【アイビスSD】ライオンボスもモントライゼも危険! 今年は波乱も考えたい新潟名物アイビスSDを大分析!
勝木淳
1番人気は【7-2-0-1】だが……
夏の新潟開幕週はその名物である芝直線1000mで行われるアイビスSD。01年第1回メジロダーリングの53.9の衝撃は翌年のカルストンライトオ53.7に塗りかえられ、現在まで日本レコードとして記録に残る。以前と比べて、ダッシュというレース名のわりにスタートからぶっ飛ばす競馬は減り、序盤ゆったり入るケースが増えた。そういった点も踏まえ、過去10年間のデータをもとに傾向を探っていきたい。
1番人気は【7-2-0-1】勝率70%、複勝率90%と断然。波乱が多い夏場の重賞のなかで、本命党にとってオアシスのようなレースだ。この10年で着外だったのは12年ビウイッチアスしかいない。今年は当コース4勝、ここ2年アイビスSD1、2着のライオンボスに期待がかかる。ただし、直前の韋駄天S9着の6歳馬で、以前のスピードがあるかどうか。むしろ3歳モントライゼあたりが1番人気だろうか。
1番人気がやたら強いため、2番人気以下は9番人気まで確率としては差がない。9番人気【0-1-2-7】複勝率30%など、1番人気を軸にしつつも馬券の組み立ては慎重に考えたい。ちなみに10番人気以下は【0-0-1-68】、この10年間で馬券に絡んだのは11年11番人気3着アポロフェニックスのみだ。
モントライゼがいるので、気になる年齢別成績をみる。3歳は【0-2-1-8】複勝率27.3%、勝利こそないものの、馬券圏内に入る可能性は十分ある。勝ち馬もかつては05年テイエムチュラサン、06年サチノスイーティーなど出ており、決して3歳馬が通用しないレースではない。モントライゼの問題は久々の芝1200m戦だった前走葵S1番人気5着、今回は距離がさらに短縮されるという点だろう。3歳春なので我慢させて距離を延ばしてきたが真の適性は短距離にあり、というタイプではなさそうだ。
古馬は4歳【4-1-1-12】勝率22.2%、複勝率33.3%、5歳【4-7-4-31】勝率8.7%、複勝率32.6%のふた世代が中心。7歳【2-0-1-29】も不気味だが、勝利したのは14年セイコーライコウ、17年ラインミーティアといずれも直線競馬に実績があった。そういった意味ではライオンボスはベテランでも侮れないが、6歳【0-0-3-34】は引っかかる。なお牝馬は【5-5-6-56】、夏の短距離戦らしく活躍中、この10年間、馬券圏内に牝馬が入らなかった年はない。
直線競馬といえば、やはり枠番だ。開幕週に行われる重賞だけに枠順バイアスはかなり大きく、8枠【4-2-1-17】勝率16.7%、複勝率29.2%がやたら目立つ。これはもうみんな知っている話で、このコースで8枠に入った馬は過剰に人気になり、結果も出す。アイビスSDに限ると単勝回収率は236%。黙って8枠も作戦のひとつ。
全体的に6枠より外の複勝率が高く、外枠有利なコースではあるが、2枠が【2-2-1-12】勝率11.8%、複勝率29.4%と善戦。ただし馬券に絡んだ5頭は1、4、3、1、3番人気と上位人気馬ばかり。穴はここから出現せず、どちらかというと「上位人気馬を枠番だけで消すと痛い目に遭う」という感じだろう。ライオンボスやモントライゼが2枠に入ったと喜んで馬券から外すのはいただけない。
ライオンボス、モントライゼの不安点
それでは前走距離を中心にさらに戦歴から好走パターンを探っていきたい。
前走が1000mだった馬【4-4-2-27】勝率10.8%、複勝率27.0%、1000m超だった馬【6-6-8-102】勝率4.9%、複勝率16.4%。前走1000m組が断然優位のようにも見えるが、出走頭数に開きがあり、確率ほど差はない。どちらも公平に見ていきたい。
前走1000m戦での着順別成績をみると、1着【2-2-1-3】勝率25%、複勝率62.5%、2着【1-2-0-2】勝率20%、複勝率60%など好走組が目立つ。韋駄天Sを勝ったタマモメイトウは買えるが、6~9着【0-0-0-10】に9着だったライオンボスは触れる。やはり当コースの猛者が直前のレースで大きく負けたのはひっかかる。
前走1000m組のそのレースでの位置取り別成績を出すと、逃げ【3-2-0-1】、先行【0-2-0-2】とスピードに勝る競馬をしていた馬が断然いい。タマモメイトウはこちらに触れる。どうにもデータから素直に推せる馬がいない。
距離短縮組の好走はすべて前走1200m。1400m以上だった馬は【0-0-0-16】なので、前走1200mに絞ってみる。前走1200mの着順別成績は前走1000m組とはちょっと違い、1着だった馬は【0-0-4-12】ともの足りない。ここはちょっと負けた馬の成績がよく、4着【2-0-1-4】勝率28.6%、複勝率42.9%など2~4着が【4-4-2-12】と好走ゾーンになる。なおモントライゼが該当する前走5着は【0-1-0-6】と強調しづらい。
位置取りの成績は前走1000mと同じで逃げ【2-2-1-13】勝率11.1%、複勝率27.8%、先行【1-3-3-23】勝率3.3%、複勝率23.3%が狙いどころ。モントライゼは前走1200mで4コーナー10番手、やはり1200m戦で前半に置かれたのはアイビスSDを迎えるにあたり、不安要素になってしまう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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