【アイビスSD】韋駄天S好走馬に決め打ちもアリ ライオンボスには苦しいデータ多数

門田光生

アイビスSDの前走着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA

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唯一の直線競馬

2021年7月25日に行われる第21回アイビスサマーダッシュ(アイビスSD)。日本で唯一の直線競馬が堪能できる新潟競馬場の名物レースである。

直線競馬といえば、とにかく外枠。実績や調子は関係なく、外枠に入ったというだけで馬券が売れるケースも多々ある。外枠の馬は馬場のいい所を通れる利点があり、また実際にひと伸びが利く。というわけで、アイビスSDのデータ分析に入る前に、直線競馬における枠順の有利不利をデータで比較してみた(2011~2020年)。

新潟1000mの枠順成績(2011~2020),ⒸSPAIA
アイビスSDの枠順成績(2011~2020),ⒸSPAIA


結果はというと、1~4枠の勝率が5%以下、5~8枠の勝率が5%以上。内と外できれいに分かれた。中でも目立つのが、8枠の勝率10%超え。1枠と比べて、約4倍の差がついている。その昔、スタートしてすぐコーナーがくる条件、例えば旧阪神1600mや、東京2000mなどが外枠不利といわれていたが、ここまで顕著な差は出ていなかったと思われる。

では、肝心のアイビスSDはどうなっているのか。やはりこのレースも8枠が勝率、連対率ともにトップ。5、6、7枠の連対率も10%を超えていて外枠有利の傾向は変わらない。違う点といえば2枠の成績。【2-2-1-12】の4連対は、6連対の8枠に続いて2位。1枠、3枠が【0-0-0-17】と壊滅的な数字だけに、余計に2枠の頑張りが目立つ。

種牡馬別の成績だと、アドマイヤムーン、ロードカナロア、スウェプトオーヴァーボード、ショウナンカンプ産駒が直線競馬に適性を見せている(今回の登録馬では、アドマイヤムーン以外は該当なし)。

栗東所属の牝馬が活躍

アイビスSD出走馬の所属別,ⒸSPAIA
アイビスSD出走馬の性別,ⒸSPAIA


では、アイビスSDの分析に入っていこう。まずは所属別から。東西の出走頭数はほぼ同じで、美浦9連対(3勝)、栗東が11連対(7勝)。連対率はほぼ互角だが、勝ち馬を探すとなると栗東所属馬の方が確率が高そうだ。

性別も牡馬・セン馬、牝馬ともに5勝、2着5回と互角の数字。牝馬の5勝はいずれも栗東所属馬で、逆にいえば、美浦所属馬は牡馬しか勝っていないことになる。

アイビスSD出走馬の年齢,ⒸSPAIA


年齢別だとどうか。最も連対馬を出しているのは5歳馬で、全体の半分以上にあたる11連対。勝率、連対率では4歳馬がトップ。また、ほかの重賞では苦戦が目立つことが多い7歳馬も2勝を挙げている。3歳馬から勝ち馬が出ておらず、6歳、8歳以上は連対馬すら出ていない。上記に出た栗東所属の牝馬で、4歳と5歳馬に限ると、勝率、連対率とも数字が上昇する

アイビスSD出走馬の前走クラス,ⒸSPAIA


アイビスSD出走馬の前走,ⒸSPAIA

直線競馬という特殊な条件ということもあってか、前走でGⅠやGⅡを使っていた馬はそれぞれ2頭だけで、ともに着外。また、条件戦から挑んだ馬26頭中、連対したのは1頭。基本はオープンかGⅢ組からとなる。

今年はオリンピックや災害、改修工事などの影響で、例年と開催場所が違っているケースが多い。それだけに、相性のいいステップレースをそのまま評価していいのか悩むところ。一応、好成績を残しているレースを挙げてみると、まずはCBC賞組。最多となる4頭の勝ち馬を輩出している。ただ、今年のCBC賞は小倉で行われたのも影響しているのか、登録馬すらいなかった。

連対馬を最も多く出しているのは、アイビスSDと同じ直線競馬の韋駄天S。ここ4年で、何と3回もワンツーを決めている。近年の傾向を重視するなら、韋駄天S組に決め打ちするのも「あり」だろう。CBC賞組がいない今年なら、なおさらである。

出走頭数の割に結果が出ていないのはバーデンバーデンC(オープン)組。ここから24頭が出走して、2着(2頭)が最高着順。ただ、今年のバーデンバーデンCは5月に新潟で、しかも3勝クラスで施行されている。いつものバーデンバーデンCにあたるのは、7月18日に福島で行われた福島テレビオープンになるのだろうが、このレースに出走すると連闘となる。CBC賞同様、このレースからの登録馬もいなかった。

アイビスSDにおけるプラスデータ,ⒸSPAIA
アイビスSDにおけるマイナスデータ,ⒸSPAIA


最後に、アイビスSDでのプラス、マイナスデータを少々。まずはプラスデータの方だが、前走で1~3番人気に支持されていた馬は11頭いて、連対率は30%を超えている。

マイナスデータの方は、前走で5着以下に負けていた馬。勝率1.1%、連対率3.2%と確率がかなり低く出ている。同じく、前走で1秒以上負けた馬から連対馬は出ていない。

今年は苦戦?ライオンボス

アイビスSDのデータをまとめてみる。まずは好走確率の高いデータはA「栗東所属の4、5歳牝馬」B「韋駄天S組」C「前走1~3番人気」D「アドマイヤムーン産駒」。

好走確率が低くなるのはE「3、6、8歳馬」F「前走5着以下」G「前走で1秒以上の負け」。

こういっては何だが、冒頭で書いたように枠順に大きく左右されるレースなのは間違いない。本命馬が内枠に入ってしまうとしょんぼりだが、現時点で分からないものは仕方がないので、ほかのデータで詰めていく。

上記で書いたように、韋駄天S組で決め打つとどうなるか。今年は韋駄天Sから4頭が参戦。中でも注目は、2年連続で連対中のライオンボス。B「韋駄天S組」C「前走3番人気以内」をクリアしているが、同時にマイナスデータであるE「3、6、8歳以上」F「前走5着以下」G「前走で1秒以上の負け」もすべて抱えている。これまでの傾向から、韋駄天で好走した馬が続けてこのレースでも上位にくるケースが多く、ライオンボスの場合はちょっと負け過ぎ。思い切って外してみる。

同様の理由で12着のヒロイックアゲンも消し。ここからは1着のタマモメイトウと、3着のロードエースをピックアップ。

今年の登録馬を見て驚いたのは、栗東所属馬が少ないこと。登録馬19頭中、6頭しかいなかった。また、ここ10年で1頭も勝ち馬が出ていない組み合わせである「美浦所属の牝馬」が11頭もいる。2着は出ているとはいえ、積極的には買いづらい。人気が予想される栗東所属のモントライゼも、ここ10年で勝ち馬が出ていない3歳馬である。

というわけで、あと1頭加えるなら、好走確率が高い栗東所属の5歳馬ジュランビル。今回はこの3頭で勝負といきたい。

◎タマモメイトウ
〇ロードエース
▲ジュランビル

《ライタープロフィール》
門田 光生(かどた みつお)
競馬専門紙「競馬ニホン」で調教班として20年以上在籍。本社予想などを担当し、編集部チーフも兼任。現在、サンケイスポーツにて地方競馬を中心に予想・記事を執筆中。
夏の高校野球の予選が始まりました。授業をさぼってばっかりだった高校時代ですが、母校の夏の大会成績は一応チェックするようにしています。今年は無事2回戦を突破。創立100年を優に超えている古い高校ですが、甲子園に一度も出場経験なし。万馬券が当たるより難しいかもしれませんが、自分が生きている間に一度くらいは出場してほしいものです。21世紀枠が一番可能性が高いかなあ。

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