【CBC賞】衝撃の日本レコード! ラップから見えるファストフォースの可能性と北九州記念で狙いたい馬

勝木淳

2021年CBC賞のレース展開ⒸSPAIA

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日本レコード連発の馬場

この開催の小倉の芝は野芝のみで構成された超高速馬場。日本一速い時計が出る芝1200mは、土曜日2勝クラス戸畑特別でプリモダルクがアグネスワールドの日本レコード1分6秒5を破るなど極限状態だった。

サマースプリントシリーズ第2戦CBC賞は小倉芝1200m重賞としては珍しい13頭立て。注目は地元九州里帰りでJRA重賞制覇を目指すヨカヨカ。3歳牝馬ハンデ51キロ、極限状態のスピードトラックでこの上ない条件がそろったかに見えた。

勝ち時計1分6秒0は予想通り、前日の日本レコードを更新した。陸上では日本人が100m9秒台で走る時代、競馬ではかつて衝撃的だった6秒台から5秒台がみえてきた。陸上のトラック競技とは違い、これが賞賛すべきことかどうか迷う。競馬は順位を競う競技だが、記録を争う競技ではないと考えるのは私だけだろうか。

CBC賞 11.6-10.0-10.7-10.9-11.1-11.7
戸畑特別 11.6-10.2-10.5-11.0-11.2-11.9

いずれもとてつもないラップ構成だが、CBC賞を逃げ切ったファストフォースは10秒台を3区間600mにわたって叩き出した。200m通過後の10.0から400~600mは10.7、猛ラップのなかでも絶妙にペースを一旦落とした。プリモダルクほどひと息で走っておらず、さすがに重賞ウイナーの内容は濃い。

ファストフォースの可能性

戸畑特別の前後半600mは32.3-34.1、後続がついてこられない猛ラップで後ろの脚を削り、前半のおつりをいかした逃げ切り。CBC賞は前後半600m32.3-33.7。前半は戸畑特別と同じだが、ファストフォースはそこで溜めを作り、後半でプリモダルクの記録を0.4上回った。前半で後ろの脚を削り、自身は脚を残していた。同じ6秒台でも価値は異なる。ファストフォースはここまで猛ラップにならずとも走れるだろう。

母ラッシュライフは全2勝どちらも函館芝1200m、最高記録は1分9秒1で決して快速牝馬ではなかった。その父はご存じ名スプリンターのサクラバクシンオー。超高速馬場で祖父の血が目覚めたということか。隔世遺伝というのは人間でもよくある。ファストフォースは中央未勝利で門別移籍、3勝をあげ中央再転入。若い頃に苦労を重ねて、能力を開花させた。やはり単調なスピードタイプではなさそうだ。

北九州記念での取捨選択

2着は2番人気3歳ピクシーナイト。1200m初挑戦、この時計で2着は今後の可能性を感じさせる。勝ったシンザン記念や4着アーリントンCともにスピードを生かした競馬で好走しており、スプリント戦で馬群に入って競馬をできた点は収穫だろう。ただフルゲートに満たないレースで外枠から出て、猛ペースのためバラけた展開になり、周囲に馬がいない状態だったことも覚えておきたい。前半は少しケンカするような場面もあったが、うまく落ち着かせる状況を作れた。まだまだ危うい雰囲気もある。

3着アウィルアウェイは6番人気。昨年の北九州記念、スプリンターズS3着、スプリント実績最上位ながら6番人気は人気の盲点。評価を下げすぎたか。とはいえ、他力本願タイプでアテにしづらい。好走要因は頭数が少ないこともあり、前半はいつもより前、中団後ろぐらいで流れに乗れたこと。これは進化なのか、状況がそうさせたのか判断が難しい。後者のような雰囲気もあるので、日本レコードの3着と昨年3着が強調されて、北九州記念で過剰に人気になるようなら嫌ってもよさそうだ。

1番人気ヨカヨカは5着。1年前の小倉での活躍と葵Sの内容から期待されたが、最後は伸びを欠いた。前半の猛ラップを好位のインから追走。レース運びにソツがなく、レースセンスの高さは見せた。葵Sよりスムーズに運んだものの、最後の直線は蛇行しながら走っていた。この時計に苦しくなった可能性があり、やはり本質はもう少し時計がかかる舞台が理想、ベストは1400mあたりではないだろうか。とはいえ、もっと時計を要するだろう北九州記念で前進があってもよさそうだ。

最後に北九州記念で狙える馬を探すと、後方から上がり2位タイの末脚で伸びた12番人気6着ノーワンをあげる。前半の猛ペースは後方で脚を溜める馬にも辛く、伸びきれない馬も多かったなか、しぶとさを見せた。こちらももう少し時計を要する舞台なら一発あってもいい。北九州記念は例年、多頭数で差し、追い込みも決まりやすい。途中開催がない期間もあるが、日本レコードを出せるような馬場状態でもないだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

2021年CBC賞のレース展開ⒸSPAIA




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