【アルゼンチン共和国杯】オーソリティ連覇達成! レースのカギを握った馬と今後狙いたい馬とは
勝木淳
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近年はタイトな競馬になりにくく
5回東京開幕週アルゼンチン共和国杯はオーソリティが82、83年ミナガワマンナ以来の連覇を達成した。これで東京芝2400m以上はすべて重賞で3勝2着1回。ジャパンC出走を期待したくなるほどの実績だ。トップハンデの勝利は16年シュヴァルグラン以来、1番人気の勝利は17年スワーヴリチャード以来の記録。いずれもジャパンCウイナー。間隔を詰めずに使う方針なので今年はないかもしれないが、来年はジャパンC一本に絞って1年間を順調に過ごしてほしい。
さて、レースは正直いうと、凡戦。東京芝2500mはチャンピオンコースの2400mより100m長いだけだが、問われる適性はかなり違う。スタミナ志向が高まり、好走血統も異なる。よりタフな競馬になりやすく、ハンデ戦という条件も合わせて、波乱もしばしば起こる。しかし流れによってはそういったスタミナを問わない競馬になることもある。近年、ダービー後の目黒記念と比べると、アルゼンチン共和国杯はゆったり流れて瞬発力勝負になりやすい。
田辺騎手が逃げたときは
逃げ馬も先行馬も少ない組み合わせになり、戦前からスローペースになることは予想できた。だが、アンティシペイトが大外枠に入ったことで、どの馬と騎手が主導権を奪うのか読みにくかった。
発馬直後に外枠から前を狙って一瞬仕掛けた田辺裕信騎手とボスジラがあっさりハナに立った。立たされたのか立ったのかわからないが、普段はあまり逃げを好まない変幻自在の田辺騎手が主導権を握るとなれば、もうこの時点で超スローペースは決定的。この距離でボスジラに乗ってペースをあげる必要はまるでない。
序盤のラップは7.2-11.6-12.1-13.4-12.9。向正面に出るまでに1、2コーナーで一気に1秒以上のペースダウン。後ろはもう引っ張って折り合いに専念するしかない。前半1000mは推定1.03.4。馬群は一団、どの馬も手応え十分。逆に金縛り状態で遅くても途中で動ける馬はいない。東京芝2500mでまくれというのは無理な話だ。
最後の1000mは12.1-11.8-11.1-11.1-11.9で58.0。序盤より5秒以上速く、中団より後ろは手応えがいくらよくても、どんなに伸びてもノーチャンスだった。
条件次第で狙いたいレクセランス
オーソリティは発馬を決め、しっかり好位の3番手を確保。ルメール騎手得意のいつでもどこからでも動けるポジションを強い馬でとられては敵わない。アンティシペイトを壁にして折り合いをつけ、必要以上にインに入らず、包まれる心配も皆無。抜け出すのは苦もなかった。57.5キロを背負ってスローペースで0.4差は完勝だった。
オーソリティの母ロザリンドはシーザリオの仔でエピファネイアの1歳年下の全妹。東京芝2400~2500mで最強血統といっていい。ぜひともさらなる高みを目指してほしい。
2着マイネルウィルトスはペースを考えれば健闘した。オーソリティとの0.4差は展開に泣いた面を割り引いて評価したい。初角10番手のままだったら絶望的だったが、序盤のなるべく負担にならない2コーナーで外からソロリと位置を押し上げたので、2着に届いた。流れを察知したデムーロ騎手の好判断だった。
父は08年にこのレースを勝ち、デムーロ騎手とジャパンCを勝ったスクリーンヒーロー。近走は1800~2000mに出走していたが、やはりこれぐらいの距離が合う。今年は春にOP入り、夏は札幌記念でソダシと0.4差4着と充実。奥手の血統なので、5歳秋にして本格化ということもある。
3着フライライクバードはこのレースと相性がいい前走3勝クラス芝2200m勝ち上がり組。オーソリティの背後を早々にとった。目の前のオーソリティはまず下がってこない。進路を塞がれる心配がないまさに絶好のポジションだった。ただし、オーソリティに並びかける場面はなく、今回は力負け。それでも昇級初戦、東京芝2500mの重賞で3着なら上々。
こちらも父はマイネルウィルトスと同じスクリーンヒーロー、母の父はオーソリティと同じシンボリクリスエス。東京芝2500mの血統傾向のクセが見事にあらわれた。このコースはたとえスローの凡戦、底力を問われない競馬になったとしても、ある程度瞬発力勝負にも対応しながら、ちょっとスタミナ寄りという血統が強い。
そういった意味では9番人気4着レクセランスはディープインパクト産駒でも3歳時にすみれS勝ち、今年は阪神芝2600mの大阪-ハンブルクC3着とスタミナ色が強め。この好走で狙いどきはさらに明確になった。人気になりにくいタイプであり、上がり時計がある程度かかる舞台なら重賞でも狙っていきたい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』(星海社新書)。
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