【札幌2歳S】昨年はソダシが勝利、クラシックの登龍門に今年も素質馬が集結! 札幌2歳Sの歴史を振り返る

緒方きしん

札幌2歳S過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA

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出世レースに今年も素質馬が集合

8月も残すところあと一日になり、秋競馬が近づいてきた。スプリンターズSや秋華賞・菊花賞に向けた有力馬情報が続々と聞こえてくるようになった。放牧していた馬、夏競馬に挑んでいた馬、それぞれの夏の過ごし方が問われる。

夏競馬の終わりが近づいてきた今週は、北の出世レース・札幌2歳S。クラシックの登龍門としても知られる札幌の2歳重賞に、今年も期待馬が集まった。名牝ディアドラの全弟リューベック、叔父にペルーサがいるアスクワイルドモア、コスモス賞を制したトーセンヴァンノなどが登場する。

ハープスター、イスラボニータ、古くはライスシャワーらを輩出した新潟2歳Sと双璧をなす夏の2歳重賞。今年の新潟2歳Sでは3番人気のセリフォスが勝利し、1番人気アライバル、2番人気オタルエバーと続いた。対する札幌2歳Sはどうなるだろうか。今回は、札幌2歳Sの歴史を振り返る。

1番人気はやや苦戦

札幌2歳S過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


現在は1番人気が3連敗中の札幌2歳S。ここ10年でも1番人気は2勝と、やや苦戦傾向にある。ただ、直近3年の1番人気馬は3着、6着、3着と2頭は馬券圏内を確保している。

2016年の覇者は、今年の春まで障害でも活躍していたトラスト。当時は地方所属のまま札幌2歳Sに挑戦する形が成功し快勝した。2着に10番人気ブラックオニキスが食い込み、馬連は181.2倍、三連単5017.1倍という波乱の決着に。同じく波乱となったのが5番人気→11番人気→7番人気という順になった2014年。

2014年も三連単は4527.4倍と高配当になったが、その後弥生賞2着・皐月賞4着のブライトエンブレム、プリンシパルSで3着のマイネルシュバリエ、桜花賞馬レッツゴードンキでの決着といえば、むしろ妥当な着順と言えるかもしれない。4着は8番人気ミュゼエイリアンだが、翌春には毎日杯を制している。波乱に備えるというよりむしろ、秘めたる実力を見通すことに挑むのが良さそうだ。

クラシック戦線へ続く道

ソダシが出走した昨年は、特に豪華メンバーが揃っていた。1着のソダシは無敗で桜花賞を制覇、オークスで敗北するものの札幌記念で優勝。2着のユーバーレーベンはオークスを制し、父のゴールドシップにクラシックタイトルをもたらした。3着バスラットレオンもNZTを勝利し、着外の馬たちからもフローラSの2着馬スライリーやサウジダービーを制したピンクカメハメハといった活躍馬が登場した。

2011年もハイレベルなメンバーで、1着グランデッツァ・2着ゴールドシップのワンツー。翌春にグランデッツァはスプリングSを制覇し、皐月賞1番人気5着など活躍。14年にはマイルCSでも3着に食い込み、6歳でも七夕賞を制するなど活躍した。ゴールドシップは翌年に皐月賞・菊花賞の二冠を制覇、さらに有馬記念も制して最優秀3歳牡馬に選出。古馬になっても宝塚記念を連覇するなど競馬界を代表する活躍を続けた。

他にも、過去にはアドマイヤムーンやロジユニヴァース、サクラプレジデントが勝利してきた札幌2歳S。2着、3着馬にもアヴェンチュラやヤマニンシュクル、クロコスミア、イクスキューズといった活躍馬が名を連ねる。

ロマン溢れる勝利が見られるか

過去にここを制した馬たちの血統を見ていくと、ステイゴールド系の活躍が目立つ。昨年2着のユーバーレーベン、2019年1着のブラックホール・2着のサトノゴールドはいずれもゴールドシップ産駒、2017年の勝ち馬ロックディスタウンはオルフェーヴル産駒である。ステイゴールド系の父を持つ馬の出走はなさそうだが、上記の馬たちに流れるメジロマックイーンの血が好走を呼んだのだとすれば、出走を予定するユキノオウジサマは母母父メジロマックイーンである。

また、札幌2歳Sを語る上で欠かしたくないのがニシノデイジー。91年最優秀2歳牝馬、92年最優秀スプリンター・最優秀3歳牝馬(年齢は現在の表記に直したもの)に選出された名牝ニシノフラワー、1998年クラシックでキングヘイロー・スペシャルウィークらを相手にクラシック二冠を獲得したセイウンスカイ。いずれも西山牧場の生産馬だが、その2頭の間にうまれた牝馬・ニシノミライを祖母に持つニシノデイジーが2018年の札幌2歳Sで重賞馬となり、話題を呼んだ。

トーセンヴァンノは父のヴァンキッシュランも母のトーセンソニアも島川隆哉氏の所有馬で、生産はエスティファームと、ロマンあふれる血統構成と言える。鞍上の山田敬士騎手といえば、デビューした2018年に競走距離誤認による騎乗停止処分を受けたことで知る競馬ファンも多いが、それ以降は着実に勝ち星・実力を伸ばしてきた若手でもある。そういう意味でも応援したくなるコンビ。ぜひご注目いただきたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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