【エプソムC】多頭数で「内枠が地獄」の東京芝1800m 狙いは万能型ファルコニア
佐藤永記
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ここ3年で傾向がメチャクチャに
ここ最近のエプソムCは3年連続で馬場状態が悪く、梅雨入りのタイミングとの兼ね合いが予想へモロに影響を及ぼす重賞だ。ただ、2017年以前を見るとずっと良馬場で先行馬と差し馬が拮抗し、上がり勝負を中心としたレースとして安定していたのである。
この安定した世界が崩れたのは2018年だ。雨で重馬場となったにも関わらず、良馬場だった前年と同じ前半ペースで流れた関係で上がりはバッタバタになり、結果は中団からの差しが優勢の消耗戦となった。
翌2019年は稍重だが雨が降るなかでのレース。逃げたサラキア、2番手レイエンダが驚異の前半1000m63秒9という弩級のスローペースとなり、この2頭が入れ替わっただけのワンツーで波乱となった。勝ったレイエンダが最速上がりの32.7。逃げたサラキアも33.0で上がるくらい前が脚に余裕をもったままだったのである。いくら馬場が悪かった、フルゲートではなかったとはいえ、この弩級のスローペースは今年の参考には全くならないだろう。
昨年となる2020年はさらに馬場が悪く不良馬場。逃げたトーラスジェミニが3着に粘り、2番手ダイワキャグニーが勝っている。なんだ、前年と一緒じゃないかと思いきや、こちらは前半1000m59秒1と、不良馬場を考慮しなくてもペースは速めで、馬場を考えれば弩級のハイペースと呼んでいいものだった。
先週の安田記念では是非ロマン逃げを魅せてほしかったトーラスジェミニだが、昨年エプソムC時の逃げは2番手を3馬身ほど離し、馬群は縦長になっていたという大逃げ気味の内容。このトーラスジェミニの逃げを後続が放置した結果、追い込んでも間に合わないリードで、まるでダート1800mの未勝利戦みたいな状況となり3着に粘っていたのである。
馬場が悪い近年だがレース内容がこうも年によって違い、展開の極端な年が続いてしまうと、エプソムCの過去傾向を追っても意味があると思えない。出走馬の傾向に対して個別に慎重に検討する必要が出てくる。1800mという距離を考えても、一流マイラーなら安田記念に向かうし、一流中距離馬なら宝塚記念に向かうはず。出走馬のレベルが近くなりがちな点も考慮すると難解感が強い。
さらに今週末の天候が微妙だ、原稿執筆時点で各天気予報サイトの予報は曇りで耐えるか、雨が続くかで真っ二つに割れているのである。つまり関東地方が梅雨入りするか、しないかの瀬戸際だということだ。筆者は土曜あたりに雨が始まって梅雨入りすると読んではいるが、微妙なのは事実……。
もはやお手上げなのか……いくらエプソムCの過去を見ても「クセが強いんじゃ!」と頭を抱えていたが、配信中、視聴者とのチャットをするうちに良いヒントを得ることができた。
『東京芝1800mをちゃんと見つめ直す』
そのヒントとは「東京芝1800m」という条件で考えることだった。エプソムCが近年極端な展開であったため、そこから考えて混乱していた。ならば、コース条件まで幅を広げて検証すればなにか見つかるかもしれない。いろいろチェックしてみると一つの傾向が浮かんだ。
16頭立て以上では内枠が苦戦
東京芝1800mの古馬戦(3歳上含む)で16頭立て以上の場合の枠番別成績を2018年から直近まで出してみた結果、1枠が【0-2-0-26】、2枠が【0-2-1-25】と大苦戦していることがわかる。この条件にした理由だが、2歳戦、3歳戦や少頭数のレースを含むと割と内枠が絡んでおり結果が平均化されていたからである。
東京の芝1800メートルは2コーナーへ斜めから入るという特殊なスタート位置だ。一見、外枠が振り回される構造のため力差のある2歳戦や3歳戦ではそれがしっかり傾向として出るのだが、古馬戦でかつ多頭数となると位置取り争いがしっかり発生し、外枠勢に実力があると被せに来ることができてしまう。内枠がしっかりスタートから主張できないと中枠・外枠勢に包まれてズルズル位置が下がったり、強引に突っ張り逃げると無理が祟って垂れたりするというわけだ。
1枠から2着に残った馬には昨年のエプソムCでのソーグリッタリングがいるが、近隣枠から包まれず、5番手付近でレースできたという状態。トーラスジェミニのハイペース逃げを後方集団が追いかけたがらない展開も助けとなったので、ここまで状況が揃わないと厳しいといえるだろう。
今年の登録馬を見るかぎり、ガリガリに飛ばす逃げを打ちそうな馬はおらず、展開的には4年前までのエプソムCにあった標準的な展開になり、上がり勝負になりそうではある。ただ、馬場に関しては雨が降るのかは微妙で、馬場が悪くなれば前が残る近年傾向も見逃せない。
というわけで良馬場と重馬場の予想を立てておき、両面作戦でいこうと思う。
先行力も上がりも兼備のファルコニア狙い
良馬場では平均からスロー気味の前半から、後半上がり勝負になるため、キレ勝負の馬から抽出したい。1頭目に挙げるのはファルコニア。前走の難波Sは3番手付近から32.5の上がりで抜け出し勝利した。最速上がりが31.9になるという上がりが出やすい馬場と展開だったのだが、オープン昇級緒戦になるものの今回狙いたい条件に合致しているといえる。
もう1頭取り上げると、人気どころだが前走マイラーズC勝ちのアルジャンナだ。後続の追い込み勝負のなかでケイデンスコールに0.2秒差で負けたが、上がりは1位の33.7。阪神より長い直線ならより生きる可能性があるだろう。
重馬場想定では先行力を評価して狙いたい。先行力重視なら、こちらもファルコニアが必要となる。まだ一度も良馬場以外で戦っていないが、条件クラスのものとはいえ近況は高い先行力で結果を出しているので素直に評価したい。
重馬場向きからはワンダープチュックの名前を取り上げたい。重・不良成績が通算【3-1-0-3】。オープンでは足りない印象もあるかもしれないが、前走休養明けのメイSでは良馬場とはいえ雨のなか中団から4着まで追い込んでいる。毎日王冠でも11頭立て8着に敗れはしたものの10番手から追い込んで伸びてはおり、ノーマークならば買っておきたい。
●良馬場馬券作戦
単勝 ファルコニア
ワイド ファルコニア-アルジャンナ
●重馬場馬券作戦
単勝 ファルコニア・ワンダープチュック
ワイド ファルコニア-ワンダープチュック
そして、この推奨馬たちを狙う追加条件として「1、2枠に入らないこと」を加えたい。1枠、2枠に入ってしまったらその馬の馬券は買わないことにしようと思う。とにかく決め打ちだ。
<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。
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