【福島記念】パンサラッサ、圧逃! 4コーナーで勝負を決めたポイントとは
勝木淳
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序盤600mは33.6
春開催を地震で失い、秋にようやく2回開催を迎えた福島競馬場の馬場は長い夏も手伝い、張りかえた芝の育成もよく、良好な状態だった。偏った傾向はなく、内外互角、展開次第で結果が変わるフェアな馬場で福島記念を迎えた。
大逃げを打った5番人気パンサラッサが後続を完封、重賞初勝利を飾った。この勝利でロードカナロア産駒はJRA全10場重賞制覇を決めた。
パンサラッサにとって福島はラジオNIKKEI賞2着以来。あの時は逃げたバビットを好位から追走、捕らえられなかった。以後、その秋のオクトーバーSなど自ら逃げて活路を見出そうとしたが、後続に捕まる場面も多かった。それが2年連続出走した前走オクトーバーSで大逃げを打ち、3歳6月以来の勝利をつかむと同時に自分のスタイルを見つけた。
スタートから11.9-10.8-10.9と10秒台のラップを続け、序盤600mは短距離戦並みの33.6。菱田裕二騎手は1コーナーに入ってもペースを落とさなかった。この時点で追いかける馬はいない。番手のコントラチェックもディアンドルも抑えるしかない。大逃げに持ち込み、前半1000mは57.3と厳しかったが、序盤600m通過後は11.9-11.8と落ち着いてパンサラッサなりに息を入れた。
勝因は苦しい中でも加速するパンサラッサの踏ん張り
この流れに乗ろうとコントラチェックが早めに間合いを詰めてきた。パンサラッサにとって絡まれる形になり、ピンチだった。この場面、残り1000m通過後のラップは11.9-12.4-12.4とさすがに失速気味。このままではコントラチェックを振り切れない。
だが、残り400~200mにかけて12.2とわずかながら加速できた。序盤からここまでのペースを考えれば、このパンサラッサのがんばりは素晴らしい。ここも失速気味のラップであれば、コントラチェックに交わされ、後続に飲み込まれていただろう。たった0.2でも加速したことが勝因となった。
最後は13.1と時計を要したが、コントラチェックを振り切って、後ろとはセーフティーリード。4コーナーで勝負を決めたレースはいかにも福島らしい。小回りを逃げ切るお手本のような競馬だった。純粋な逃げ馬が少なくなった現代競馬においてパンサラッサはこれから貴重な存在になっていくだろう。
得意なレースになった2着ヒュミドール
中距離で序盤がスプリント戦のようなハイペースになると、後方待機組は追走に手間取り、脚を削られてしまう。巻き込まれないように控えても結果的には巻き込まれてしまう。パンサラッサが作ったペースはそれほど過酷だった。
最後に差してきたのはヒュミドールとアラタ、ステイフーリッシュの中団にいた馬たち。ヒュミドールは同じ芝2000mの小倉記念2着。あのレースは序盤こそスローに流れたものの、後半1000mが早くなる超ロングスパート型の競馬で、スタミナが問われた。ヒュミドールはこういった変則的なラップ構成になり、スタミナが問われる競馬に強い。ただし、そういった流れにならないと、4~6着ぐらいに差して終わるタイプ。好走には条件がつき、不発も多い。日経賞4着がベストに近く、2000mは距離が短い。
3着アラタは1勝クラスから4連勝で重賞挑戦。その勢いもあって3着まで来た。厳しい位置からよく差してきており、力はある。エフェクトオンに外からかぶされ、苦しい場面があったものの、怯まなかった。今回はパンサラッサに封じられた形になったが、悲観することはない。小回りならば重賞でもやれる。
4着ステイフーリッシュは4番手から最後まで踏ん張った。パンサラッサ以外の先行勢はみんなつぶれただけに、これはさすがの一言。19年2着のときと同じ57.5キロを背負って、この結果ならまだまだ活力十分。ステイゴールド産駒最終世代の1頭としてもうひと花咲かせてほしい。
2番人気ココロノトウダイは16着大敗。福島巧者ではあるが、どちらかというとゆったりした流れを好位で折り合って進む競馬が得意なタイプ。今回はペースが合わず、後方に控える形になっては力を出せなかった。あまり体質が強い馬ではないので、ダメージが心配だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』(星海社新書)。
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