【レパードS】冴えるいぶし銀の手綱さばき メイショウムラクモ以外に次走評価できる馬は?
勝木淳
ⒸSPAIA
ベテランらしい省エネ競馬
レパードSが創設されて13年。同じJRA3歳限定ダート重賞のユニコーンS出走馬がいないのは史上初。大井のジャパンダートダービー出走馬は6着だったロードシュトローム1頭。オープン馬はゼロ、実績最上位は前走で2勝クラスを勝ったばかりの3勝馬4頭。まずはメンバーレベルが高くなかった点を記憶にとどめておきたい。
勝ったのは実績最上位で1番人気のメイショウムラクモ。序盤の先行争いは外枠を利してじっくり進め、ほかの先行勢が急かすところを無理なく外の3番手につけた。ペースが一旦落ち着いた1、2コーナーで行きたがる素振りを見せ、逃げたレプンカムイに並びかけそうになりながら、向正面でしっかり我慢。前に馬を置かずに折り合えた。今回でコンビを組んで5戦目の柴田善臣騎手、完全に手の内に入れていた。
レプンカムイが作るペースは前半1000m通過1分1秒4。良馬場の19年は1分0秒1で後半の持久力勝負だったが、今年はそれより遅い流れに関わらず、中盤以降で脱落する馬が多く、4コーナーで勝負圏内にいた馬が少なかった。好位にいたロードシュトロームも4コーナーで一杯、上位にきたレプンカムイ、メイショウムラクモ、その背後にいたスウィープザボードしかいなかった。これもやや低調なメンバーだったからだろう。
メイショウムラクモは、逃げたレプンカムイを射程圏に入れつつ、それを交わすだけという省エネ競馬を試みた。最小限の手で勝つ競馬はいかにもベテラン柴田善臣騎手らしい。かつての関東は岡部幸雄元騎手の影響を強く受け、派手な競馬より堅実で馬に負担をかけない競馬を主流にしていた。
柴田善臣騎手は古き時代の関東所属騎手らしい競馬で岡部幸雄が持つJRA重賞最年長勝利記録を更新。最後の200m付近でステッキを落とすアクシデントはあったものの、ハミをしっかり掛けなおしてそれをカバー、馬を遊ばせなかった。今年6月、農林水産大臣表彰を受賞した「相談役」、エージェントをつけたことで騎乗馬の質が向上、メイショウムラクモもその成果のひとつと言っていい。
メイショウムラクモ以外の評価は
2着は10番人気スウィープザボード。メンバー中2頭しかいなかった前走ダート1800mを勝ち馬が穴をあけた。メイショウムラクモが勝ったものの、このレースは基本的に前走1700m組より1800m組の活躍が目立つ。距離をこなせるスタミナもポイントになる。メイショウムラクモを見ながらタイミングを合わせてコーナーで上昇できた点など、器用なところは見せた。3勝クラスでそこまで勝負になるか見極めは難しいが、過剰人気なら嫌うのも手か。
逃げたレプンカムイが3着。前半の流れを考えれば、後半800m12.6-12.8-11.9-12.6は特別速かったわけではなく、展開利は確かにあった。メイショウムラクモに交わされてから、外から来たスウィープザボードに目標を切りかえて併せに行くなど、鮫島克駿騎手の手腕によるところが大きい。
ダートは芝と比べると、良馬場であれば馬場差が少なく、時計を比較しやすい。今年の勝ち時計1分51秒3はハイペースだった19年と同じ。序盤の流れからすると、3馬身差をつけたメイショウムラクモの記録だけはそれなりに評価してよさそうだ。19年勝ち馬ハヤヤッコもメイショウムラクモも展開をきっちり味方につけた勝利なので、イメージとしては重なるところがある。ハヤヤッコはオープン特別ならという評価なので、メイショウムラクモもまずは同じぐらいのイメージでよさそうだ。
ただし、3馬身つけられた2着以下は人気を背負って好走できなかった馬も含め、微妙なところ。前半の流れのわりに早めに脱落する馬が多く、真夏で体調面が整わなかった馬も多かった。次走以降は慎重に評価したい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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