【秋華賞】ディアドラが制した2017年世代は世界で活躍! ソダシが挑む三冠最終戦・秋華賞の歴史を振り返る
緒方きしん
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ダイワスカーレット、カワカミプリンセスらも勝利した一戦
先週の京都大賞典では8歳馬マカヒキが復活勝利。2016年ダービー馬が同年ニエル賞以来、実に5年ぶりの勝ち星をあげた。同世代が引退していく中で諦めずに挑戦を続け、ついには勝利を手にした姿に勇気をもらったファンも多いのではないだろうか。マカヒキとその陣営に改めて拍手を送りたい。
今週行われる牝馬三冠の最終戦、秋華賞にも豪華メンバーが集結。白毛馬ソダシはオークスで初めての敗北を喫したものの、札幌記念で古馬ラヴズオンリーユーらを撃破し2000mへの適性が問題ないことを証明。さらにゴールドシップ産駒のオークス馬ユーバーレーベン、三冠牝馬アパパネ×ディープインパクトのオークス2着馬アカイトリノムスメ、トライアル組からはアンドヴァラナウト、ファインルージュらが参戦する。
1996年に新設された秋華賞では、これまでにアーモンドアイ、クロノジェネシス、ダイワスカーレット、カワカミプリンセスといった名牝が勝利をあげてきた。今回は、そんな秋華賞の歴史を振り返る。
1番人気は明暗がハッキリと分かれる
ここ5年で1番人気は2勝。デアリングタクト、アーモンドアイがいずれも1倍台の圧倒的人気で牝馬三冠を達成した。しかし一方で、2019年の1番人気ダノンファンタジーは8着、2017年の1番人気アエロリットは7着、2016年の1番人気ビッシュは10着と、いずれも馬券圏外に敗れている。
デアリングタクトが勝利した昨年も決して平穏決着というわけではなく、2着には10番人気マジックキャッスル、3着には9番人気ソフトフルートが食い込み、ワイドはあと少しで万馬券の93.1倍となった。歴史的にも1番人気の大敗は珍しいことではない。99年トゥザヴィクトリーが13着、翌年シルクプリマドンナが10着と、2年連続で1番人気が大敗したこともあった。
そもそも、第1回となる96年は1番人気のエアグルーヴが10着に敗れている。これはパドックでフラッシュに驚いたこと、レース中の骨折などが影響したもの。新規の競馬ファンの方も増え、アイドルホースを見に競馬場へ……と考える方も少なくないと推察されるが、パドックではフラッシュを使用した撮影をしないこと、大声をあげたりしないことなど、改めてマナーの徹底を呼び掛けていければと思う。
また、ここ10年では関西馬が9勝・関東馬が1勝と、圧倒的に関西馬優勢な状況が続いている。その唯一の勝利をあげている関東馬はアーモンドアイで、その前に勝利した関東馬はアパパネと、いずれも三冠牝馬。創設初年度からの歴史を振り返っても、97年メジロドーベル、08年ブラックエンブレムをあわせた4勝のみだ。
美浦・小島茂之厩舎の所属馬ブラックエンブレム(11番人気)、プロヴィナージュ(16番人気)が1、3着に食い込んだこの2008年は、三連単の配当が109820.2倍という1000万馬券が飛び出している。
世界で活躍したディアドラ
牝馬が強い時代と言われて久しいが、2017年の秋華賞はそれを色濃く反映するメンバーたちが集結していた。この年のオークス馬ソウルスターリングは毎日王冠から天皇賞(秋)へと向かうプランを発表。NHKマイルCで牡馬を撃破したアエロリット、無傷の3連勝で挑んだ皐月賞で敗北し牝馬路線に戻ってきた素質馬ファンディーナらが人気を集めるも、飛び抜けたものではなく、6番人気までが単勝オッズ一桁台という拮抗状態の秋華賞だった。
レースはカワキタエンカが引っ張り、アエロリット・ファンディーナが2番手と有力馬が前目につける。一方で、紫苑S勝ち馬ディアドラは後方からの競馬を選択。直線に入ると、早めに仕掛けたモズカッチャンが先頭、さらに道中でポジションを押し上げたリスグラシューが脚を伸ばす。
大接戦かと思われたゴール前、ただ1頭、35秒台の上がりで差し切ったのが、ディアドラだった。ディアドラは翌年に国内重賞を2勝するほか、ドバイターフ3着、香港カップ2着と海外でも善戦。さらには翌年にドバイ、香港で連戦すると、そのまま帰国せずにイギリスへ移動。英G1ナッソーステークスを勝利、愛チャンピオンSで4着、英チャンピオンSで3着など、海外に長期滞在しながら各国の大レースに挑戦し続けた。
さらに同年秋華賞2着のリスグラシューは、翌年の香港ヴァーズで2着、さらにその翌年にはQE2世Cで3着と好走。そして帰国後に宝塚記念を勝利すると、オーストラリアG1のコックスプレート、有馬記念と連勝して、年度代表馬に選出された。3着のモズカッチャンもエリザベス女王杯制覇の実績を提げドバイ遠征を敢行、7着に敗れたアエロリットは渡米してペガサスWCTに挑戦した。非常に国際色豊かな戦績を歩んだ馬が多い世代であった。
母としても活躍する秋華賞好走馬たち
名牝が集う一戦だけに、好走馬は引退後に母としても活躍することが多い。2006年3着馬フサイチパンドラはアーモンドアイを、2003年2着馬アドマイヤグルーヴはドゥラメンテを、2001年2着馬ローズバドはローズキングダムを輩出。優れた競走能力を持つ牝馬が、偉大なる母となった。
一方で、急性心不全により急死したラインクラフト、医学的に受胎が不可能だったファインモーションといった、仔を残せない例もある。上述した2017年秋華賞でレースを引っ張ったカワキタエンカも、ルーラーシップとの初仔を宿していたが、心臓疾患により早逝。血を繋ぐということの難しさを改めて感じた。
今年の3歳牝馬ではアパパネやジェンティルドンナの仔が活躍している。数年後にはアーモンドアイやクロノジェネシスの仔も我々ファンを熱狂させてくれる活躍をするかもしれない。さらにその数年後、今年の出走馬の仔がその輪に加わり競馬界を盛り上げてくれることを願いつつ、この秋華賞を堪能したい。
ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
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