【エリザベス女王杯】素質が高く、隙がないアカイトリノムスメの上位争い濃厚 穴馬は末脚非凡なデゼル

山崎エリカ

2021年エリザベス女王杯PP指数,ⒸSPAIA

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阪神芝2200mは前半のペースが上がりやすい

今回のエリザベス女王杯も昨年同様、宝塚記念と同じ阪神芝2200mで行われる。阪神芝2200mはスタート後に下り坂があるので加速がつきやすく、最初の1角までの距離も約550mと長い。平坦スタートで最初の1角までの距離が約397mの京都芝2200mと比べ、前半のペースが上がりやすいのがポイントだ。昨年のこのレースはノームコアが逃げ、前半から後続を引き離す大逃げの形となったが、それはコース形態の影響が大きい。

今回は今秋のオールカマー同様にロザムールの逃げが濃厚だが、最内枠のレイパパレは宝塚記念やオールカマー同様に控えて2列目を狙うのか、それとも抵抗してハナを狙うのか。コントロールして控えれば宝塚記念同様にペースは上がらないだろうが、その場合はウインマリリンやウインキートス等が外に出させないように蓋をする可能性が高まる。逆に抵抗して行けば、阪神芝2200mらしい速い流れになるだろう。私は平均ペースよりも速くなると見ているが、ルメール騎手に乗り替わったレイパパレが、どう乗ってくるかも楽しみでならない。

能力値1~5位馬の紹介

2021年エリザベス女王杯PP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 レイパパレ】
デビューから6戦6勝で大阪杯を優勝した馬。大阪杯当日は5レースの3歳上1勝クラスの1600m戦が1分33秒5で決着したように、前半は高速馬場だったが、6レースには大雨が降り出し、馬場が良から重まで一気に悪化。大阪杯は土塊が飛ぶほどで、不良馬場と変わらないかなりタフな馬場だった。

そのような状況の中で、レイパパレは骨を切らせて肉を断つ、ハイペースの逃げを打ち、逃げ切った。最後の直線で馬場の良い外に出したとはいえ、潰しに動いたサリオス、グランアレグリア、コントレイル等にさらに差を広げて、展開に恵まれた2着モスベッロと4馬身差の圧勝。当時に記録した指数はここでは断トツで、レース内容ともに非の打ち所がない。

しかし、前々走の宝塚記念では、内のユニコーンライオンに行かせて、2番手からの競馬で3着。前々走は前半3Fが35秒1と速かったことから控えたことは良かったが、直線序盤で一旦ユニコーンライオンに並びかけて勝負に出たものの、ラスト1Fで少し甘くなり、同馬に再び前に出られたのは、タフな馬場の3走前で激走したダメージによるものが大きい。

立て直しを図った前走オールカマーでは4着。宝塚記念の再現を狙う騎乗で、ハナを主張したロザムールの2番手外でレースを進めた。3~4角で同馬に並びかけ、4角外から競ってきたグローリーヴェイズに合わせて仕掛けた。直線序盤は抵抗していたが、やはりラスト1Fで甘くなり、最後は2着争いに敗れ4着。前走は超高速馬場だったことを考慮しても、相手を考えると負け過ぎの部類。大阪杯の激走の疲れがまだ残っているようなレースだった。本来の力を出せば圧勝だが、不安がないわけでもない。

【能力値2位 ウインマリリン】
昨年のエリザベス女王杯では3歳馬ながら4着と力を見せると、3走前の日経賞ではフローラS以来の重賞制覇を達成。3走前は内枠から二の脚の速さでハナに立ったが、外のジャコマルに行かせてその直後の2列目3番手のラチ沿いでレースを進め、4角最内から一気のスパート。同レースでは逃げた13番人気のジャコマルが5着に粘っているように、かなり前が楽な流れ。ウインマリリンはロスのない立ち回りと展開に恵まれての優勝だった。

一方、前々走の天皇賞(春)は、3走前で先着したワールドプレミアが優勝し、カレンブーケドールが3着という結果。これは前々走が阪神への舞台替わりで、逃げ馬ディアスティマに坂井騎手が乗り替わった影響が大きい。坂井騎手にとって初めて経験する阪神芝3200m戦だったため、ペース配分を誤り、長距離戦としては珍しい前傾ラップの決着になった。中団でレースを進めたワールドプレミアも、同馬マークで乗ったウインマリリンも展開に恵まれたが、ワールドプレミアムに完敗だったのは、前哨戦で好走したことと、長距離適性の差が大きい。

始動戦となった前走オールカマーでは、内枠から二の脚の速さでハナに立ったが、外のロザムールに行かせてその直後の2列目3番手のラチ沿いでレースを進めた。まるで日経賞の再現を見ているかのようなレース。3~4角で2列目外2番手のレイパパレが勝負に出ていく中、仕掛けを待って直線へ。直線序盤でレイパパレが抜け出すその内を突こうとするが窮屈になり、1頭分外に出した。ラスト1Fですぐに伸び、一気に突き抜け1馬身半差の完勝と、ここでもロスの少ない立ち回りと展開に恵まれた。

ただ前走のオールカマーで休養明けながら激走してしまったために疲れがかなり残ったようで、手術した右肘に再び腫れが出て、熱発したとのこと。腫れが出ていること自体は競走能力にさほど影響はないが、抵抗力の低下によるものだけに、今回は万全の状態とはいかないだろう。

【能力値3位 ランブリングアレー】
4走前の愛知杯では3着馬ウラヌスチャームに3馬身差をつけ、マジックキャッスルとの接戦の2着に好走、好指数を記録した実力馬。4走前は激流で先行馬総壊滅となった中、中団後方のマジックキャッスルよりも一列前の位置から、直線でも早めに動き、ジリジリ伸びた同馬とクビ差。ランブリングアレーが早めに動いたのは、中団の中目で包まれたため、4角から直線を向いて開いたスペースに突っ込むしか進路確保のチャンスがなかったから。もう少し脚をタメることが出来ていれば、優勝していた可能性もあった。同馬はその後も能力の高さほどには人気にならず、人気薄の好走が続いた。

そして前走のオールカマーはコントロールして中団中目に控える形を選択。グローリーヴェイズの捲りで3~4角でペースが上がる中、やり過ごしで最後の直線に懸ける選択をしたが、4角から直線序盤で進路がなくなる戸崎競馬だった。前走はラスト2Fで減速しているだけに、進路を失って仕掛けが遅れたことは致命的ではないし、むしろワンテンポ遅らせることができたという意味では良い騎乗だった。しかし、進路ができてからも伸びあぐねたのは、休養明けのぶんだろう。今回はひと叩きされたことで体調面の良化が見込め、再度の馬券圏内突入があっても不思議はない。

【能力値4位 クラヴェル】
3走前のマーメイドSでは意外とタフな馬場で前が厳しい流れ。クラヴェルは、五分のスタートから脚を温存する選択を取って後方待機したことと、ハンデ51Kgだったことが功を奏し、4角の外13番手からしぶとく伸びて接戦の2着に好走した。するとその後の中京記念、新潟記念ともに3着と善戦。前記2レースでも軽ハンデに恵まれた面はあるが、ここに来て力をつけているのは確かだ。ただし、今回は定量戦のGⅠで負担重量が一気に増える点が鍵となる。

また前走の新潟記念は外差し馬場を生かした競馬。外ラチ沿いを強襲した勝ち馬マイネルファンロンほどキレイに嵌ってはいないが、最後の直線で外に出し、ラスト2Fでトーセンスーリヤの内に切ってここからジリジリと伸び始めて同馬とハナ差の3着、やや展開に恵まれた面がある。今回も脚をタメて展開が向き、ギリギリあり得るかどうか。当落線上の馬である。

【能力値5位 アカイトリノムスメ】
桜花賞4着、オークス2着と惜しい競馬が続いていたが、三冠目の秋華賞でようやく栄冠を手にした。オークスは3角外から動いた馬が1着、3着、4着、5着と上位を独占したように外差し馬場だったが、唯一、内から馬群を捌いて抵抗し、勝ち馬ユーバーレーベンに食らいついたのがアカイトリノムスメだ。4角出口で外へ誘導することに成功していれば、オークス馬はこの馬だったと秋華賞の結果からより強く感じている。内で包まれ伸びあぐねたファインルージュが紫苑S制覇にとどまらず、秋華賞でも2着と好走したように。

また、前走の秋華賞も休養明けで万全とまではいかない状態であったが、母アパパネ譲りの潜在能力の高さを見せて優勝。前走は2番手のソダシが3~4角の外からエイシンヒテンに競り掛けて一気にペースアップ。これによりラスト2Fで大きく減速しているが、その速い流れを好位の外から追いかけ、直線序盤で2列目まで上がり、内から捌いて上がってくるアンドヴァラナウトを競り落として優勝となかなか好内容だった。

今回は体調面がさらに上向いてきそうだ。上位人気に支持されそうだが、本来はあくまでチャレンジャーの立場と言える力関係。ただ古馬と比較すれば斤量は軽くキレは出やすい。レイパパレに本来の能力を出し切られればお手上げだが、何らかの破綻があれば、一気に牝馬の頂点に立って不思議ない。アカイトリノムスメはレイパパレのような破壊力こそないが、幅広い競馬に対応でき隙がない。

【能力値5位 テルツェット】
4連勝で今春のダービー卿CTを制覇。3走前の同レースはマイスタイルが緩みないペースで逃げたことで、出遅れて後方からの競馬となった。同馬は展開に恵まれたが、今回のメンバーでは上位クラスの指数を記録した。前々走のヴィクトリアマイルでは14着大敗。いつものように出遅れ後方から馬群の内目に入った。3~4角でも後方の内でロスなくレースを進め、最後の直線では内ラチ沿いを完璧に取り切ったが、いつもの伸びを見せられなかった。これは3走前に激走した疲れによるものが大きいだろう。

立て直された前走のクイーンSでは、後方から3~4角、直線序盤まで進路がなくスムーズな競馬ではなかったが、中団中目から馬群を捌いて伸び、マジックキャッスルをクビ差捕らえ優勝している。ただし、今回はスタミナが不足する休養明けのうえ、一気の距離延長と超えなければならない課題が多い。距離延長に対応するためスタミナを温存し、後方待機から持ち味の非凡な瞬発力を活かす。あとは展開が向いてどこまでかだろう。

穴馬は末脚非凡なデゼル

デゼルは強烈な末脚を武器にデビューから2連勝し、オークスでもデアリングタクトに次ぐ2番人気に支持された素質馬。今春は勢いに乗って阪神牝馬Sで重賞初制覇を達成した。阪神牝馬Sは超スローペースで後半勝負となった中、出負けしていつものように後方から。道中も後方外目を追走し、3~4角で外に誘導。直線ラスト1Fでは最内から抜け出したドナウデルタを外からしぶとく捕らえ、馬群の間を捌いて突っ込んできたマジックキャッスルの追撃を凌いで優勝した。

一方、前走の府中牝馬Sは外枠からやや出負けしたが、じわじわ3~4番手まで上がって勝ちに行く競馬。スタミナが不足する休養明けだったこともあり、息切れして16着大敗の結果となった。この馬の持ち味は非凡な瞬発力。けっして前が厳しいペースではなかったが、先行してはそれが活かせない。叩き台のつもりで乗ったのかどうかは鞍上のみが知るところではあるが、さすがに今回は脚をタメての末脚勝負だろう。今回は展開の後押しもありそうなだけに、一気の差し切りが十分に狙える。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)レイパパレの3走前の指数「-31」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも3.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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