【毎日王冠】シュネルマイスターが安田記念のリベンジ成功!  名勝負に見える1、2着馬の適性とは

勝木淳

2021年毎日王冠のレース結果,ⒸSPAIA

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ペースによって変化する適性

これまで数々の名馬たちが多くの名勝負を繰り広げた毎日王冠に新たな激戦が加わった。先に抜け出したダノンキングリーを猛然と追うシュネルマイスター。ゴール前の攻防は迫力そのもの。安田記念1、3着馬が休み明けから見せてくれた。

最初のポイントはスタート。シュネルマイスターはバランスを若干崩し、ダノンキングリーはゲートで遅れ、どちらも後方からレースを進めることになった。再度ブリンカーを装着した東京巧者ダイワキャグニーが先手を奪うところを2コーナーで外からトーラスジェミニが仕掛けて、ハナを奪う。400m通過後からゴールまでラップタイムはすべて11秒台、開幕週の高速馬場を考えれば、早いというわけではないが、緩みがなく、息が入りにくい流れはマイル戦に近い。

東京芝1800mは展開いらずといわれるが、ペースによってはレースの性質が大きく変わる。2コーナーから向正面でラップが落ち、折り合い重視の引っ張り合いになれば、2000m戦に近い中距離戦になり、ラップが落ちずに一定のペースで進めば、マイル戦に近いスピード勝負になる。

1、2着馬の適性の差とは

開幕週の毎日王冠は元々高速馬場も手伝い、マイル戦寄りになりやすく、勝ち馬にはカレンブラックヒルやアエロリット、サリオスなどマイラータイプも多い。今年もトーラスジェミニがペースを落とさなかったことで、マイラー寄りのスピードタイプに味方した。とはいえ、シュネルマイスターは道中、後方2、3番手。ルメール騎手は休み明けなので、無理に急かさず、馬任せの競馬を試みた。シュネルマイスターも序盤は反応が悪かったが、全体の流れがペースアップした残り600mで手応えが向上し、エンジンがかかった。3歳だが、賢い馬で力の入れどころと抜きどころをつかみつつあるようだ。

最後の直線で外に出てからはルメール騎手のステッキにしっかり反応、途中で反応しすぎる場面もあったが、最後の600m33.0の末脚を繰り出した。上がり2位は同じ位置にいたサンレイポケットの33.5なので、レベルが違った。NHKマイルCで見せた反応の悪さは改善し、外から差しにくい馬場でも瞬発力を発揮、成長を示した。

ルメール騎手が2000mでも大丈夫と明言するように、いよいよマイラーではなくなりつつあるかもしれない。もっともルメール騎手にはグランアレグリアがいるので、やはりマイルCSに進む公算は高いが、マイラーでも太刀打ちできる天皇賞(秋)も面白いだろう。

2着ダノンキングリーは後方にいながら、途中で川田将雅騎手が大きく外に出して、中団まで動いた。シュネルマイスターとは動いた分の差ともいえるが、動かなければどうなっていたか分からない。やれることはやってシュネルマイスターに差された。ちょっと言い訳できない敗戦だ。

しかし、これで1800mは4戦3勝2着1回、安田記念勝ちも含め、どちらかというと瞬発力勝負は得意ではない。シュネルマイスターとは対照的で、こちらはマイルCSがベスト。またディープインパクト産駒らしく詰めて使うとパフォーマンスを落とす部分もあるので、中2週の天皇賞(秋)には向かわないのではないか。川田騎手が安田記念よりいい状態でレースに挑めたと振り返るように、ここを使ってさらにいい状態で春秋マイルGⅠ制覇を狙ってほしい。

不向きな流れを踏ん張ったポタジェ

マイラー寄りの持続力勝負になったことを考えれば、3着ポタジェは大健闘だろう。中距離中心に使われ、ここまで【5-4-1-0】と崩れない安定した末脚が武器。毎日王冠の流れはポタジェにとって厳しく、手応えも4コーナーでは悪かったが、最後まで粘って3着を確保した。緩急が必要な流れになれば、もっとやれる。ジンジャーパンチの系統は晩成型。半姉ルージュバックは早くから期待されながら、重賞連勝は4歳6~10月、ベストパフォーマンスはインを抜けてきた5歳秋のオールカマー。ポタジェもそろそろひと皮むけそうな予感がある。緩めの中距離戦なら重賞制覇は近い。

4着ダイワキャグニーは7歳でも変わらない東京巧者ぶりを発揮。流れを考えれば、前で踏ん張った競馬は評価していい。ブリンカー再装着もきっかけになりそうで、東京コースではまだ見限れない。

5着にカイザーミノルが入ったこともマイラー寄りの流れだった証。ベストは【2-0-1-0】の1400m。3番手からの粘り込みは馬場も味方した分もあるが、あえて1800mのここを使って5着は陣営の好判断だろう。

マイラー寄りだったことを考えると、9着ケイデンスコールはベストの左回りだったことも加味すると、物足りなかった。上半期に重賞を4戦した分の消耗があるのではないか。ただし、ダノンキングリーが動いたときに脚を使わされたところもあり、最後の直線ではスペースに出るまでに手間取った場面もあった。そういった部分が敗因であれば、今後も左回りのマイル重賞で狙える。


2021年毎日王冠のレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。

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