芝重賞とダート重賞、馬券検討の上での違いとは? ポイントは「前走1着馬」と「ベテラン」の取り扱い

東大ホースメンクラブ

ダート重賞で狙える条件,ⒸSPAIA

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今週は「年に一度の週末」

今週日曜、新潟競馬場では3歳ダート重賞のレパードS、函館競馬場では北海道ダート路線を盛り上げるエルムSが行われる。JRAで同週に複数のダート重賞が組まれるケースはこの他になく、夏競馬特有のレアな番組設定である。

そもそもJRAのダート重賞は地方交流のダートグレード競走との兼ね合いもあり、わずか15レースの施行にとどまる。100を超える芝重賞との差は歴然であり、それだけに馬券検討の際に頭を悩ませる場面も多いのではないか。

そこで今週のコラムは「芝重賞・ダート重賞の違い」をテーマに多角的に分析していく。芝重賞では敬遠されがちだが、ダートでは金脈として機能する、そんな熱いデータがないかを探っていこう(使用するデータは2016年1月5日~2021年8月1日)。

ダート重賞で「前走勝ち馬」は買いにくい

2016年以降のダート重賞・前走着順別成績,ⒸSPAIA


<2016年以降のダート重賞・前走着順別成績>
1着馬【29-28-21-254】勝率8.7%/連対率17.2%/複勝率23.5%
1着馬×3歳戦【1-4-7-64】勝率1.3%/連対率6.6%/複勝率15.8%
2・3着馬【27-23-28-173】勝率10.8%/連対率19.9%/複勝率31.1%

まず一つ目の違いとして挙げられるのは前走勝ち馬が買いにくいという点。芝重賞では【241-228-214-1907】複勝率26.4%、回収率は単63%、複73%。ダートでは勝率・連対・複勝率が全て芝レースに劣っていて、回収率も単49%、複62%と各10%ほど落ちる。連続好走で駆け上がるのが困難という「壁」を感じさせる数字だ。

3歳限定戦に限るとさらに顕著で、2016年以降のべ76頭が出走し、前走から連勝したのは昨年のユニコーンS・カフェファラオのみで勝率1.3%。芝の同様のデータでは勝率8.8%だから、大きく水をあけられている。5番人気以内に支持された馬ですら【1-3-4-17】複勝率32.0%と3頭に1頭以下の好走率にとどまる。今週のレパードSは抽選対象馬を含め多数の「前走1着馬」が出走するが、過信は禁物だ。

期待できるのは前走2・3着馬。複勝率を3割の大台に乗せ、単勝回収率97%・複勝回収率87%は水準以上だ。前走で人気よりも着順がよかった馬に限定すると【8-8-6-36】複勝率37.9%、単勝回収率131%・複勝回収率102%とさらに優秀なデータとなる。

このデータから今週の重賞でおすすめしたいのがエルムSのソリストサンダー。今年冬の門司Sでは早め先頭から力でねじ伏せる強い競馬を披露し、一皮向けた感のある同馬。前走のかしわ記念では6番人気ながら船橋の雄・カジノフォンテンに最後まで食らいついての2着と充実一途だ。

ベテランが輝ける職場

2016年以降のダート重賞・6歳以上馬の成績,ⒸSPAIA


<2016年以降のダート重賞・6歳以上馬の成績>
6歳以上全て【23-33-38-494】勝率3.9%/連対率9.5%/複勝率16.0%
6歳馬【19-14-24-226】勝率6.7%/連対率11.7%/複勝率20.1%

ダート重賞は芝重賞と比較してベテランの好走例に富んでいることも特徴の一つ。6歳以上馬の複勝率16.0%は芝重賞での同11.9%を上回る。今年のフェブラリーSは4歳馬カフェファラオが勝ったが、2・3着には8歳馬のエアスピネル・ワンダーリーデルが激走。勝ち馬が生まれる前から現役だった両馬が大舞台で意地を見せ、高配当を演出した。

スピードの衰えが成績低下に直結する芝重賞と違い、小回りコースでのキャリアを生かした上手なコーナリングや、若馬にも引けを取らないパワフルな走りは年齢を重ねてもなお武器となる。実績馬でも人気薄に甘んじるケースが少なくないため、穴で狙うならベテランだ。

特に活躍が目立つのは6歳馬。レピアーウィット・メモリーコウが1・3着に入った今年のマーチSなどハイレベルな戦いで真価を発揮している。前走より人気を落として出走の場合【10-6-15-55】複勝率36.0%、単勝回収率181%・複勝回収率101%と結果を残している。馬券的においしいタイミングできっちり3着以内を確保してくれるのはありがたいの一言。エルムSに登録の6歳馬でも人気が下降している馬を見つけたらしこたま買いたい。

なお、ベテラン勢でも9歳以上馬は【0-1-0-30】(唯一の馬券圏内は2017年カペラS2着スノードラゴン)とさすがに厳しい。エルムSのウェスタールンドは実績から人気になるだろうが、ここはむしろ消した方が良さそうだ。

前走地方だった馬の扱いは?

2016年以降のダート重賞・前走地方組の成績,ⒸSPAIA


<2016年以降のダート重賞・前走地方組の成績>
前走地方全て【26-23-17-202】勝率9.7%/連対率18.3%/複勝率24.6%
前走先行【15-12-10-79】勝率12.9%/連対率23.3%/複勝率31.9%
3~6番人気【14-6-6-58】勝率16.7%/連対率23.8%/複勝率31.0%

ダート重賞を考える上で外せないのが前走地方組の扱いだ。芝では【1-1-1-86】複勝率3.4%とほとんど好走例がなく、馬券検討の俎上に載ること自体あまりないが、ダートではそんなことも言っていられない。なにしろ出走数がはるかに多い上、4頭に1頭は馬券に絡んでくるのだ。

ベタ買いでも単勝回収率105%という優良物件だが、特に買いたいのは前走先行組。複勝率3割超えの他、単勝回収率も163%とジャンプアップする。後方からねじ伏せる競馬が難しいダートでポジション確保ができるのは大きな強みとなる。このうち3番人気以内では【9-11-4-15】複勝率61.5%と1番人気レベルの安定感を誇り、該当馬は迷わず軸に選定すべきだ。

馬券で狙えるもう一つの条件は、3~6番人気というそこそこの支持を受けている場合。こちらも複勝率は3割を上回り、単勝回収率167%と妙味も十分。前走が地方だったというだけでなんとなく過小評価されているケースが多いようで、これだけの回収率ならば思い切って買った方がいい。

中でも前走と同騎手が乗る組が良く、該当馬は【7-4-3-23】複勝率37.8%、単勝回収率200%を叩き出している。京都開催だった2018年のJBCでは、JBCスプリント・グレイスフルリープ(ルメール)、JBCクラシック・ケイティブレイブ(福永祐一)、JBCレディスクラシック・アンジュデジール(横山典弘)と完全制覇。頭で狙いたい条件だ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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