【みやこS】メイショウハリオ重賞初V!  差し決着を招いたクセ強めの展開とは

勝木淳

2021年みやこSのレース結果,ⒸSPAIA

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マルシュロレーヌの快挙、その日に

この日の早朝、日本調教馬がブリーダーズCで2勝。そのうちマルシュロレーヌはダートのディスタフを早め先頭からしのぎ切った。本場米国特有のダート競馬は日本のダート競馬とは別競技。初出走でブリーダーズCディスタフ勝利は快挙という言葉では収まらない。

凱旋門賞は惜しい競馬もあり、あとひと押しのもどかしさを感じるが、ダートのブリーダーズCを自分が生きているうちに日本調教馬が勝てるか。野望というより、夢のまた夢。これまで95年タイキブリザードの初挑戦からダートのブリーダーズCでは絶望感しかなかった。本当に素晴らしい。マルシュロレーヌは日本競馬史において永遠に語り継がれる馬になった。

みやこSは世界のマルシュロレーヌに帝王賞で先着したクリンチャー、オーヴェルニュが上位人気に推され、6、12着。やはり競馬は単純な比較ができない。だから面白い。

この2頭にスワーヴアラミスを加えた中央のダート重賞実績馬に、3歳メイショウムラクモを加えた4頭が上位人気を形成。新興勢力との間でチャンピオンズCへの優先出走権をかけた。

スローペースの前がかり

先行型は複数いるものの、逃げ候補が絞れなかったレースを引っ張ったのはベテランのアナザートゥルース。内枠から激しいアクションで機先を制した。この馬を目標に外枠勢のアシャカトブ、初ダートのダンビュライトが好位にとりつき、オーヴェルニュは内側に入り、砂を被る形。久々の影響なのか序盤は嫌がる素振りを見せた。

序盤は12.7-11.2-13.6。アナザートゥルースは行き切って単騎逃げに持ち込んだ途端にペースを2秒以上落とした。3着に粘りこめたのは序盤のギアチェンジが大きかった。松山弘平騎手の大胆なペース判断が光る。前半1000m通過1.02.1のスローペース。ここまでは先行勢の残り目は十分あった。

しかし中盤からじわじわとペースがあがり、残り800mから11.9-12.2-12.0-12.6。スタミナに自信があるアナザートゥルースが早めに後続を引き離しに早々にペースアップ。これにアシャカトブ、ダンビュライト、クリンチャー、エキスパートランが応戦、4コーナーでは5頭横一線になった。序盤の先行有利の流れを味方に早めに押し切ろうと積極的に攻めたことが、結果的に前がかりを呼んだ。

展開利もあったが、評価したい末脚の安定感

こうした先行勢の攻防を内目で見ていたのが勝ったメイショウハリオ。前走太秦Sでインを突いて巧みにコーナリングで追いあげてきたレースを参考に前を追いかけすぎず、やや置かれる形になりながらも、馬群に突っ込む形でロスを減らし、差し脚を伸ばした。

追いあげてきた先行勢がアナザートゥルースに振り切られ、そのアナザートゥルースも脚が止まり、最後の200m12.6と時計を要したことも味方したが、それでも差し込んできたのは充実の証だ。ダートでは戦績が安定しにくい差し脚質ながら、今年は中距離戦では好走続き、不発がなくなったのは芯が入ってきたからだろう。

父パイロといえば、先日、ミューチャリーが地方所属馬初のJBCクラシック制覇を遂げたばかり。血の勢いもある。メイショウハリオと同じ父パイロ×母の父マンハッタンカフェは16年以降、【10-11-4-57】勝率12.2%、複勝率30.5%と好相性。今後覚えておきたい。

2着ロードブレスは前走エルムS11番人気3着に続き好走。前がかりに乗じた追い込みであったが、直線入り口で進路がなく、追い出しを待たされる形になった。メイショウハリオとはハナ差だっただけに痛かっただろう。昨年の日本テレビ盃など先行策で押し切っていた馬が、その後、斤量を背負わされるようになったからか徐々に後ろ寄りで競馬するようになり、脚質転換が実を結びつつある。

父ダノンバラードはディープインパクトの初年度産駒。種牡馬になってからはイタリアやイギリスなどを渡り歩き、18年ビッグレッドFに買い戻され、日本に戻った。ダート適性が高く、将来、派手さはなくても、稼げる種牡馬になるのではないか。

また母の父はナリタトップロード。サッカーボーイの後継ながら、早世したため、わずか3世代しか残せなかっただけに血統表に残ること自体が貴重で、JRA登録の現役馬は4頭しかいない。同日東京に出走したバンブトンハートなど、ダートで1日でも長く活躍してほしい。

2番人気メイショウムラクモは5着。これまでは気性が難しい馬を柴田善臣騎手が先行させて上手く結果を出してきたが、今回はあえて控える競馬を試みたようだ。将来を見据えて、競馬を教えている期間だと割り切れるが、決して追って味があるタイプではなさそうで、最終的には積極策の方がよさそうだ。


2021年みやこSのレース結果,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』(星海社新書)。


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