【スプリンターズS】ダノンスマッシュは春秋スプリント統一王者になれるか? 展開の穴はシヴァージ

山崎エリカ

2021年スプリンターズSPP指数,ⒸSPAIA

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モズスーパーフレアとビアンフェは、今年も競り合うか?

昨年のスプリンターズSはモズスーパーフレアとビアンフェの逃げ争いが激化し、前半3F32秒8。3番手以下を大きく引き離してどんどんペースを引き上げたことで、4角最後方のアウィルアウェイが大外から一気に詰めより、3着に食い込んだ。昨年は馬場の内側が悪化し、外が伸びていたというのも同馬の好走要因のひとつである。

モズスーパーフレアとビアンフェは、昨年のこのレース以来の激突になるが、両馬ともに快速馬だけに、今年も競り合いは避けられないと見ている。中山芝1200mは外回りの坂の頂上付近からスタートして、約4.5mもの坂を下って行くコース。そのため快速馬ほどスピードに乗ってしまいやすい。さらに3~4角のカーブが緩く、下り坂で加速がついたまま4角に進入するため、あともう少しのところで快速馬が失速し、差し馬が台頭することが多い。

馬場が悪化すると、差し、追い込み馬も追走にスタミナを消耗するため、2007年のスプリンターズSのように前が残ることもあるが、基本的に快速馬が自滅しやすいコース形態である。今年はビアンフェが8番に入り、モズスーパーフレアが大外16番。ビアンフェが逃げてその外からモズスーパーフレアという隊列になりそうだが、昨年のようにペースが上がる要素はある。馬券はその前提で組み立てたい。

能力値1~5位馬の紹介

2021年スプリンターズSPP指数,ⒸSPAIA



【能力値1位 ピクシーナイト】
この夏よりスプリン路線に転向し、古馬初対戦の前々走CBC賞でいきなり2着。前走のセントウルSでもさらに指数を伸ばす形で、2着と好走した。前走は高速馬場だったにせよ、逃げ馬が前半3F32秒9と相当速いペースで飛ばしたことで1分07秒2の好タイム決着。そんな中で外々からロスの多い競馬でかなり強い内容。指数も「-23」と優秀で、前走同様に走れば、今回も勝ち負けになる。

ただし、今回は休養明けで自己最高指数を記録した後の一戦。前々走から前走にかけての指数の上げ幅が極端ではなかったが、それでもやや疲れが残ってしまう可能性が高い。しかし、3歳馬は勢いがあり、それでも好着順にまとめてしまう可能性も否定できない。今回問われるのは、この馬の潜在能力がどこまで高いのかだ。

【能力値2位 ダノンスマッシュ】
昨秋のスプリンターズSは、休養明けのセントウルSを快勝した後の一戦だったため、おそらく疲労残りで好走の期待値はあまり高くないと見ていたが、2着に食い込み驚かされた。その結果からダノンスマッシュは相当力をつけているのではないかと見て、次走の香港スプリントでは、香港勢が手薄だったこともあり、勝ち負けになると見ていた。予想どおり優勝して、一段階上のレベルに駆け上がった。

前々走はスタミナが不足する休養明けながら、重馬場の高松宮記念を優勝。前走のチェアマンズスプリントPは、タフな馬場の激戦を制したダメージが残っていてある意味、予定どおりの凡退。出遅れて中団馬群の中目まで押し上げたものの、前半が劇的なスローペースで進路がなく、3角手前から外に出したことで、ロスの大きい競馬になってしまった。

一言で言えば、「スローペースなのに、位置取りが悪すぎた」のが敗因だが、相手が強かったり、反動が出ていると取りたい位置が取れなくなってしまうのが競馬の本質である。今回は再度の休養明け。さすがに100点のデキとは言えないが、この馬の能力ならば、あっさりクリアしてしまう可能性が高い。

【能力値3位 レシステンシア】
今年よりスプリント路線に転向し、1月の阪急杯では休養明けながらマイペースで逃げて自己最高指数の「-23」で優勝。成長力も見せつけた。その次走の高松宮記念では、阪急杯から1Fの距離短縮だったこともあり、行きっぷりが悪く、また外枠だったため好位の外目からの競馬となった。しかし、馬場は内が緩く、外のほうが伸びる状態だったため、これが功を奏して2着に善戦した。

前走のセントウルSは高速馬場だったが、逃げ馬が前半3F32秒9と相当速いペースで飛ばした中、2列目の内を追走してラスト1F手前から先頭に立って押し切る強い内容。今回は休養明けで好走したダメージとの戦いになる。レシステンシアが昨年のダノンスマッシュのように一段階上の潜在能力があるなら、ここもクリアするだろう。しかし、それはなかなか難しいことではある。

【能力値3位 クリノガウディー】
初めての芝1200m戦となった一昨年の高松宮記念では、3列目の外からレースを進め、直線の上り坂で動いてゴール手前で先頭のモズスーパーフレアを捉えて1着入線した。しかし、高松宮記念では直線で動いた際に内に刺さり、内から伸びて来ていたダイアトニックの進路を妨害。1着→4着降着となった。

しかし、同馬は近走で鞍馬S、安土城Sを連勝し、前走のセントウルSでも3着と善戦しているように、中京巧者であることは間違いない。トップスピードを長く維持できず、終いで甘さを見せることから、ラスト1Fがほぼ平坦の中京コースは合っているのだろう。遡れば中京記念で2着の実績もある。

よって、前走のセントウルSはかなりチャンスがあると見ていたが3着止まりだった。前走は5番手外から向正面で馬群の切れ目で内に入れて、4角を回ってから外に出す競馬。6番手のピクシーナイトよりも距離ロスが少なかったが、ピクシーナイトに先着を許してしまった。それでも近3走の走りは優秀で、同様に走れればここも上位争いに加われるが、今回は前走からのプラス材料が少ない点がネックだ。

【能力値5位 ファストフォース】
長期休養明け、初めてのプリンカー着用で挑んだ前々走のCBC賞は、やや出負けしたものの、内枠から押して先手を主張しハナを取り切った。そしてウルトラ高速馬場を利して逃げ切り勝ちを収めた。小倉の芝コースはJRA屈指のタイムが出るコースだが、それにしても今夏の特に開幕週はまるでコンクリートの上を走っているかのように路盤が硬く、1分06秒0の日本レコードタイムを記録。

馬場が高速化してスピードが速くなればなるほど、コーナーでの遠心力は大きくなるもの。遠心力を嫌って位置を下げ内々の競馬に徹した馬も要れば、前に行きたいがあまりに遠心力に挑戦して3角で外に膨らんだ馬もいた。

このことから次走の北九州記念では信頼しきれない面があった。しかし、同馬は北九州記念でテンの速い外のモズスーパーフレアにハナを譲り、2番手から終始馬場の良い外目を選択。4角では外から追い上げてきたヨカヨカを外に張りながら、さらに馬場の良い外に出して2着と好走している。

近2走とも上手く立ち回っての好走。今回もモズスーパーフレアとビアンフェから離れた3番手の内々というパターンなら通用する可能性もあるが、今回は近2走から一転して、時計の掛かる中山の芝コース。さらにペースも速いとなると、近2走のようにおっつけて行く競馬では、スタミナ面での不安は残る。

穴馬はメンバー最速級の末脚が武器のシヴァージ

シヴァージはダートから芝に路線転向し、地道に上昇。同馬は追い込みが届かず善戦止まりを繰り返していたが、芝2戦目の淀短距離Sから、3走前のシルクロードSまで、8戦連続でメンバー最速の上がり3Fタイムを記録している。3走前はモズスーパーフレアが出走しており、やや速い流れに持ち込んでくれたことや、外差し馬場を利して重賞初制覇を成し遂げた。

前走のパラダイスSは休養明け好走後の一戦で、出遅れたところから位置を上げ、外を回りながら脚を小出しに使うロスの大きい競馬。本来の力を出し切れていない。今年もビアンフェ、モズスーパーフレアらが昨年同様にペースを引き上げてくれれば、この馬の得意戦法である追い込みに徹することができ、メンバー最速の上がり3Fタイムを駆使して上位争いに加われそうだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ピクシーナイトの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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