【小倉記念】今年もやっぱり格上挑戦モズナガレボシ! 明確になった各馬の個性とは

勝木淳

2021年小倉記念Sのレース結果,ⒸSPAIA

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中盤からペースアップする厳しい攻防

競馬場の近くを流れる紫川の水位も上昇、西日本を襲う長雨の影響を存分に受けた開催は、中止も危惧されるほどだった。土曜は豪雨のなかで競馬が行われ、芝もダートも不良馬場。田んぼのようなという表現を超える異次元の馬場だった。天候が回復した日曜日は1レースの時点で重馬場、3週間の休止期間もあり、それなりに時計が出た。メインレースはやや重。小倉の芝はよくがんばった。

連覇を目指すアールスターが取消になり、9頭と少頭数になった小倉記念は、微妙な馬場状態と少頭数だからこその面白い競馬になった。

先手を奪ったのは格上挑戦のグランスピード。七夕賞で控えたショウナンバルディが鳴尾記念の再現を狙って番手につけ、内から1番人気ファルコニア、外からトップハンデのヴェロックスが3番手を競い、ラチ沿いを最低人気テーオーエナジー、中団に道悪巧者のダブルシャープ、その外に小倉滞在の関東馬ヒュミドール、後方に格上挑戦のモズナガレボシ、スーパーフェザーが控える。逃げたグランスピードも馬場状態が芳しくないラチ沿いを避け、テーオーエナジー以外は外目を意識して進む。

前半1000m通過1分1秒4の緩い流れ。少頭数なので各馬、ソーシャルディスタンスをとるかのようにゆったりとした隊列で進む。この時点でどの馬にもスペースは十分に用意されていた。向正面半ばからショウナンバルディ、ファルコニア、ヴェロックスが徐々に間合いを詰めに行き、グランスピードにプレッシャーをかける。これに応じるようにペースは後半1000m地点から一気に上昇。向正面から3コーナーまで11.3-11.4-11.5と厳しくなる。

武豊の奇襲、まさかのイン突き

その後、残り400~200mは12.2とラップを落とす。グランスピードの脚があがったこともあるが、先行勢がより悪化した4コーナーの内側を避け、外へ外へと流れるように走ったためでもあった。これによりぽっかり空いたインに飛び込んだのが後方にいたスーパーフェザー。コーナーリングを利用して一気に順位をあげる。レジェンド武豊騎手の奇襲が決まる。インをすくって早めに先頭に立ったスーパーフェザーを直線では外に導き、馬場のいいところを走らせる、神騎乗といっていい。

スーパーフェザーに外から応戦するファルコニア、ヴェロックスは早めにラップをあげたために手応えが怪しい。道中は小回りの2000mに対応できず、やや気合をつけられ、急かされながら追走していたヒュミドールが持ち前のスタミナを活かして末脚を伸ばす。奇襲が決まったスーパーフェザーも直線半ばでさすがに脚色が衰える。これら攻防を外から一蹴したのがモズナガレボシ。馬場状態を読み、早めにペースアップする先行勢を冷静にやり過ごした松山弘平騎手の手綱が冴えた。道悪、スローペースからロングスパート、イン突き、二転三転する攻防を最後にモズナガレボシが飲み込んだ。特殊なレース展開だっただけにハマった印象も強い。

今年も格上挑戦が決まる

モズナガレボシの父グランプリボスにとってこれが産駒重賞初V。現役時代はマイル以下のGⅠ2勝、GⅡ3勝。なんといっても不良馬場の安田記念でジャスタウェイと競り合った競馬が印象的だった。

父サクラバクシンオーとは異なり、時計面に限界があるタイプで、産駒もスピード不足に苦しんでおり、8月8日終了時点でJRA芝6勝、ダート25勝。モズナガレボシの末脚はレース上がり最速も35.0。グランプリボス産駒は芝では上がりを要する特殊な条件下でしか好走できない。だが、滅多にないその特殊な条件下で重賞タイトルを獲得したわけだから、すばらしい。競走馬にとってその生涯で絶好機などそうそう訪れない。

2着ヒュミドールはエプソムC6着から巻き返した。広いコース向きながら速い上がりが使えないという弱点に苦しんだが、今回は小回りをこなし、展開によりスタミナを発揮できた。こちらも好走ゾーンは広くない。この好走で次走、飛びつくのは危険だろう。そうであっても、早めに小倉に入厩し、滞在でレースを迎えるなど陣営の工夫が実った2着。力はある。

人気を背負って負けたファルコニアは1800mが限界の印象、ヴェロックスはやはり小回りが不向きと考えたい。ショウナンバルディは早々に脱落したようにここ2戦のしぶとさがなく、状態が下降している可能性がある。

1着モズナガレボシと3着スーパーフェザーは前走3勝クラスを負けての格上挑戦。この10年間で小倉記念は、前走3勝クラスを負けた馬が4勝で【4-0-1-7】、勝率は33.3%になった。夏は格より勢いというと、前走で下位クラスを勝ちあがった馬に目が行くものだが、小倉記念に限っては、前走で3勝クラスを勝った馬が【0-1-1-11】と格上げ初戦は不振、反対に敗退馬の格上挑戦が決まりやすい。これをはたして来年まで覚えておけるだろうか。


2021年小倉記念のレース展開図,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


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