【スワンS】コース巧者のダノンファンタジー快勝！　暮れの阪神Cで迫るのは3、4着の3歳馬か

2021/11/01 10:37

勝木淳

ⒸSPAIA

この記事のレース

ＭＢＳ賞スワンＳ

GⅡ

10月30日(土)　阪神11R

レースを引っ張ったホウオウアマゾン

マイルCSの前哨戦というより、1400m巧者による戦いといった様相を呈したスワンS。勝ったのは1番人気ダノンファンタジー。1400m重賞はファンタジーS、阪神Cに次ぐ3勝目。全7勝中6勝が阪神だから、阪神芝1400mはもっとも力を出せる条件。ダノンファンタジーは好走ゾーンが明瞭、かつ狭い。かつて2歳GⅠを制し、チューリップ賞を勝って桜花賞で1番人気に支持された素質馬だった。

古馬になり、好走ゾーンが狭くなったとはいえ、こうまでそのゾーンできっちり結果を出せるのは流石である。この日は混戦模様ながら最終的に1番人気。ピクシーナイトと好勝負を演じた3歳馬ルークズネストではなく、ダノンファンタジーを1番人気に支持したファンも買い時をよく理解していると感心する。

ピクシーナイトを筆頭にマイル以下で複数の重賞ウイナーを送る3歳馬はこの日もカギを握った。先手を奪ったホウオウアマゾンは春にアーリントンCで重賞V。NHKマイルCでも番手につけたスピード型。夏を休養にあて、立て直した今回は1400m戦で持ち前のスピードを生かすべく内枠を利用してハナへ。外枠のビッククインバイオやマイスタイルを従え、前半600mは34.1。

平均的な流れで、18頭が一団のまま進む。馬群で力を出せなかった馬も多かった。勝ったダノンファンタジーも発馬直後、自然な形で好位につけたところで、内と外から馬が押し寄せ、挟まれる形で位置を下げた。そこを冷静に対処し、その後は進路を失わないよう外を意識してレースを進めた。

後半600mは11.4-11.6-12.1の失速ラップ。これで3着に踏ん張ったホウオウアマゾンはハイペース耐性もあり、1400mがベストではないだろうか。同時に好位勢にいたマイスタイルやセイウンコウセイ、フィアーノロマーノらベテラン勢は力を出せなかった。年齢もあるだろうが、やはり自力で流れを引っ張るような競馬でないと厳しいタイプだ。

暮れの阪神Cに向けて

序盤で３コーナーから外目にいたダノンファンタジーは、手応え抜群のタイムフライヤーを外に弾くだけで進路をクリア。川田将雅騎手が少ない手数でその末脚を引き出した。坂での伸びは阪神巧者らしく、牝馬らしからぬ力強さだった。マイルCSが阪神で行われる今年はチャンスである。200mの距離延長に対処できるか。いや、おそらく阪神C連覇が現実的な路線ではなかろうか。

2着は5番人気サウンドキアラ。昨年は年明けから重賞3連勝、Vマイルではアーモンドアイの2着に入った実力馬。秋以降は着順を落としていたが、着差は小さく、くすぶっていた印象。今回は1枠、一団の競馬で行き場がなく、最後の直線でも進路を探しながら、追い出しをかなり待たされた。それが結果的に脚をためる形になった。競馬をしたのは最後の200mだけ。失速ラップ地点でのもので、過信できないところもあるが、瞬時に加速できたのはさすがディープインパクト産駒。こちらは短距離の脚を使わされる競馬より、緩急のあるスローペースで狙ってみたい。

2番人気ルークズネストは4着。一団になった馬群のなか、3コーナーでスペースを失い、下がった。最後は挽回しているだけに勝負所での不利が痛かった。機動力があるタイプではなく、内回りが向かない可能性があり、外枠など条件がつく。

冒頭でも記したように、1400m重賞は春の京王杯SCなどマイルGⅠの前哨戦でありながら、そのスペシャリストの争いだ。1400mのGⅠがない以上、暮れの阪神Cを含め、三つの古馬GⅡが目標になる。馬券を買う側もそれを頭に入れておきたい。スワンSが阪神で行われ、今年はこのレースの結果が阪神Cに結びつくだろう。阪神1400mの女王ダノンファンタジーは当然ながら、逃げた3着ホウオウアマゾン、不利があった4着ルークズネストの3歳勢にも注目したい。

ライタープロフィール
勝木淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬伝説の名勝負 2000-2004 00年代前半戦』（星海社新書）。