【ラジオNIKKEI賞】やっぱり難解な一戦制したヴァイスメテオール　明暗くっきり、序盤600mの攻防とは？

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2コーナー、隊列決まって勝負あり

夏の福島開幕を飾るラジオNIKKEI賞は、貴重な3歳限定のハンデ戦。クラシックで跳ね返された馬や出走が叶わなかった馬たちが集うため、例年決まって混戦模様。今年もクラシック出走馬や重賞好走馬と1勝クラスを勝ちあがった組との力関係がカギを握ったレースだった。

結果はダービートライアルで権利をとれなかったヴァイスメテオールが勝ち、皐月賞12着から巻き返したワールドリバイバルが2着、青葉賞大敗のノースブリッジが3着。4、11、7番人気で決着、予想の難しい競馬だった。

皐月賞で逃げたワールドリバイバル、1勝クラスを逃げ切ったタイソウやグランオフィシエ、青葉賞で先手を奪ったノースブリッジと前走で逃げた馬が外枠に集まり、なんとなくどの馬もなにがなんでもと先手を主張しそうにない組み合わせ。展開予想がもっとも正解にたどり着けそうな予感があった。

福島芝1800mは発馬直後から1コーナーまで300mほど。外目からダッシュを効かせて先手を奪いにいったのはワールドリバイバルとノースブリッジの2頭。タイソウはこれらの動きに合わせにいく。内枠で積極性を見せたのはヴァイスメテオール、シュヴァリエローズ。この時点で勝負あった。雨の影響でやや重になったが、開幕週の馬場は内側が絶好、距離ロスは命とりだった。外枠からハナに行ったため、ノースブリッジは馬が落ち着くまでやや手間取り、1、2コーナー区間は10.8とやや突っ込んで入ったものの、向正面にかけて12.3-12.5とペースを落とす。先に落ち着き、番手で我慢できた2着ワールドリバイバルとの差はこのあたりにあった。ここまでの攻防で前目のインをとった馬たちが上位を独占した。

梅雨どきに味方につけたい母の父アグネスタキオン

レースはここから膠着状態。1000m通過1分00秒7、残り600mまでペースはあがらず、最後の600mは11.8-11.6-11.8、いわゆる上がり競馬になった。ヴァイスメテオールは4コーナー手前で進路を失いかけたが、そこで思い切って仕掛け、先に抜け出しにいった。シュヴァリエローズの外、内から4頭目という絶妙な進路をとれたのは、4コーナー手前で待たずに仕掛けた好判断がもたらしたものだった。

ヴァイスメテオールは初勝利がやや重、2勝目が不良馬場。適度に降雨があった馬場も味方したか。母シャトーブランシュは15年マーメイドSなどJRA・4勝、不良馬場での勝利もあり、やや時計を要する馬場の中距離戦に強かった。これはシャトーブランシュの父（ヴァイスメテオールの母の父）キングヘイローの影響だろう。その父は欧州の伝説ダンシングブレーヴ。父としてコマンダーインチーフやホワイトマズルといった道悪巧者を送った。日本ではやや時計を要する馬場に強いため、切れ味鋭いサンデーサイレンスには劣勢だったが、馬場が悪化したときや緩急のない底力勝負でその真価を発揮した。ヴァイスメテオールは父キングカメハメハから器用さと強い筋肉を譲り受け、瞬発力勝負にもある程度対応できる。極端に軽い馬場でなければ、今度も活躍できるだろう。

2着は11番人気ワールドリバイバル。2勝目の小倉、あすなろ賞では逃げて後半800mのロングスパートを決めた。皐月賞戦線では壁に当たったが、立て直しに成功した。小回りを積極的に運ぶ競馬が合っており、番手から競馬できたことで、似た条件であれば好走する機会はさらに増えそうだ。母の父アグネスタキオンは種牡馬として自身の現役時代よりはパワー型を多く送った。7月2日までの過去5年間で母の父アグネスタキオンは、良以外の芝ならば母の父サンデーサイレンスに次ぐ着度数別2位の74勝。梅雨どきには味方にしたい。

上位人気に推された馬のうち、アサマノイタズラ、ボーデン、リッケンバッカーは内枠から出て、隊列が決まるころには中団より後ろの外目にいた。この時点でアウトだった。競馬は先行して後悔するより先行せずに後悔する頻度が高い。アサマノイタズラとボーデンは積極策でGⅡを好走しただけに、枠順を利して前半で位置をとれなかったのは残念だった。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』（中央競馬ピーアール・センター）にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

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