【中京記念】前半のペースも味方にアンドラステが勝利 今後見直せる馬とその好走条件は?

勝木淳

2021年中京記念のレース結果,ⒸSPAIA

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カギを握ったディアンドルのペース

サマーマイルシリーズ第2戦・中京記念は変則開催の影響で今年は小倉芝1800m。そもそもマイル戦ではなくなったことが明暗を分けた競馬だった。サマーマイルシリーズ初戦・米子Sを勝ったロータスランドは5着。小倉芝1800mだからこそ出走を決めた2番人気ボッケリーニは6着。勝ったのはマーメイドS4着アンドラステ、2着はマイル重賞を転戦してきたカテドラル、3着はマーメイドS2着のクラヴェルだった。単純に小倉芝1800m向きの馬を狙っても馬券はとれなかった。1、6、5番人気、人気の組み合わせ以上に難しいレースだった。

主導権を握ったのはディアンドル。冬の小倉大賞典3着、新潟の福島牝馬S1着、中距離向きながら前走ヴィクトリアマイル4着とマイルでも善戦、充実期にあった。相手関係をみて迷わずハナに立ったディアンドルは、かつて暴走気味に逃げることもあったが、この春ですっかり成長、抑えの効いた走りをみせる。前半1000m59.9は、自身が3着に残った小倉大賞典58.0よりかなり緩いペース。勝ったアンドラステも若干行きたがる素振りをみせていた。

ここまで緩ければ、後続も手応えはラク。仕掛けどころに自信がある強気な川田将雅騎手アンドラステが早めに動き、ディアンドルのコーナーリングで生まれた内側のスペースに突っ込んだ。最後の800m11.6-11.5-11.5-11.7。ディアンドルが得意のロングスパートに持ち込んだわけだが、とにかく後続の手応えも十分だった。抑えることでディアンドルの強みを消してしまった可能性もあるだろう。最後の800mが速くなったことも、インを通って時計のロスを減らしたアンドラステにとって好都合だった。

逃げ馬の内側が開くというラッキーもあったが、前走マーメイドSでシャムロックヒルのマイペースに苦しみながらも最後まで伸びた経験も生きたといっていい。これで1800mは【2-1-0-1】。マイルも好成績だが、1800mも得意。小倉の中京記念にふさわしいタイプだった。

小倉記念で見直したいボッケリーニ

6番人気2着カテドラルはこの春マイル重賞2、2、12着。安田記念こそ崩れたが、マイルで安定感が出てきた。東京スポーツ杯2歳S以来の1800m、コーナー4つの競馬は3歳京成杯以来という不利な条件ながら2着確保は充実の証。前記の通り最後の800mが速い競馬でメイケイダイハードに張られ、かなり外を回らされたのは痛かった。アンドラステとの着差はこれも影響した。惜敗続きはいかにもハーツクライ産駒らしい戦歴だが、このタイプは同時に軌道に乗ると手がつけられない。距離の融通も出ており、本格化への階段をあがっている可能性は高い。

5番人気3着クラヴェルは、横山典弘騎手の12年ぶりになる夏の小倉参戦で話題を呼んだ。前走マーメイドSでは大外一気で逃げるシャムロックヒルに迫ったが、今回はインを鋭く伸びた。さすがはマジシャン、臨機応変だった。ただ、現状では重賞だとどうしても大味な競馬にならざるを得ない印象。まだまだ自力で勝ちに行けるだけの力はないという名手のジャッジに見えなくもない。結果、マーメイドS4、2着が中京記念で1、3着。マーメイドSへの評価は見直すべきだろう。

インを立ち回ったという意味では8番人気4着ミスニューヨークはマーメイドS15着。小回り1800mが得意な差し馬。条件は申し分なかったが、ディアンドルのペースが緩かった点が誤算。内枠からロスなくインを抜け出しており、もっと前半が速ければ、もっと際どかった。不発も多いタイプで好走条件は狭いが、その分、狙いすましていける。今後も小回りの中距離戦で押さえておきたい。

2番人気ボッケリーニは6着。2着だった小倉大賞典と同舞台だけに期待を集めたが、直線では内にもたれて、真っ直ぐ走れず、矯正に懸命だった。キングカメハメハ産駒らしく使いながら調子をあげるタイプだけに、新潟大賞典から半端に間隔が開いたことも響いただろうか。こちらはサマー2000シリーズの小倉記念に出走するようなら見直したい。

2021年中京記念のレース展開図,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。


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