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【新潟2歳S】最後まで踏ん張ったセリフォス 見せたダイワメジャー産駒の一流馬らしさ

2021/08/30 11:48
勝木淳
2021年新潟2歳Sのレース結果,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

早めに仕掛けたオタルエバー

夏の2歳重賞のなかでも新潟2歳Sは近年、小倉や札幌と比較すると、その後出世する馬が少ない。かつてはハープスターやイスラボニータといったGⅠ級が出現していたが、その一方、ここで激走するとその後、不振に陥る場合も多かった。上記の夏の2歳重賞とは異なり、舞台の新潟芝外回り1600mは日本一長い直線での追い比べ、極限の瞬発力勝負が定番。スピードに慣れていない若駒にとっては厳しい。まず、この点を踏まえてレースを振り返ろう。

デビュー戦で世代屈指の評判馬コリエンテスを相手に新潟芝1600mを逃げきったオタルエバーが今回も先手を奪う。その前走では逃げて最後の600mを33.5でまとめた。当然ながらその再現を狙った。絡んでくる馬はおらず、前半800mは48.5。自身の新馬戦とほぼ同じリズムを刻んだ。

長い直線を意識して、後続が早めに仕掛けてこないことを見越したオタルエバーは、直線に入って早々にスパート開始。残り600から400mで最速ラップ10.8を記録した。新馬戦では残り400から200mが最速だったので、オタルエバーは明らかに仕掛けが早かった。重賞で後ろを意識したゆえだろう。残り400mは11.0-11.8。オタルエバーは外へ内へと斜めに走ってしまい、3着。惜しかった。ただそれだけ馬にとっては辛い競馬だったことが、今後にどう影響するか。賞金を加算できなかったので、この先のローテ次第では慎重に考えたいところだ。

ズブさがあったセリフォス

この残り600mから速くなる流れに見事に対応したのが勝ったセリフォス。1枠でスタートがあまりよくなく、中団のイン、馬場の悪いところを終始走った。川田騎手はレース前から馬が左へ左へ行こうとしていたことを感じとり、あえてラチ沿いを走らせた。馬としっかりと会話できる。トップジョッキーはやはり違う。

直線に入ってすぐ鞍上の手が動いており、ペースアップに対応できていないのではと思わせながらも、しっかり伸びた。父はダイワメジャー、ズブさを感じさせる手応えからも本質的にはこういった軽い馬場向きではないかもしれない。だが、それでも伸びて最後まで踏ん張るのはダイワメジャー産駒の一流馬の特徴。最後の600mは最速の32.8。勝ち時計は1.33.8。このレースが34秒を切ったのは15年ロードクエスト以来のこと。ここ数年と比べれば、それなりのレベルだったのではないか。

最後にアライバルが伸びた理由

2着は1番人気アライバル。この馬が勝った新馬戦は2、3、5着馬が次走で勝ちあがったハイレベルな一戦。こういった点とスポット参戦のルメール騎手の影響で1番人気に支持された。だが、父はハービンジャー。母系にディープインパクトが入っているとはいえ、本質的に軽い馬場の競馬は不向きだった。オタルエバーが一気にラップをあげた残り600mから明らかに置かれ気味。ルメール騎手も追走させるのにやっとだった。

ところが、このまま伸びないかと思わせながら、最後の200mで猛然と追いあげ、オタルエバーを捕らえた。アライバルが鋭く伸びた地点は11.8。やはり軽い馬場は向いていない。このなかではもっともスタミナ型で、持久力戦向き。賞金加算には成功したので今後は慎重にレースを選ぶだろうが、持久力を問われる舞台で狙っていきたい。

ひとつ年上のキングカメハメハ産駒ククナはこの春牝馬クラシック路線を走ったが、こちらも瞬発力勝負はやや苦手。父ハービンジャーになってさらに奥手になった可能性もある。これだけ不得手な条件で2着だから、素質は示した。

上位馬も含め、軽い馬場の競馬は任せておけと言えるほどの馬はおらず、あまり得意ではない条件ながら能力と気力で克服した印象がある。となると、やはり今年もこのレースの反動には気を配りたい。次走以降、新潟2歳S組の取捨選択は慎重にしたい。


2021年新潟2歳Sのレース結果,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1990-1994 90年代前半戦』(星海社新書)



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