【シリウスS】スタミナ勝負なら負けない! サンライズホープの可能性と次走以降に狙いたい馬とは

勝木淳

2021年シリウスSのレース結果,ⒸSPAIA

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器用な追い込み馬、ウェスタールンド

11月のJBC、12月のチャンピオンズCと晩秋から冬に向けて活気づくダート界。それらビッグレースに向けて各地で前哨戦にあたるダートグレード競走も多く、白山大賞典、日本テレビ盃、そしてマイルCS南部杯と有力馬は自然と分散する。シリウスSはそういった状況に加え、ハンデ戦のため、トップランクの参戦はなく、混戦模様になりやすい。

今年のトップハンデは58.5キロのケイティブレイブ、58キロにアナザートゥルース、ウェスタールンド、さらに57.5キロはリアンヴェリテ、ハヤヤッコ。重ハンデ馬が多く、最軽量53キロのテンザワールドとの上下差は5.5キロだった。

これら背負わされた組の中で、もっとも中央のスピード重視の競馬、かつ中京実績があったウェスタールンドが2着。気がつけば9歳になったが、6歳時のチャンピオンズCでは後方からインを突いて直線一気で2着。まるでワープしたかのような競馬だった。この日も最後方待機で同じように4コーナーでインに入り、前の馬を交わしつつ、縫うように進路を切りかえて最後まで伸び、あのチャンピオンズCの再現を狙った。今回のような形であれば、不安定な追い込み型であっても成績は安定するだろう。そう簡単にできる芸当ではないが、ダートの追い込みタイプで大きく崩れない戦績は頭が下がる。

タフな流れで真価発揮、サンライズホープ

実績馬ウェスタールンドを封じたのは4歳馬サンライズホープ。先行して自慢のスタミナを見事に発揮した。序盤は距離に不安があるリアンヴェリテが飛ばし、残り1000mから早めにペースがあがり、12.1-12.1-12.6-12.4-13.1と先行勢にはタフな競馬になった。中盤のペースでスタミナを削られ、サンライズホープが残り400mでスパートした地点で抵抗できる馬は限られ、最後の200mは13.1、サンライズホープも苦しかったが、追いすがった3着以下の馬たちも限界だった。

ここを踏ん張れたサンライズホープは直近の成績を考えても、かなりスタミナがある。マジェスティックウォリアー産駒はこれで今年JRA重賞2勝目。いずれも左回りだが、スマッシャーは重馬場の東京高速ダート、こちらはスタミナを要する流れ。これまでの産駒のダート成績をみると、1800m以上の成績がよく、出走数こそ少ないが、2000m以上だと【3-8-2-22】。日本でエーピーインディ系というと高速ダート、わりと短めのイメージがあるが、マジェスティックウォリアーはもちろん道悪もこなすが、良馬場、中距離以上にも対応できる。日本のダート界は、芝と同じく中距離中心。エーピーインディ系でもチャンピオンクラスを出せるポテンシャルは十分ある。

サンライズホープはこれで重賞タイトルを獲得したものの、賞金面ではまだまだ低く、チャンピオンズC出走は不透明、ただスタミナを問われる流れになれば、上のクラスの馬たちとも戦えるだろう。母の父はスペシャルウィーク、母系からもスタミナをたっぷり受け継ぐ。幸英明騎手は、この勝利でシリウスSはなんと5勝目。舞台はここ2年こそ中京だが、レース相性がいい。そうはいっても最後に勝ったのは7年前の14年クリノスターオー。いわゆる忘れたころに、というやつだった。

ダート路線の3歳馬

3着には2番人気ブルベアイリーデ。サインライズホープを最後まで追いかけたが、残り200mで苦しくなり、ウェスタールンドに捕まった。前走で1800m戦を勝ったからこその参戦だったが、冬は1400mの根岸Sを走っていた馬なので、距離を考えれば大健闘。今週から始まる東京開催に適鞍はたくさんある。

4着ダノンスプレンダーは夏を休養にあて、再浮上のきっかけを掴んだ。道中は中団後ろのイン、手応え抜群という感じではなかったが、それでもしぶとかった。昨年のシリウスSはスローペースを追い込んで0.5差の4着。今年はタフな流れを中団追走から勝負所で動いて0.4差の4着。内容は今年の方が濃く、得意の阪神ロングラン開催に向けて調子を上げていきそうだ。

1番人気の3歳ゴッドセレクションは16着。3コーナーで追走一杯だった。どうやらツメを痛めた模様。JDDは地方のキャッスルトップが勝利。そのキャッスルトップは盛岡のダービーグランプリ5着。JDDのレベルにはこれでやや疑問が残った。ゴッドセレクションはアクシデントに見舞われたが、ダート路線の3歳馬は今後も慎重に考えたい。


2021年シリウスSのレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。


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