【プロキオンS】メイショウカズサ日本レコードタイで勝利! 続出する高速決着について考える
勝木淳
ⒸSPAIA
レコード更新の公算大だった
開幕週のCBC賞では芝の高速馬場が話題になったが、2週目は梅雨末期の不安定な天候から今度はダートが高速化した。土曜日のインディアT(2勝クラス、ダ1700m)でホッコーハナミチが06年サンライズキングの1分41秒8を0.4上回る時計で快勝。最終レース1勝クラスの平場戦(ダ1000m)ではフリードが14年ルベーゼドランジェの56秒9を0.1更新。日曜日はダメ押しではないが、直前の10Rから雨、プロキオンSもレコードが出る公算は高かった。
レースの展開のカギを握ったのは3頭いたメイショウ軍団。いずれも逃げて好走するタイプ、競り合いこそないだろうが、最内枠のメイショウワザシ、2枠のメイショウカズサ、大外枠のメイショウウズマサ、はたしてどの馬が先手を奪うのか注目された。
結果はメイショウウズマサが大外枠からハナに立ち、伏兵のトップウイナーが番手を主張、先行姿勢を見せたメイショウワザシは無理をせず3番手に収まり、ワザシの動きに合わせ、それを利用してポジションを確保したのがメイショウカズサだった。
レースラップは6.7-10.7-11.5-12.5-12.0-11.6-11.5-11.9-12.5。序盤は突っ込み気味も、先行勢にメイショウ軍団3頭がいたことで、その後は落ち着き、中盤でペースダウン、息を入れられた。メイショウウズマサは残り800mから加速するという超強気な競馬で後続の脚を削った。結果的にこのロングスパートによって4着ダノンスプレンダーをハナ差しのいで3着、12番人気の低評価をあざ笑った。この強気な競馬についていったトップウイナーは14番人気2着。前走は芝の目黒記念で逃げて16着。得意のダート替わりとはいえ、短距離中心の馬だっただけに狙いにくかった。
道悪ダートはエーピーインディ系
勝ったのはメイショウ軍団でもっとも控える競馬を選択したメイショウカズサ。控えるといっても、1コーナー手前までにメイショウワザシの外というポジションを奪いに行っての結果。消極的なものではなく、松山弘平騎手のインサイドワークが光った。最近はデアリングタクトなど差すイメージも強いが、松山弘平騎手はやや反応が悪い、いわゆるズブい先行馬に乗せたらピカイチだ。
道中は先に動いたワイドファラオを行かせ、自身は下がってきたメイショウワザシのポジションをとり、3、4コーナーは内ラチ沿いを選択、距離ロスを消すことで高速決着に対応した。早めに入れたステッキは左、最内ぴったりを走らせるための矯正動作だったのではないか。直線に入ると、右ステッキに持ち替え、今度は外目に持ち出し、泥をかぶらないように広いスペースに馬を導き、最後まで集中して走らせ、トップウイナーを捕らえた。無駄のないスマートな組み立てだった。
メイショウカズサの父カジノドライヴはエーピーインディ系マインシャフトの子ども。現役時代は米国GⅡ勝ちや、2着に敗れたフェブラリーS1分34秒6など高速決着に強かった。産駒もダートでは馬場が悪化するほど勝率が上昇する道悪血統。芝もダートも道悪になると、血統が結果を左右する割合が高まり、いわゆる道悪血統が幅を利かせる。道悪ダートはエーピーインディ系という、基本といえば基本に忠実な結果でもあった。
またメイショウカズサは、昨夏この舞台で2勝クラス0.7差圧勝。夏はこういった前年夏に結果を出していた馬が凡走から一変、穴を開けやすい季節でもある。戦歴は丁寧に検討したい。
勝ち時計1分40秒9は、小倉ダート1700mのコースレコードだけでなく、ロンドンタウンが17年エルムSで記録した日本レコードに並ぶ好時計。先週のCBC賞でも触れたが、競馬はあくまで着順を競う競技、記録はあとからついてくるもので、必ずしも価値が高いとはいえない。
それは陸上のトラック競技のように路面などコース設定に細かい統一規定があるわけではなく、競馬場によって高低差などレイアウトはバラバラで、それを個性と考えているからだ。
単純に速い馬を選ぶわけではなく、競馬を使う側も予想する側もコースの違いを利用するから、着順は毎回入れ替わり、競馬は成立する。まして主催者も陸上のトラック競技とは異なり、高速レースを目指しているわけではない。天候によって、結果的に高速決着になるわけで、日本レコードに並んだこのレースを根拠に上位好走馬を次も狙うのは早計だろう。まして速い時計は馬の脚元に負担がかかる。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。
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