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【マイルCS】インディチャンプやサリオス、マイルGⅠ勝ちのある実績馬の復活に期待

2021/11/20 17:00
山崎エリカ
2021年マイルCSPP指数,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

阪神芝1800mまで高速馬場、阪神芝2000m以上はタフな馬場

先週のエリザベス女王杯は、逃げたシャムロックヒルにロザムールがプレッシャーをかけに行く形で、ペースが緩まなかったのもあるにせよ、差し、追込馬が上位を独占する決着となった。中団外から3~4角で大外をぶん回して4角で一気に上がった10番人気アカイイトが1着。後方内々で脚を温存し、3~4角で中団のスペースを拾いながら狭いところを捌いて上がった9番人気のクラヴェルが3着。

戦前の段階から「今の阪神は馬場がタフで差しが有利」という声も聞こえていたが、まさにその通りの決着だった。しかし、これは阪神芝2000m以上の話で、阪神芝1800mまでだと状況が異なる。今の阪神芝は複雑で1800mまでは高速馬場、2000m以上は時計の掛かる馬場。もし指数を算出する上で基準タイムというものを設定するのであれば、2つに分けて設定する必要がある状況だ。

おそらく1~2角にかけたあたりが、他のところと比較して馬場が悪いのではないか。その馬場の悪い箇所を騎手たちが他の距離と同じようなペースで通ってしまうので、実質オーバーペースの差し競馬が頻発しているのではと推測される。先週は芝1800m以下が2歳戦と下級条件ばかりだったので分かりにくいかもしれないが、先々週あたりからこの傾向が顕著で、1800m以下では走破タイムも上がりも速く、多少ペースが上がっても前から押し切れているので、それも踏まえて予想を組み立てたい。

能力値1~5位馬の紹介

2021年マイルCSPP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 グランアレグリア】
昨年の春秋マイル統一王者で今春のヴィクトリアマイルも優勝。3走前のヴィクトリアマイルでは、4走前で芝2000mを使った後の一戦らしく、出脚が悪く、やや追走に苦労。中団からの競馬になったが、そこから内ではなく、敢えて外に誘導。直線序盤で仕掛けて4馬身差の完勝。同馬が3走前で記録した指数は、自己最高指数となる「-27」。当時の指数で走れれば、ここも完勝だろう。

前々走の安田記念は、休養明け好走の反動で昨年のアーモンドアイの二の舞となり、ダノンキングリーに先着を許しての2着。立て直された前走の天皇賞(秋)では、アーモンドアイ同様の巻き返しが期待されたが、3着に敗れた。これはアーモンドアイほど長い距離の適性がなかったことや、スタミナが不足する休養明けで距離延長だったことが挙げられる。しかし、一番の敗因はそれでありながら先行したことだ。

序盤から促して前目の位置を取り、向正面で2番手外まで位置を押し上げた。そこからカイザーミノルにプレッシャーをかけて潰し、直線序盤で先頭の競馬では、さすがに厳しいものがあった。グランアレグリアは末脚が武器の馬だけになおさらだ。エフフォーリアやコントレイルらよりも、後方の位置でレースを進めていれば、また違った結果になっていたと推測されるだけに、残念でならない。今回は得意のマイルで距離面では好転するが、今秋の目標は前走に置いていた感が強いだけに、体調面が微妙に下降する危険性はある。

【能力値2位 シュネルマイスター】
デビュー4戦目でNHKマイルCを優勝した素質馬。その次走の安田記念でも、古馬相手に3着と好走。安田記念では出遅れて後方からの競馬となったが、前半でじわっと中団の外まで位置を押し上げ、3~4角でも中団外目からロスを作りながらの競馬。ラスト2F目から伸び始めて、いったん先頭に立ったインティチャンプをクビ差交わしたところでゴールイン。内からグランアレグリア、外からダノンキングリーに半馬身差されたが、強い内容だった。

前走の毎日王冠では、ダノンキングリーに逆転Ⅴ。シュネルマイスターは毎日王冠でもやや出遅れたが、それ以上に出遅れて後方2番手からの競馬になったダノンキングリーが、向正面で一気に好位の外まで位置を押し上げたのに対して、同馬は中団最内で我慢、3~4角では中団中目を通って、ラスト1Fでダノンキングリーがバテたところを差しての1着。脚をタメる競馬が上手くいった面がある。

また、今回は芝1800mで後方からレースをした直後だけに、レースの流れに乗りづらい面が出やすい。更に休養明けであれだけ能力を出してしまうと反動が出てしまう懸念もある。能力の高さ、3歳馬ならではの成長力は認めるが、今回は危険な要素もある。

【能力値3位 インディチャンプ】
一昨年の春秋マイル統一王者。昨年の安田記念でも3着、このレースでは2着と善戦しているように、マイルでは実績、実力ともに上位の存在。同馬は昨秋のマイルCS以降は、スプリント路線を使われているが、スプリントでは本質的に忙しく、レースの流れに乗れないことが指数ダウンに繋がっている。

前々走の高松宮記念では、押して積極的に位置を取りにいったばかりに外から被され、中団の内に押し込められる形。最後の直線では馬場の悪い内を突くしか手段がなく、結果3着に敗れた。また、前走の安田記念では、芝1200m戦で積極的に行かせた後の一戦だったため、楽に前の位置が取れたが、好位の中目で我慢の競馬。

4角で外からシュネルマイスターが並びかけてきた段階で、外に出して直線。序盤は持ったままで加速し、鞍上が「抜け出すと甘くなる癖がある」と感じているせいか、ラスト2Fでも追い出しを待っていたが、内の馬が失速してしまったために先頭に立ち、内のグランアレグリア、外のダノンキングリーの目標となっての4着。抜け出すと甘くなるのはインディチャンプに限ったことではないが、不利なのは確かだ。

今回は前走でマイル戦を使われていることで、レースの流れに乗りやすく、ここを目標にしている感も強い。弱点が少ない馬だけにライバルたちに少しでも破綻があれば、ここで再度マイルG1勝ちを決めても不思議ないはず。

【能力値4位 サリオス】
現4歳世代牡馬クラシックロードのNO.2と言える馬。マイルでは朝日杯フューチュリティS勝ちの実績がある。同馬は休養明けの昨秋の毎日王冠では、トーラスジェミニがハイペースでレースを引っ張る展開を、離れた4番手でレースを進め、ラスト1F過ぎで先頭に立つと、後続を置き去りにして3馬身差の完勝。自己最高指数を記録し、大きな成長を見せつけた。

しかし、次走のマイルCSはその反動が出て凡退。出遅れて多くの競馬ファンに「なぜあんな後方から行くの?」と叩かれたが、とても大外枠から前目に入って行けるだけの二の脚はなく、鞍上はいったん中団外でレースを進めたが、手応えが悪かったため、最終的には更に位置を下げて後方の外目から着狙い騎乗をしたもの。

今年初戦の大阪杯は休養明けでスタミナが不足しているところに、直前の大雨の影響で馬場が悪化。そのうえかなりタフな流れだったが、逃げる勢いで出して、レイパパレの後ろを取ってというレースぶり。しかし、大雨の影響で馬場内側の状態が悪化しており、最後の直線で馬場の内を選択したことが致命傷となって、5着に失速した。

また、前走の安田記念も馬場の内が悪い状況で1番枠から出遅れ。そこから促して中団内目を追走し、3角手前で外に出そうとしたが、外から上がって来たダノンキングリーに蓋をされ、内に閉じ込められたまま最後の直線へ。ダノンキングリーが外に誘導したところで中目に出してインディチャンプの直後を狙ったが、ラスト2Fでやや置かれ、ラウダシオンが急に下がって来たのに巻き込まれてブレーキする形。それ自体は致命的ではないが、中位の不利が何度も重なったゆえの8着だろう。このように近3走の敗因がしっかりしているので、評価を落とす必要はなく、今回巻き返してくる可能性は十分にある。

【能力値4位 カテドラル】
3走前のGⅠ・安田記念こそ出遅れ、3~4角の後方外々からの競馬となった影響もあり崩れたが、GⅢの5走前の東京新聞杯、4走前のダービー卿チャレンジT、前々走の中京記念、前走の京成杯オータムHでは連対しているように、充実している。

前走の京成杯オータムHは、コントラチェックがハイペースの大逃げを打った中、カテドラルは2番枠から出遅れ、中団の内から前の空いたスペースを詰めていく競馬で展開に恵まれた面がある。4角で中目に誘導し、進路がなく待たされる場面もあったが、こういう我慢の競馬ができる馬というのは、成績が安定することが多い。

ただし、GⅠとなると近走から更に上昇が求められる。同馬の自分のスタイルを崩さない安定感あるレースぶりは軽視できないが、ここで一気に上昇する要素も多く感じられない。それでもライバルたちに多くの破綻があれば、浮上のチャンスはある。

穴馬はマイルも守備範囲のクリノガウディー

2018年の朝日杯フューチュリティSで2着の実績。同レースは上手く好位の最内を立ち回ったものだったが、2019年の中京記念で2着や2020年の東京新聞杯で3着の実績もあり、マイルは守備範囲。また、昨年の高松宮記念で1着入線したこともあるように、GⅠでも通用する下地はある。

同馬は4走前、5走前とオープンを連勝。ここに来てさらに力をつけている。特に5走前の鞍馬Sは出たなりで中団の外からレースを進め、最後の直線で内に切れ込みながら抜け出し、ラスト1Fでは先頭。いったんは3馬身ほど差を広げての完勝と強い内容だった。

前々走のスプリンターズSは休養明けのセントウルSで好走した反動で、レースの流れに乗れず、置かれ気味の追走で9着凡退。前走のスワンSは道中で酷く折り合いを欠き、レースになっていなかった。しかし、近2走で短距離を使われたことで、マイルのここはレースの流れに乗るのが楽になるはず。もともとマイルでも実績があるだけに、一気の巻き返しが十分に期待できる。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)グランアレグリアの前走指数「-24」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.4秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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