【エリザベス女王杯】上位人気馬に死角あり 京大競馬研はテルツェットの一発に期待

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好メンバーが揃った一戦
11月14日(日)に阪神競馬場で行われるエリザベス女王杯(GⅠ・芝2200m)。今年も京都競馬場改修の影響で阪神開催となるが、大阪杯勝ち馬レイパパレをはじめ、秋華賞馬アカイトリノムスメ、オールカマーを制して臨むウインマリリンなど好メンバーが揃った。
近年はマリアライトやリスグラシュー、ラッキーライラックなど、ここを制して大きく羽ばたいていった牝馬を輩出している当レース。来年以降のGⅠ戦線に向けても要注目の一戦だ。過去の傾向も踏まえつつ予想していきたい。
府中牝馬S組が圧倒も…

まずはエリザベス女王杯3着内馬の前走成績を見ていく(過去10年)。まず目を引くのは府中牝馬S組。過去10年で4勝、2着5回、3着4回と、全体の約半分を占めている。ただ、このうち10頭は府中牝馬Sで5着以内に好走しており、残る3頭のうち2頭は府中牝馬Sで1番人気に支持されていた。今年の府中牝馬S組はアカイイトとデゼルの2頭だが、どちらも6着以下に敗れており、1番人気でもなかった。当てにはしづらそうだ。
これ以外に好走が目立つのは2勝、2着3回、3着1回の秋華賞組と、2勝、2着1回のオールカマー組だ。どちらの組も馬券になったのは前走6着以内の馬であり、府中牝馬S組と同様に前走で上位に来ていることが条件。最後に、秋初戦の馬も4頭馬券に絡んでおり、休み明けはそれほど減点材料にならなさそうだ。
牡馬と渡り合える馬が強い?

次に過去10年のエリザベス女王杯において、芝の牡馬混合重賞の勝利歴別成績を調べた。すると勝利歴ありは【3-1-0-18】で勝率13.6%、勝利歴なしは【7-9-10-126】で勝率4.6%であった。後者の出走数が圧倒的に多いため、好走数でいえば勝利歴なしの馬の方が多いが、率を見れば勝利歴ありの方が結果を残している。また、勝利歴ありで凡走した馬のうち4頭は2歳重賞でしか勝利しておらず、古馬戦での芝混合重賞を勝利した馬に限ると好走率はさらに上昇する。
勝利歴なしの好走馬にはリスグラシューやラッキーライラック(2019年勝利時点)、マリアライト、ラヴズオンリーユーなども含まれており、その後牡馬相手にGⅠを勝利するような馬が飛躍のきっかけとした部分もある。芝の牡馬混合重賞を勝利したことのある馬や、混合GⅠまで勝てそうなポテンシャルを持った馬は当然有力視すべきといえる。
人気上位馬に不安材料 万全な馬から
以上のデータも踏まえると人気上位馬から素直に入ったほうが良さそうなのだが、今年の人気上位馬には不安材料を抱えている馬も多い。
そこで本命はテルツェットとした。4連勝でダービー卿チャレンジトロフィーを制しており、マイル路線とは言え牡馬を完封してきた馬だ。その時の2着馬カテドラルはその後京成杯オータムハンデを勝っており、レベルも決して低かったわけではない。初のGⅠ挑戦となったヴィクトリアマイルこそ14着と大敗したが、これはレース間隔が詰まったことに加え高速決着となってしまい、後方からではどうにもならなかった面が大きい。そして前走のクイーンSでは、後方追走から直線で良く伸びてきっちり差し切り勝ち。負かした相手もマジックキャッスルやフェアリーポルカと骨っぽい相手であり、牝馬戦線では十分力上位だと示した。
今回は初の2200mとなるが、前走のレースぶりを見る限りそこまでマイナスになるとは思えず、むしろマイルのスピード勝負よりは断然向いているように見える。夏の函館以来の実戦だが、前述の通り間隔をあけたほうが良いタイプなのでここに全力投球だ。
対抗はウインキートス。小回りの中長距離は得意で、競馬が非常に上手な馬だ。前走のオールカマーでは内で脚を溜めながら直線で脚を伸ばし2着を確保。一線級の相手でも勝負になることを示した。目黒記念は超スローペースの恩恵を多大に受けていたが、それでも上がり32.5という究極の切れ味を使っているのは能力の高さといえるだろう。これまで大敗したのは道中で致命的な不利を受けた日経賞と、全く仕上がっていなかった札幌記念のみ。今回は状態もかなり良さそうで、阪神芝2200mという絶好の舞台で行われる当レースはまさに大目標。外枠を引いてしまったのは少々残念だが、好位で上手く脚を溜めればチャンス十分だ。
3番手にアカイトリノムスメ。秋華賞は好位追走からきっちり差し切ってGⅠ初制覇。夏を越して馬体はかなりパワーアップしており成長が感じられたが、当日はマイナス体重。成長した馬体が細くも映るほどギリギリの状態で、いわゆるメイチの仕上げだった。そうなると流石に反動が心配で、中3週で再輸送はキツイはず。それでも力は上位であり、秋華賞組は何頭も好走馬を出している。反動が小さければあっさり勝ち切っても不思議ではなく、これ以上評価を下げることはできない3番手だ。
4番手にステラリア。オークスは完全な前崩れの展開にもかかわらず、暴走気味に先行してしまったことが敗因。前走の秋華賞はスタートでやや後手を踏み、後方からの競馬になってしまったことが響いた。それでも最後は良く伸びて上がり2位の脚を使ったように能力は高く、忘れな草賞のようにまともな競馬ができれば通用するはず。初コンビの松山騎手にも期待したいところだ。この馬もアカイトリノムスメと同じく秋華賞組だが、上積みや配当妙味という点ではこちらに期待したい。
5番手にランブリングアレー。前走はオールカマーで7着だったが、勝負所で完全に囲まれてしまい踏み遅れてしまった。本来は好位で競馬できるタイプで、2000m前後の距離では早め先頭の競馬もできる。ヴィクトリアマイルでも2着に好走したが、本来はマイルよりも長いところで良さを活かす馬だと見ているので、エリザベス女王杯の舞台は合っているはず。スムーズな競馬をすれば十分好走圏内だ。
穴馬ではクラヴェルを挙げたい。追い込み一辺倒で届かないことも多いが、この夏は重賞で3走続けて好走と安定した成績を残してきた。横山典弘騎手が軽ハンデでも乗り続けており期待度は相当高い馬のはず。デビュー以来掲示板を外したのは1度だけであり、相手なりに走れる点はGⅠで活きてきそう。母ディアデラマドレは2014年の当レースで3着に来ており、母に続いて好走できるだけの素質は秘めている。
レイパパレはとにかく距離が課題。大阪杯は強かったが、軽い馬体重のおかげで道悪の影響を受けずに済んだのが大きかった。宝塚記念やオールカマーを見る限り2200mはやはり1ハロン長く、シビアなペースでは厳しいか。また今回はルメール騎手との初コンビだが、気性的に難しい面もあるのでテン乗りは不安材料。最後に止まりそうなので評価を下げたいが、最内枠でロスなく運べそうなので印は回した。
ウインマリリンは肘の状態が悪く十分調教を積めていない。オールカマーや日経賞で勝ち切っているように能力の高さは間違いないが、昨年の秋華賞でも肘の状態悪化で調整が遅れ大敗しているように手を出しづらい。次に万全な状態で出てきた時にまた狙いたい。
買い目は◎テルツェットの単勝と馬連流しを中心に勝負したい。(文:川崎)
▽エリザベス女王杯予想印▽
◎テルツェット
◯ウインキートス
▲アカイトリノムスメ
△ステラリア
×ランブリングアレー
×レイパパレ
☆クラヴェル
ライタープロフィール
京都大学競馬研究会
今年で25周年を迎える、京都大学の競馬サークル。馬主や競馬評論家など多くの競馬関係者を輩出した実績を持つ。また書籍やGⅠ予想ブログ等も執筆。回収率100%超えを目指す本格派が揃う。
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