【凱旋門賞】記念すべき第100回 東大HCが誇るフランス競馬通はタルナワを本命に

東大ホースメンクラブ

2021年凱旋門賞東大HCの印,ⒸSPAIA

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凱旋門賞の傾向をチェック

凱旋門賞といえば、牝馬や3歳牡馬の活躍が目立ち、古牡馬の勝利はほとんどなかった。しかし、2017年の斤量見直しに伴い、4歳以上の牡馬の活躍が目立っている。近2年の勝ち馬であるヴァルトガイスト・ソットサスはどちらも4歳以上の牡馬だった。

脚質面での有利不利についても傾向に変化が見られる。以前は差し追込馬には厳しかったものの、パリロンシャン競馬場は改修に伴いオープンストレッチを導入。以降は、有利不利は小さくなっている。現に一昨年の勝ち馬であるヴァルトガイストは4角7、8番手から大外を差し切っている。さらに今年は仮柵の位置を6メートル外に持っていくため、より差し追込み馬に有利となるだろう。

A・オブライエン厩舎は不調傾向

日本人にとっては海外競馬の代名詞ともいえるA・オブライエン調教師であるが、意外にも近年の凱旋門賞では不調傾向にある。

過去5年の凱旋門賞主要な調教師別成績,ⒸSPAIA


毎年のようにA・オブライエン厩舎の所属馬が大挙して出走してくるものの、ファウンドの勝った2016年の凱旋門賞で馬券圏内を独占して以来、好走から遠ざかっている。一方で地元のファーブル厩舎やルジェ厩舎の所属馬が好調。今年の出走予定馬ではA・オブライエン厩舎所属馬が3頭スタンバイ。これらはデータ面で言えば少し評価を下げたい。

欧州三冠・日本馬の悲願達成はあるか?

今年はアダイヤーが英ダービーとキングジョージを勝利しており、日本流に言えば「欧州三冠」の達成もありそうだが、英ダービー馬の成績は凱旋門賞では芳しくない。

英ダービー馬 3歳時凱旋門賞成績,ⒸSPAIA


ダービー馬ということで人気の中心にはなりやすいものの、エプソムとパリロンシャンでは、求められるものがあまりにも違いすぎるためか、苦戦傾向にある。アダイヤーについては、キングジョージで勝利しているという点で反論もありそうだが、キングジョージは5頭立てのスローペースを先行し、早めに抜け出し押し切っただけ。メンバーレベルもそれほど高くなく、評価は上げられない。

日本馬2頭についても簡単に見ていこう。クロノジェネシスは今の日本競馬を代表するレベルの強さで馬場を問わないが、過去10年で前走が7月以前であった馬は全頭が3着外に敗れており、宝塚記念から直行というローテーションは厳しい。ドバイでしのぎを削ったミシュリフを物差しに通用の素地があるとする見方もあるが、そのミシュリフがキングジョージでアダイヤーに完敗した事実は重い。オッズの観点からも買い要素が少ないというのが正直な見立てだ。

一方、ディープボンドは前哨戦のフォワ賞を制しており、適性面では問題なし。欧州の一線級に太刀打ちできる能力があるか問われる一戦となる。

◎タルナワ
愛米仏各国のGⅠで連対している本馬は馬場状態や競馬場を問わず必ず伸びてくることを強みにしている。前走こそ久々の敗退となったが、直線の不利や前哨戦仕上げであったことなど明確に敗因が挙げられるため、むしろ人気を落とすなら買い時である。管理するD・ウェルド調教師は、前走後から最高の体調であるとしており、状態面でも万全の状態で望めそうなのも好印象である。

◯ディープボンド
GⅠ未勝利馬で、現地オッズも今一つではあるが、素直に前哨戦のフォワ賞勝利を評価したい。本馬は京都新聞杯で勝利するなど平坦コースで強く、同じく直線は長い平坦であるパリロンシャンのコース適性もありそうだ。血統面でも、父キズナは凱旋門賞4着の実績があり、相性は悪くないと言える。

▲スノーフォール
3番手にも日本と深いなじみのある本馬を推したい。日本産のディープインパクト産駒ながら英オークスを圧勝。前走は伸びきれず2着となったが、鞍上のデットーリ騎手が明言しているように、異常なスローペースに巻きこまれたことが敗因であり、凱旋門賞での巻き返しは十分期待できる。

△アダイヤー
今年の英ダービー馬については△止まりとしたい。前述したように英ダービー馬と凱旋門賞との相性はあまりよくない。むしろ、人気を集めるようであれば積極的に消していきたいほどである。もっとも、未だに一線級の古馬や3歳牝馬と手合わせをしておらず、未知なる魅力を秘めているため、この評価とした。

以下、同じ舞台で行われるGⅠパリ大賞典を圧勝したハリケーンレーン、昨年の凱旋門賞では人気薄ながら5着と善戦したラービアーなどを狙いたい。

▽凱旋門賞予想▽
◎タルナワ
◯ディープボンド
▲スノーフォール
△アダイヤー
×ハリケーンレーン
☆ラービアー

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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