【オールカマー】エリザベス女王杯は激戦必至! 本番でも狙いたいウイン2騎!

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レイパパレに立ちはだかる距離の壁
現役最強牝馬クロノジェネシスが渡仏、国内の秋中距離戦線を占うオールカマーは牝馬のレイパパレが主役、2番人気はウインマリリン、4、5番人気にはランブリングアレーとウインキートス。上位人気は牝馬ばかり。改めて牝馬は層が厚い。
結果はウインマリリンが勝ち、2着は同馬主同枠のウインキートス、3着に牡馬のグローリーヴェイズ、4着に1番人気レイパパレだった。レースのカギはやはりレイパパレだった。重馬場の大阪杯を逃げ切った先行力とパワーを兼ね備えるレイパパレにとって、宝塚記念で最後にユニコーンライオンに差し返されたように2200mという距離が課題だった。秋の最大目標エリザベス女王杯は宝塚記念と同じ阪神芝2200m。最後の200mを克服しなければいけない。
レースはこちらも牝馬のロザムールが予想通り先手を奪い、レイパパレは外目の2番手へ。ところが、正面直線から外回り2コーナーにかけて、どうもリズムが悪い。行きたがる馬を川田将雅騎手がなだめながらレースを進める。前半1000m1分00秒7は、ある程度時計が出る中山の馬場でのGⅡ戦としては遅め。最後の200mを乗り越えるためには、リズムよく行きたかった。
さらに後方にいたグローリーヴェイズが残り800mからレイパパレを目標に進出、レイパパレはこれに応戦する形になった。最後の800m11.8-11.5-11.7-12.1。コーナーでグローリーヴェイズに抵抗するようにしっかり脚を使えた点は収穫ながら、やはり坂をあがった最後の200mで苦しくなった。休み明けで4着は大きく悲観するものではないが、2200mという距離に対しては課題を残した。
他馬のペースに合わせて競馬をするのがまだ難しい印象。ロザムールを行かせず、自ら先手をとり、自分のリズムで運ぶというのも手もあったかもしれないが、どちらにしても先行馬だけに今回のグローリーヴェイズのように目標にされてしまう。ベストは2000mではないだろうか。
持久力勝負に強いウインキートス
レースを制したウインマリリンはこれでフローラS、日経賞に次いでGⅡ・3勝目。昨年のエリザベス女王杯4着からGⅠ、GⅡばかりを走り、すべて1秒以内。もっとも負けたのは天皇賞(春)の0.9差なので、中距離ではすでにトップクラス。その成績の源泉は先行力。いつもある程度の位置で道中はリラックスして走れる。今回も枠を利して、レイパパレのイン、ポケットに入ってレースを進め、残り800mの外の攻防をコーナリングでやり過ごし、直線は抜け出した。
だが、最後の直線では一旦、下がるロザムールとレイパパレの間に入ってしまい、進路を失った。素早く外に切り返し、レイパパレとグローリーヴェイズの間を抜いた。狭いところを突っ込んでいける勝負根性もこの馬の武器だろう。だが、レイパパレが大きくバテたわけではなかったから進路があったが、一歩間違えればという場面でもあった。横山武史騎手は、エフフォーリアの皐月賞などインコースで脚を溜め、勝負所をさばく巧さは認めつつも、その反面、詰まってどうにもならないということもある。改めてギャンブル性の高さを認識した。
2着ウインキートスは、超スローペースの目黒記念を勝った際に恵まれた印象もあったが、今回は先に動いたグローリーヴェイズに先着したわけで、値千金だろう。道中はウインマリリンを目標に進め、後半800m地点からペースアップした際には手応えがやや悪くなりながらも、最後までしぶとく伸びた。
さすがは父ゴールドシップ。追って追って盛り返す力がある。母イクスキューズも現役時代はロングスパート型、半兄ウインイクシードは先行して捕まりそうで捕まらない渋さが身上。血統背景からも文句なしのロングスパート型。切れ味勝負になりやすい牝馬同士よりも牡馬相手のレースに狙いを定めたいところだが、上位陣がそろって参戦するエリザベス女王杯はウインキートス向きの流れになる可能性がある。舞台は父がGⅠ・2勝をあげた阪神芝2200m。適性は高い。
3着グローリーヴェイズは2コーナー後方2番手から外をまくって、4コーナーではレイパパレと並んで先頭。レースを早めに動かし、厳しい流れに持ち込んだ立役者だ。休み明けでこれほど荒っぽいレースをすれば、当然、最後は苦しかった。いかにも反動が出そうなレースは心配だが、目標であるジャパンCに向けて上々のすべり出しだった。不安は東京の高速馬場だろう。瞬発力勝負では分が悪いので、どうしても荒っぽい競馬になってしまう。
天皇賞(秋)の優先出走権がかかったレースだが、上位に来た牝馬はいずれもエリザベス女王杯が今後の目標。先行タイプばかりで瞬発力勝負は避けたいところ。今年のエリザベス女王杯も舞台は阪神芝2200m。持久力戦になりやすい舞台だけにそろって参戦してくれば、今年はかなり厳しい流れが予想される。過去の傾向よりもそういった流れを重視して予想を組み立てたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。
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