【宝塚記念】追い込み台頭のカギは「押して逃げる馬」の有無 今年の狙いは先行馬?追い込み馬?

高槻とおる

宝塚記念の前後半ラップ差ⒸSPAIA

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同じ阪神内回りでも…

6月27日の阪神競馬場では、春の古馬GI戦線を締めくくる大一番、宝塚記念が行われる。コントレイル、デアリングタクトの牡牝三冠馬の回避は残念だが、連覇を狙うクロノジェネシスと、この春最大の上がり馬レイパパレが激突。カレンブーケドールの出走もあり、実力牝馬の戦いが注目される。ここでは、過去のレースラップから、今年のレース展開と、その展開を生かせそうな馬たちを探ってみたい。

宝塚記念は阪神芝2200m、内回りコースを使ってレースが行われる。阪神芝2200mの古馬重賞は宝塚記念しかないが、同じ内回りコースを使う阪神芝2000mの古馬重賞なら、大阪杯、鳴尾記念、マーメイドS、チャレンジCと4つある。阪神内回りコースの傾向を探る意味で、これらのレースラップを比較してみたのだが、200mの違いで傾向に大きな違いがあることに驚かされた。

阪神内回り古馬重賞のラップ比較ⒸSPAIA



芝2000mの4重賞は、最初の3Fを35秒後半から36秒台でゆったりと入り、ラストは速い上がりの勝負。過去10年(重・不良除く)の平均で、3Fの前後半差は大阪杯が-1.9秒、鳴尾記念が-1.0秒、マーメイドSが-0.4秒、チャレンジCが-1.9秒。上がりの速い決着という傾向は明らかだ。

ところが、発走地点が4コーナー側に200m寄る宝塚記念では、過去10年間の前3F平均が34秒9で、上がり3F平均は36秒0。前後半差はなんと+1.1秒で、同じ阪神内回りの中距離重賞でも、2000mの4重賞とはラップ傾向に大きな違いがある。

宝塚記念の過去のレース映像を見て、この前半のラップの速さに納得がいった。宝塚記念の発走地点は4コーナーの出口付近。1コーナーまでの直線距離が525mもあるうえに、ゴール前200mまでは下り坂。逃げたいと思えば、少々ダッシュが利かなくても、押して押して1コーナーまでポジションを上げることができるのだ。当然、下り坂を気合をつけて押していけばペースも上がるだろう。

過去10年中7年で上がりの方がかかっている

宝塚記念の前後半ラップ差を、過去10年で見てみよう。

宝塚記念の前後半3Fラップ比較ⒸSPAIA



前半が落ち着く年もあるのだが、過去10年中7年は3F前後半差がプラスで、上がりがかかる傾向。1.0秒以上かかっている6年を見ると、シルポート、キタサンブラックのようにスピードのある馬がスンナリ先手を取って飛ばしていくケースもあるのだが、2011年ナムラクレセント、2012年ネコパンチ、2018年サイモンラムセス、2020年トーセンスーリヤなどは、押して押して先頭に立って、結果的に速いラップを作ってしまっている。

過去にそれほど速いラップで逃げたことがない馬でも、先手を主張すると速いラップを作りやすい舞台なので、その点は注意しておきたい。人気の一角であるレイパパレは、逃げても2、3番手からでもレースができる馬。ユニコーンライオンや好発を切ったときのキセキなどが行く気を見せれば、行かせて好位に控える可能性が高そうだ。普通ならペースは落ち着くのだが、こうした先手主張の馬がハナに立つまで押して押してという形になると、意外にペースが速くなる可能性があることは覚えておきたい。

過去傾向では、そうした展開になったときに追い込み馬の台頭がある。前述の押して押して先頭に立った逃げ馬がいて、前半のペースが速くなった4年のレースの結果を確認してみよう。2011年は2着が4角11番手、3着に8番手、2012年は1着が4角12番手、3着が14番手、2018年は2着に4角13番手、3着に7番手、2020年は3着に4角8番手の馬が直線で脚を伸ばして好走している。

逆にいえば、先行馬のポジションがスンナリ決まるようなら、4角後方からの追い込みは難しいと判断できそうだ。今年のメンバーなら、それほど激しい先行争いはないと考えているのだが、予想外の馬が“大一番の逃げ”を狙ってきたときが怖い。自分としてはそうならないことを願うばかりだが…。

先行馬と4角で早目に進出できる馬が好成績

過去10年の宝塚記念で、4角先頭の馬の複勝率は40.0%、4角2~5番手の馬の複勝率は26.7%となっている。6~9番手の19.1%、10番手以下の11.6%に比べると、やはり4角で前目のポジションが取れる馬を高く評価するべきだろう。ちなみに、大阪杯は4角先頭45.5%、2~5番手30.2%、鳴尾記念は4角先頭40.0%、2~5番手29.8%、マーメイドSは4角先頭30.0%、2~5番手16.4%、チャレンジCは4角先頭40.0%、2~5番手28.6%という複勝率だ。

ペースに違いはあっても、結局のところ先行馬と、4角で早目に進出できる馬が活躍している阪神・内回りコース。宝塚記念は最初の先行争いが激しくなりそうなときに、追い込み馬に警戒が必要になるが、今年は比較的流れが落ち着くと考えているのだから、軸は4角で先頭、あるいは先頭をうかがう位置にいるはずのレイパパレでよさそうだ。今年は8日間開催の最終日ではなく、4日目の馬場コンディションでレースが行われることも、この馬にはプラスだろう。

好位で立ち回れるカレンブーケドール、勝負所で早目に動けるクロノジェネシスが強敵。心惹かれる人気薄馬がいないところが穴党として寂しいのだが、春の締めくくりの大一番は、強い牝馬の熱い戦いを楽しみたいと思う。

ライタープロフィール
高槻とおる
グリーンチャンネルで結果分析、レース分析番組の構成作家を担当していた。現在は経営者取材などライターとして幅広く活躍中。ラップを長年研究しているが、実は馬券はパドック派。


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