ダービーを優勝した素質馬。ここでは能力値7位で、指数上は挑戦者の立場となるため、穴馬という認識。春に活躍した3歳馬は、その後の休養中の成長と、古馬よりも2㎏減で出走できるため、天皇賞(秋)の覇者エフフォーリアのように、古馬が相手でも通用することが多い。

ただし、シャフリヤールは春の時点ではエフフォーリアほどの強さは見せていない。まず、今年は日本ダービーよりも皐月賞のほうが指数が高い決着であったこと。そして日本ダービーでは最内枠だったこともあり、無理なく3列目の内を取り、最短距離の競馬をしている。最短距離でレースを進め鞍上はコースロスなく、完璧な騎乗をしたつもりでいるかもしれないが、日本ダービー当日は馬場の内が悪化しており、内々を立ち回ったエフフォーリア以外の馬は全滅している。

一方、シャフリヤールは中団中目で上手く脚をタメ、クビの上げ下げでエフフォーリアを下しての優勝。最後の直線序盤で進路を確保するのに少し苦労する場面はあったが、エフフォーリアと比較すると上手く乗れていたと言える。それでも皐月賞3着馬であり、後の神戸新聞杯の覇者ステラヴェローチェを寄せつけす優勝したことは評価できるし、それも成長途上の段階で出した結果だけにここでの期待が高まる。

前走の神戸新聞杯では4着に敗れたが、極悪馬場に近い状態で消耗度が高いレースとなった中、好位の外々から勝ちに行く競馬をした結果。シャフリヤールは瞬発力を生かしてこその馬だし、叩き台のような状況下だったことを考えれば、崩れても仕方ない。それでも大崩れしていないのは、地力があればこそ。また、凡走したことで上位3頭にように疲れも残らず、順当に上昇するはず。もともとの素質や休養中の成長を加味すると、ここで変われる可能性が高い。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)コントレイルの前走指数「-25」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.5秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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