【宝塚記念】今年も「悲願成就」のレースとなるか? ”現役最強2勝馬”カレンブーケドールにチャンス到来

山﨑エリカ

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悲願成就の舞台 宝塚記念

これまでGI勝ちがなかった馬が優勝するケースが多い宝塚記念は、悲願成就の舞台になることも多い。過去10年を見ても、2011年アーネストリー、2015年ラブリーデイ、2018年ミッキーロケットの3頭がGI初勝利を達成している。2017年の覇者サトノクラウンも、前年の香港ヴァーズでは優勝していたものの、国内GIは初制覇だった。

宝塚記念出走馬のPP指数,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


宝塚記念でこのような現象が起こる理由は次のとおり。

1.天皇賞・春と宝塚記念の連覇は難しい。
超一戦級が集うGIを、連続好走するのは難しいもの。天皇賞・春を大目標に仕上げ、そこで好走すれば宝塚記念は余力で走ることになる。実際に過去10年で同年の天皇賞・春の優勝馬4頭がこのレースに出走し、連覇どころか、連対した馬さえもゼロ。2012年のビートブラックは9着、2013年のフェノーメノは4着、2016年のキタサンブラックは3着、2017年のキタサンブラックは9着に敗れている。

2.消耗戦になりやすい
阪神芝2200mは外回り4角奥からのスタートとなり、最序盤が下り坂。1角までの距離が約525mと長いこともあり、前半3Fのペースが速くなりやすい。さらに梅雨期に行われるため、力の要る馬場で行われることが多い。要は速い上がり(瞬発力)が求められないため、高速馬場の東京や京都(今年は阪神)で勝ち切れないじりじりタイプの馬が活躍することが多い。

3.休養明けの馬は通用しにくい
競走馬が休養明けで不足するのはスタミナ。宝塚記念は消耗度戦になることが多いため、休養明けの馬はほとんど通用していない。過去10年の休養明けで優勝した馬は、2017年のサトノクラウンと2019年のクロノジェネシスの2頭。ともに重・不良馬場では連対を外したことがない道悪巧者であり、豊富なスタミナを持った馬である。

ただし、今年はアーネストリーが優勝した2012年以来の3回阪神2週目で行われる。開幕週の先週の芝は、土曜日は重馬場、日曜日は稍重ながら、合計12レース中、6レースも逃げ馬が優勝したように、今年は高速馬場である。昨年はもともと馬場が悪化した状態のうえに雨に祟られたが、今年はひと雨降っても、そこまで馬場が悪化しない可能性が高い。

クロノジェネシスの昨年の再現はあるのか?

クロノジェネシスは昨年の宝塚記念で2着キセキに6馬身、3着モズベッロに11馬身差をつけて圧勝し、指数「-39」を記録。これは当時のアーモンドアイの最高指数「-32」(2018年・ジャパンC)を上回るものであり、一躍、現役最強に踊り出た。昨年の再現ができれば、今年も圧勝だろう。

しかし、昨年の宝塚記念当日は直前のゲリラ豪雨の影響で、稍重発表でも重馬場くらい時計を要していた。それまで稍重~重馬場で3戦3勝の実績があるクロノジェネシスにとってもってこいの条件だったということだ。さらに前半3F34秒6の宝塚記念らしい、かなり前半が速い流れとなったことで、中団の外でレースを運んだ同馬は展開に恵まれる形にもなった。

今年はレイパパレの出方ひとつでペースも上がらない可能性もあるだけに、そこがクロノジェネシスの弱点となる。実際に前走のドバイシーマクラシックでは、有馬記念以来の一戦で、トップコンディションではなかったにせよ、極端なスローペースを3~4角の外から早めに動いて、同馬を徹底マークしていたミシュリフの末脚に屈する形で2着に敗れている。早仕掛けも敗因のひとつだろう。また、直線序盤で内から割ってきたラヴズオンリーユーとの接触もあった。前走同様に早めに動いた場合には、善戦止まりで終わる危険性もないわけではない。

能力値2~5位を紹介

【能力値2位 レイパパレ】
デビューから6戦6勝。前走の大阪杯当日は、5レースの3歳上1勝クラスの1600m戦が1分33秒5で決着したように、前半は高速馬場だったが、6レースには大雨が降り出し、馬場が良から重まで一気に悪化。大阪杯は土塊が飛ぶほどで、不良馬場でもいいほどのかなりタフな馬場になった。

そのような状況の中で、レイパパレは骨を切らせて肉を断つ、ハイペースの逃げを打ち、逃げ切った。最後の直線で馬場の良い外に出したこともあり、4馬身差の逃げ切り勝ち。指数も前々走のチャレンジCから10ptアップの「-31」を記録した。文句なしの見事な内容だったが、道悪で激走すると、疲れが強く出るもの。大阪杯で3着のコントレイルも、その後の疲れが抜けきれずに、出走回避している。底知れぬ魅力を感じる一方、アリストテレスの阪神大賞典のような危うさも潜む。


【能力値3位 カレンブーケドール】
2019年のジャパンCで自己最高指数「-25」を記録した馬。2019年のジャパンCは、重馬場で行われ、やや速い流れになったが、好位の内で逃げたダイワキャグニーとのスペースを保ちながらレースを運び、2着と好走した。

また、同馬は昨年の三冠馬3頭対決となった昨秋のジャパンCでも、デアリングタクトとクビの上げ下げでハナ差の4着と好走し、前年のジャパンCと同様の指数で2着と好走している。昨年のジャパンCは、キセキの暴走逃げによって、前が厳しい流れ。アーモンドアイに先に行かれたことで差す競馬になったことが功を奏したが、2019年のジャパンC2着時と同じ、自己最高指数を記録したのは立派。

このようにカレンブーケドールは、芝2400m前後がベスト。前走の天皇賞・春は、さすがに距離が長いと見ていたが、淀みない流れの2列目でレースを運び、3~4角では逃げ馬ディアスティマに並びかけ、直線半ばでは先頭に立ったものの、最後の坂で失速。しかし、前が苦しい流れとなった中での3着は立派だった。今回は距離も好ましく、前走ほどペースが上がる要素が少ないだけに、前走以上の走りは見せられると見る。また、レースを順調に使われていることも大きな強みである。


【能力値4位 ユニコーンライオン】
長期休養明けから上昇一途で、前走の鳴尾記念ではまんまと逃げ切り勝ち。重賞初制覇を達成した。前走のペースは前半5F62秒9-後半5F57秒8の超絶スローペースだが、同レースではメンバー最速の上がり3Fタイムを記録したブラストワンピースと0.1秒差の34秒1を記録。つまり、直線で後続が差を詰め切れなかった以上、この一戦に関しては完勝という評価になる。

しかし、今回はさらなる強敵が相手の一戦。レイパパレが凱旋門賞を見据えて、折り合う競馬に専念してくる可能性もあり、そうなった場合は、再び展開に恵まれる可能性はある。ただ、それでも前走からさらなる伸び代がないと厳しいだろう。


【能力値5位 モズベッロ】
昨年の宝塚記念では、上位2頭の直後で上手く脚をため、3着を拾って波乱を演出。前走の大阪杯でも、オーバーペースで逃げるレイパパレをサリオス、グランアレグリア、コントレイル等が潰しに動いて、しまいが甘くなった中、馬場の良い外からワンテンポ待って仕掛けて、最後にそれらを捕らえ切って2着を死守した。同馬が前走で記録した指数は、自己最高の「-24」。今回は大阪杯の疲れが心配のうえに、前走時のように馬場や展開に恵まれない可能性が高い。

穴馬は前走の天皇賞・春で復調気配を見せたアリストテレス

アリストテレスは、菊花賞ではコントレイルが最も取りたい位置である同馬主のディープボンドの後ろを取って、内のコントレイルを外に出さないようにふさぐ形で追走。しかし、4角でディープボンドが内に進路を取り、アリストテレスが遠心力でやや外に膨らんだ間をコントレイルが突いて抜け出すと、最後まで2頭のマッチレースとなった。コントレイルをもっとも脅かした4歳馬と言える。

しかし、前々走の阪神大賞典では不良馬場のAJCCで好走した疲れが抜けずに、断然の1番人気を裏切り、見せ場のない7着に敗れた。AJCCで同馬に半馬身差まで詰め寄ったヴェルトライゼンデがその後、骨折してしまったように、道悪での好走という行為は、本当に怖い。だから、海外では出走回避が認められているのである。

それでもアリストテレスは前走の天皇賞・春では、カレンブーケドールにアタマ差まで詰めより、復調気配を見せた。確かに淀みないペースの単独6番手でレースを運んだ同馬よりも、2列目から早矢仕掛けしたカレンブーケドールのほうが強い内容ではあったが、前々走から前進したことは好ましい。宝塚記念はレースを順調に使われている強みで、天皇賞・春の凡退馬が巻き返して来ることが多いだけに、同馬の馬券圏内突入は十分にありそうだ。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)クロノジェネシスの前走指数「-23」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.3秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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