募集価格900万円から2億円以上稼いだ馬も! 「一口馬主クラブ」馬クロノジェネシスは驚異の回収率8066%
高橋楓
ⒸSPAIA
「一口馬主クラブ」の世界
「今週も縦縞なのか」私が競馬にのめり込んだ1990年代はサンデーサイレンス産駒が躍進したのと同時に、社台ファームの時代だったと言っても過言ではないだろう。毎週、同じ様な色違いの勝負服がメインレースを制していくのだ。
特に1996年、秋のGⅠシーズンは強烈だった。まずは秋の天皇賞をバブルガムフェローが現在で言う3歳で制覇。これは59年ぶりの快挙だった。翌週にはダンスインザダークが鬼脚で菊花賞を快勝し、エリザベス女王杯は全姉のダンスパートナーが制し、史上初となる全きょうだいの2週連続GⅠ制覇を達成。そしてジェニュインがマイルチャンピオンシップを制し、4週連続で縦縞の勝負服がテレビ画面の向こうで無双の強さを発揮していた。
若かりし頃の私にとって「社台グループ」の強さを感じたのと同時に「一口馬主クラブ」という存在を知ったきっかけとなった。
回収率ランキング!トップは凱旋門賞にも挑戦する「クロノジェネシス」
今回はディープインパクト産駒が登場した2010年以降にデビューした馬について、一口馬主クラブで募集された馬の「回収率」を、「獲得賞金÷募集総額」でランキング化する。
1位 クロノジェネシス 回収率8066%
2位 アーモンドアイ 回収率6384%
3位 ジェンティルドンナ 回収率5077%
4位 リスグラシュー 回収率4057%
5位 インカンテーション 回収率3622%
第1位はGⅠを4勝し今年の凱旋門賞へ挑戦予定のクロノジェネシス。サンデーレーシングより1400万円(一口35万円/40口)で募集された本馬。ここまでの成績は[8-3-3-1]で掲示板を外した事が無い安定ぶり。獲得賞金は11億2926万円となり、回収率は驚異の8066%となる。
第2位はシルクレーシングから募集されたアーモンドアイ。数多くのレースが思い出されるが、2018年のジャパンカップでマークした「2分20秒6」というタイムは目を疑う程の衝撃だった。そんなアーモンドアイは3000万円(一口6万円/500口)で募集され、稼ぎ出した賞金は19億1525万円で回収率は6384%だった。
続いて第3位はサンデーレーシングの募集馬で、史上4頭目の三冠牝馬ジェンティルドンナ。募集額3400万円(一口85万円/40口)で獲得賞金は17億2602万円、回収率は5077%。諸経費を引いた後の金額はこれよりも下がるとはいえ、馬主の取り分を80%として40口で分配された一人当たりの配当金を単純計算すると約3452万円となっている。
第4位はキャロットファームのリスグラシュー。クラシック路線ではあと一歩のレースが続いたが古馬になり覚醒。特にラストシーズンの牝馬史上初の春秋グランプリ制覇は圧巻だった。そんなリスグラシューは3000万円(一口7.5万円/400口)で募集され獲得賞金12億1722万円、回収率は4057%だった。
そして第5位はターフスポートのインカンテーション。ターファイトクラブと言った方がピンとくる方も多いかもしれない。回収率は3622%。これには調べた本人もいささか驚いたのが本音であった。しかし、よく考えてみれば「なるほど」と頷けた。募集額が1200万円(一口6万円/200口)と一口馬主の世界では安価な値段設定であった事と、8歳の年末までダートの重賞戦線で走り続け[11-4-5-16]、GⅠ制覇まであと少しという所まで迫り重賞を6勝。間違いなく時代を彩った1頭だった。
格安でも関係ない!1000万円以下の募集額で大活躍したクラブ馬ランキング!
値段が高いからと言って必ず走ると限らないのが競走馬の怖いところ。今回は1000万円以下の募集額ながら、1000%以上の回収率をあげた孝行馬も取り上げてみたい。以下、回収率・馬名(募集価格/獲得賞金)で紹介していく。
・2569% ウインプリメーラ(900万/2億3124万)
・2183% ブラゾンドゥリス(760万/1億6592万)
・2050% アンデスクイーン(1000万/2億502万)
・1730% ビスカリア(800万/1億3841万)
・1325% ムーンエクスプレス(800万/1億603万)
・1306% ドリームドルチェ(900万/1億1750円)
・1219% ロードアクシス(648万/7898万)
・1215% デスティニーソング(680万/8262万)
・1203% シャトーブランシュ(1000万/1億2033万)
・1090% プレミアムブルー(600万/6542万)
・1080% クイーンオリーブ(700万/7558万)
・1076% ローレルブレット(1000万/1億759万)
・1028% アリンナ(880万/9046万)
以上の13頭。デビューできなかった馬も含めて1000万円以下で募集されたクラブ馬は期間内で合計932頭。率に直すと「1.4%」で、言い方を変えると「71.7頭に1頭」。この数字を高いととらえるか、低いととらえるかは人それぞれだろう。しかし、こういった格安馬が数千万、数億を稼ぎ出すのも競馬の醍醐味と言えるのかもしれない。そして、それが自身の出資馬だとすれば喜びもひとしおだろう。
今からでも手軽に始められる一口馬主!
ここまで夢を語ってきたが一口馬主で儲けるのは至難の業だ。数万円の募集価格を出資し、その後毎月の飼葉代金を含む預託費用、クラブへの月会費と言ったランニングコストを払っていく。年に1回保険代金も払う事になる。そして、競走馬は生き物だ。何らかのアクシデントでデビューできず引退していく馬もいる。それでも一口馬主クラブの人気は年々過熱している。それはなぜか。私は「ロマン」だと思っている。
自身が考え抜いて出資した子が競馬場を走っているのだ。GⅠでも走ろうものなら夢見心地である。子供の頃に競馬ゲームにハマった人であれば、よりこの感覚が分かるのではないだろうか。
近年では多口数のクラブが増えてきて、気軽に数千円から一口馬主を始める事が出来るようになってきた。オークス馬ラヴズオンリーユーを見出したのはDMMドリームクラブ。七夕賞、福島記念制覇で重賞戦線の常連クレッシェンドラヴは広尾レースの募集馬。
鳴尾記念制覇の勢いそのままに宝塚記念でアッと言わせたユニコーンライオンはライオンレースホースの所属馬。回収率ランキングでも登場したインカンテーションや、皐月賞に牝馬で挑戦し1番人気となったファンディーナはターフスポート。
先日約6年7か月ぶりに勝ち星をあげ話題になったブルーガーディアンはYGGホースクラブの所属馬である。このあたりのクラブだと中には1000口~3000口で募集されている馬もいて、儲けだけではなく新たな競馬の楽しみ方を見つけるきっかけになるかもしれない。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。また、自身も若かりし頃に憧れた社台レースホースをはじめ多くの一口クラブに入会し、一口馬主ライフを楽しんでいる。
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