【七夕賞】軸は人気の関東馬、ヒモには人気薄の関西馬 東大HCの本命はクレッシェンドラヴ

東大ホースメンクラブ

七夕賞インフォグラフィック,ⒸSPAIA

軽ハンデ馬を狙うなら前走非重賞組

7月11日(日)に福島競馬場で行われる七夕賞(GⅢ・芝2000m)。ファンタジーな名称とは裏腹に、波乱が常態化し競馬ファンの心を折る難解なハンデ重賞だ。

昨年の覇者クレッシェンドラヴや安田記念5着のトーラスジェミニ、「福島の鬼」ヴァンケドミンゴといった実績馬が人気の中心だが、何と言ってもこのレースは七夕賞。人気馬での決着は到底見込めず、出走馬16頭全頭にチャンスがある。そんな「しち」難しい一戦においてデータを基に推奨できるのはいずれの馬なのか。今週も検討していこう。

過去9年の七夕賞レース内容,ⒸSPAIA


まず過去9年(11年は中山開催のため除く)の七夕賞のレース傾向を見る。福島競馬場は小回りで直線が短いコース形態となっており、全体的に逃げ・先行馬が有利。前目の位置を取れるか否かが着順に大きく影響するため、スタートから1コーナーまで距離のある2000mのコースでの七夕賞では特に激しい先行争いが行われる。

必然的に前傾ラップとなりやすく9年で7度が前傾、2018年には前後半1000mが58.2-62.6というハイペースになっている。それにもかかわらず差し馬の成績は芳しくなく、4角7番手以下から勝ち馬は出ていない。3着内だった27頭中、実に17頭が4角5番手以内だった。多少無理をしてでも先行する馬を評価すべきだろう。

また過去9年で牝馬は【0-0-0-10】と壊滅的で斤量によらず好走例がない。ロザムールは脚質的には評価できるものの、牝馬である以上割り引かざるを得ない。ただ牝馬を除けばハンデ戦らしく斤量に恵まれた下位人気馬の激走も見られ、55kg以下の牡馬・セン馬は【2-4-8-55】で複回収率202%と妙味がたっぷりある。ただ該当馬のうち前走重賞組が【1-1-1-33】と大不振である点には注意したい。逆に前走が重賞でなければ【1-3-7-22】で複回収率357%とさらに色気が増し、2・3着馬候補として押さえるべきだ。

軸は人気の関東馬、人気薄で狙うなら断然関西馬

七夕賞東西別人気別成績,ⒸSPAIA


〈過去9年の七夕賞・関東馬と関東馬の人気別各成績〉
関東馬・5人気以内【4-3-1-12】勝率20.0%/連対率35.0%/複勝率40.0%/複回収率88%
関東馬・6人気以下【0-1-3-44】勝率0.0%/連対率2.1%/複勝率8.3%/複回収率87%
関西馬・5人気以内【3-2-0-20】勝率12.0%/連対率20.0%/複勝率20.0%/複回収率50%
関西馬・6人気以下【2-3-5-33】勝率4.7%/連対率11.6%/複勝率23.3%/複回収率246%

次に東西別の成績を調べた。すると所属の別により狙うべき人気帯が対照的であることが判明したため、表では上位人気と下位人気に分ける形で東西各馬の成績を示した。

まず関東馬で優秀なのは上位人気馬。その中でも57kg以上の重いハンデを課された馬は【4-1-1-3】で複勝率は67%と斤量を物ともしない好成績。波乱傾向の強い七夕賞でこの安定感は非常に心強く、これに該当するクレッシェンドラヴはトップハンデながら軸にふさわしい。

対照的に関西馬で狙うべきは下位人気馬。表にもある通り、何と下位人気馬の複勝率が上位人気馬のそれを上回るという結果に。懐に余裕があるなら人気によらず関西馬は全頭買い目に含める勢いで馬券を組み立てたい。また関西馬に関しては人気だけでなく年齢も不問で、7歳以上の馬でも【1-1-1-13】と馬券に絡む可能性が十分にある。しかも3頭のうち2頭は二桁人気馬であったことを考えると、「関西馬」というファクターが如何に力を持っているかがお分かりいただけるだろう。


年齢や斤量を跳ね返しての連覇に期待

◎クレッシェンドラヴ
福島2000mは【2-2-0-0】と好相性で、本馬がOP入りした後に連対したのはこの4鞍のみと舞台適性は疑いようがない。GⅠでは力が足りず近3走は掲示板にすら載れなかったが、GⅢのメンバーと比べれば実力は上位。トップハンデもデータ的には問題なく、ハンデ戦の1番人気でも信頼したい。

また「七夕賞なのに7歳は不振」という小ネタを耳にした人も多いと思うが、そもそも過去9年で3番人気以内になった7歳以上の馬はおらず、クレッシェンドラヴに7歳不振論を当てはめるのが早計だということは断っておきたい。

◯ショウナンバルディ
関西馬から最も推したいのはこの1頭。前走の鳴尾記念では展開が向いたとはいえGⅠ馬に先着しており力を示した。積極的な競馬を得意とする点からも評価でき、本馬が先行した時の成績は【2-3-2-2】と粘り強い。当日の人気次第では「関西馬×6番人気以下×5歳馬」が【1-1-1-6】、「関西馬×6番人気以下×55kg」が【1-2-3-5】といった好データに当てはまることになり、さらに信頼度は増してくる。

▲ヴァンケドミンゴ
【4-2-3-13】という全戦績のうち、福島成績が【4-1-1-0】と「福島の鬼」という称号がふさわしい巧者ぶり。近走成績が振るわないが、昨年も福島以外のレースではほとんど掲示板外に敗れていることを考えれば不安視する必要はない。さらに【1-1-2-0】と相性の良い酒井学騎手に戻る点も巻き返しを期待させる要素の一つである。ただ後ろから運ぶ脚質的にアタマにくるとは考え難く、3番手評価に留めた。

△マウントゴールド
人気薄の関西馬で先行力があることから4番手に評価。8歳という年齢は減点要素ではあるものの、前走がOP特別だった関西馬は【1-1-3-8】で複勝率39%と中々の良績。前走は行った行ったの競馬でSペースに助けられた点は否めないが、58kgを背負いながら2着に1馬身差をつけるのだからまだまだ衰えてはいない。

以下、前走非重賞の軽ハンデ馬からスカーフェイスとツーエムアロンソを推奨。前者は左回りが【0-0-0-7】と大の苦手で勝ち上がりに時間を要した。右回りで最軽量の52㎏なら面白い存在だ。後者は中央芝での2勝をともにハンデ戦で挙げており、軽ハンデを利した激走が十八番となっている。

そして、データに逆らってでも押さえておきたいのがブラックマジック。前走のダイヤモンドS(芝3400m)は流石に適性外。福島競馬場とのリンクが強い中山競馬場での戦績が【2-1-1-0】と安定しており、先行する脚質を考えてもコース適性はあるはず。随分と多くの馬に印を回してしまったが、ただでさえ荒れ気味な夏競馬でも屈指の難解なレースということで、ここはご勘弁頂きたい。

▽七夕賞予想▽
◎クレッシェンドラヴ
〇ショウナンバルディ
▲ヴァンケドミンゴ
△マウントゴールド
×スカーフェイス
×ツーエムアロンソ
☆ブラックマジック

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。



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