【ローズS】馬場が渋れば大波乱も 穴はタフな馬場が得意のアイコンテーラー
山崎エリカ
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昨年はかなりのスローペースだったが、馬場悪化でどう変わるか?
今年のローズSは例年の阪神芝1800mではなく、昨年同様に中京芝2000mで行われる。昨年は坂の上りスタートの中京芝2000m戦らしく、ゆったりとした入りで、高速馬場で5F通過60秒9のかなりのスローペース。ダッシュ力があまりないリアアメリアに序盤の遅さが利して2番手の内を追走し、直線序盤で先頭から押し切って優勝した。
このように中京芝2000mは、阪神芝1800mと比べるとスローペースが発生しやすい。阪神芝1800mは4角出口までほぼ平坦で、最初の3角までの距離が約665mとたっぷりあるので、前に行きたい馬が何頭もいた場合には競り合いが長引くことがある。
一方、中京芝2000mは急坂スタートで、前半で坂を上って後半で下るコース。最初の1角までの距離が約314mと短いので、序盤で隊列が形成されてスローペースになることが多い。急坂スタートなので、スタートが苦手な馬がより出遅れやすく、後方を選択せざるを得なくなるのも前が残りやすい理由だ。
しかし今週は台風第14号の影響で馬場悪化が予想される。台風の影響をもっとも受けるのは土曜日のようだが、日曜日にどこまで回復するかがポイントになりそうだ。馬場がタフになるとペースがそこまで速くなくても、スタミナが必要になるので、前が崩れることがある。速い上がりの決着に持ち込みたくない、忘れな草賞の2着馬エイシンヒテンが逃げるとなると、平均ペースくらいまでは上がる余地があると見ている。展開上は差し馬優勢。前から押し切るには豊富なスタミナが求められることになるだろう。
能力値1~5位馬の紹介
【能力値1位 アンドヴァラナウト】
デビューから上昇一途。これまでの5戦全て連対しているように、幅広いレースに対応でき、安定感がある。前走の出雲崎特別は超高速馬場を考慮しても、序盤から流れて前半5F58秒2のかなりのハイペース。この流れに乗って2列目の内でレースを進め、直線序盤で包まれて直後のダノンドリーマーに先に動かれる形となったが、ラスト1Fで馬群を捌いてぐんと反応。同馬に1馬身4分1差をつけて快勝した。前走は文句なく強かったが、ここに向けて余力がどれだけあるのかが懸念材料。また台風の影響で当日の中京が時計の掛かる馬場になった場合、今までタフな馬場の経験がないことも不安材料となる。
【能力値2位 タガノパッション】
スイートピーS1着、オークス4着の実績はここでは上。時計の掛かる馬場の経験もある。今回は休養明け、夏の間にどれだけ成長しているかで結果は大きく変わる。オークスは逃げ馬不在で、それまで逃げたことのないクールキャットが逃げ、平均ペースに収まったが、後半型の馬が先行したこともあって、差し、追い込み馬が上位を独占する結果となった。タガノパッションは出遅れて前には行かず、後方馬群の中でユーバーレーベンの後ろでレースを進めて4着。待機策が功を奏したのは確かだ。
しかし、3角手前でユーバーレーベンが外に出したタイミングで一緒に外に出していれば、3着はあった内容。外に出すのをやり過ごして、直線の中目を選択したために、進路確保がスムーズではなかったが、この馬の走りはできている。オークスではかなり後方からレースを進めているので、距離が短くなる今回はレースの流れに乗りづらくなることは懸念材料。しかし、それによって再び展開に恵まれた場合には、有力になる。
【能力値3位 アールドヴィーヴル】
デビュー2戦目のクイーンCは休養明けながら2着。その後も桜花賞、オークスともに5着と高い潜在能力を感じさせる馬。前々走の桜花賞はレコード決着で2着のサトノレイナス以外は、内目を立ち回った馬が上位入線したが、同馬はスタート後に促しても中団までの位置しか取れず、3~4角で外に誘導する形。4角ではロスを作りながら大外から追い出し、直線序盤で少し接触して立て直す不利も生じての上位2頭と3馬身半差。ロスがなければ、もっと着差は詰められていたと見ている。
前走のオークスも二の脚で置かれ気味だったが、外枠の馬が内に切り込んで来たところで、コントロールして中目に誘導。道中も中団やや後方で進め、3~4角でも動かず我慢。4角では外を選択してラスト1Fでは2列目まで追い上げたものの、最後はタガノパッションとの4着争いにアタマ差で敗れた。
アールドヴィーヴルは、不良馬場の新馬戦でも追い込み勝ちしているように、適性は幅広い。ただ、スタートもひと息で、ニの脚で置かれ気味になる点がネック。オークスで見せたしまいの甘さから、距離が短くなるのは良いにせよ、レースの流れに乗れずに、脚を余す危険性はある。
【能力値4位 タガノディアーナ】
チューリップ賞では小差4着に善戦した実績。近2走は古馬が弱く、ほぼ3歳馬相手のレースではあったが、そこで連対しているように充実している。ただ、チューリップ賞も近2走もスローペースの速い上がりの決着を差す形で好走。一方、今回でも逃げる可能性が高いエイシンヒテンのレースメイクで緩みのない流れとなった忘れな草賞では、中団でレースを進め、ラスト1Fでは2番手まで追い上げたが、そこから4頭に差されて6着に終わっている。
このことから前半で脚をタメて、決め手を生かしてこそのタイプと言える。本格化してからは、緩みないペースを一度しか経験していないが、現状では馬場がタフになった場合には、ややマイナスになる可能性が高いという評価になる。
【能力値5位 イリマ】
前々走の未勝利戦を未勝利クラスとしては優秀な指数で勝利。前走の都井岬特別はスタートでアオったが、押して4列目までリカバー。中団の前目中目の位置から、4角で馬場のいい外に出しながら勢いに乗せ、そこからグングン伸びて4馬身差の快勝。またもや1クラス上の2勝クラスにあたる指数で快勝した。勢いがあり、ここでも通用の能力を感じる。問題は重馬場ではここまで2回凡退していることだ。
穴馬はスタミナ豊富なアイコンテーラー
アイコンテーラーは、前々走の早苗賞が強かった。前々走時は1週前の日曜から雨が降らなかった日がほとんどなく、当日も雨の影響を受けて、かなり時計を要していた。そのうえバイシクルキックが大逃げを打って消耗戦に持ち込んだが、同馬は2列目外から直線でしっかり伸びて勝利。このレースで逃げたバイシクルキック、ひとつ内のグルーヴビートが殿とブービーに敗れていることから、豊富なスタミナを感じさせる。
前走のラジオNIKKEI賞はスタートであまりダッシュが付かず、自分の競馬に持ち込めなかったわりには、大きく崩れなかった。道悪で好走するとダメージが強く出るので、もっと負けていても不思議のない状況で善戦したのは、この馬の地力強化によるものだろう。今回は立て直されての一戦。馬場が渋り、自分の得意な形の競馬ならば、大駆けが期待できる。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)アンドヴァラナウトの前走指数「-16」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.6秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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