【セントウルS】本番でのレシステンシアの評価を分ける、最後200m12.3の解釈
勝木淳
ⒸSPAIA
大人になったレシステンシア
サマースプリントシリーズ創設以来、セントウルSはその最終戦、またスプリンターズSの前哨戦というふたつの顔を持つようになった。札幌記念と同じくGⅡ格のこのレースはサマーシリーズ色が薄れがち。今年も休み明けのレシステンシアが勝ち、前哨戦としての顔が強調される形になったが、逆転でサマースプリントシリーズ王者を目指すピクシーナイトが怒涛の差し脚をみせ、王者への執念を伝えた。夏と秋が交錯する競馬だった。
勝利したレシステンシアはこれで重賞4勝目。逃げずに勝利したのは2歳ファンタジーS以来。ハナに行かないとモロいところがある快速牝馬が、いよいよ1200m戦でコントロールが効いた走りを披露した。なにかきっかけをつかんだか。
レシステンシアはスピードを持て余し、休み明けでも全開で走ってしまう一戦必勝型だけに、これまでは前哨戦を勝利、本番で着順を落とすケースが目立った。今回も坂路で好時計連発も、抑えが効いていた。若さが抜け、完成されつつある。
最後の200m12.3をどう評価するか
NHKマイルC以来の騎乗だったルメール騎手は、好発から行きたい馬を待ち、内からシャンデリアムーンが主張するとあっさり引いた。抑え込むわけではなく、コントロールする、これがルメール騎手の真骨頂。外からジャスティンがきて、番手のインに入ってもレシステンシアはリラックスして走れた。ハナに行くのはスピードの違いもあるが、ダイワメジャー産駒特有の怖がりな面を封じるためでもあっただろう。これまでは控えるときは外目追走が条件だったので、インで収まったのも見逃せない。
前半600m32.9。シャンデリアムーンが引っ張ってくれて、流れはレシステンシアにとっても申し分なかった。最後も坂をあがるまでは先行集団のなかで抜群の手応え。格の違いを感じざるを得なかった。
ところが、残り200mから追い出すも脚色に変化がない。これもダイワメジャーらしい。ルメール騎手がちょっと手応えにだまされたか。最後は左右ステッキを持ちかえて、びっしり追った。または休み明けで最後まで反応しきれなかったか。最後の200mは12.3、さすがに苦しかった。レシステンシアの特徴が出た最後の200mだった。
8分のデキでも目一杯走れるのは長所でもあるが、思わぬダメージを残す短所でもある。中2週で本番を迎えるため8分ぐらいの作りだっただろうが、それ以上に走ってしまったともいえる。この200m12.3をどうとるかによって本番での評価は分かれるだろう。
来春がたのしみなピクシーナイト
クビ差2着は2番人気ピクシーナイト。このクビ差は痛かった。外枠のため、序盤に馬の後ろにつけるまで行きたがってしまった。難しい状況でも福永祐一騎手がピクシーナイトを上手くエスコートし、流れに乗せたので、最後はひと脚使ってくれた。
父モーリスの中京芝での勝率は13.3%。これは小倉芝13.6%に次ぐ第2位。ピクシーナイトもシンザン記念勝ちを含め、中京は【2-1-0-0】。極端なギアチェンジを必要としないこのコースが合う。遅咲きのモーリス産駒だけに、古馬になればもっと強くなるだろう。母の父は高松宮記念で悲願のGⅠ制覇を達成したキングヘイロー。少し気が早いが、来年の高松宮記念が楽しみだ。
3着は同じく中京巧者のクリノガウディー。降着になった昨年の高松宮記念のようにこれまでは時計がかかる中京がベストだったが、今年は鞍馬S1.07.1、安土城S1.19.2と高速決着でも力を出せるようになった。今回も決着時計1.07.2で0.2差3着。父はピクシーナイトの父モーリスの父スクリーンヒーロー。中京に強いのはこの系統の特徴だろう。スクリーンヒーロー産駒らしく5歳にして充実期を迎えた。
4着ジャンダルムは出遅れが痛かった。後方待機、途中から動きながら4着、長くいい脚は使えた。ただし、前後半600m32.9-34.3という流れも向いた。ベストは春の中山で快勝した春雷Sのような適度に後半の時計を要する流れ。あの時と同じく発馬を決めて、ハイペースを前から追いかけたい。ここ2戦、スタートを決められていないのは気になる。
5着カレンモエはスムーズな立ち回りだったが、外枠でこれまでよりはやや後ろだったため、4コーナーの攻防でクリノガウディーに阻まれ、かなり外を回り、伸びきれなかった。まだGⅡではロスがあると厳しいが、GⅢを勝つ力は十分ある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)。
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