【日本ダービー】エフフォーリア、サトノレイナスに黄信号で大波乱必至

Ⓒゲッティイメージズ
エフフォーリアは、サートゥルナーリアと似ている!?
皐月賞を優勝し、4戦4勝の無敗馬エフフォーリアが断然1番人気の様相だ。同馬は皐月賞で2着タイトルホルダーを3馬身の完勝を収めており、指数も中距離以上ではNO.1の「-21」を記録。自在に立ち回れる強さもある。ただ、2019年に皐月賞を優勝して4戦4勝のサートゥルナーリアが断然の1番人気を裏切り、日本ダービーで4着に沈んでいるように、歴史的に皐月賞で目一杯に走った馬は、日本ダービーでは余力がないことが多々ある。
エフフォーリアは休養明け、凡タイム決着となった共同通信杯を使い、本番の皐月賞で指数を大幅に上昇させた馬。その強さは認めても、今回それ以上の状態に持ってこられるかとなると疑問符が付く。同馬はノーザンファーム天栄から帰厩してから17日でレースを迎える。帰厩してから出走までの期間が短いだけならまだしも、この中間の追い切りが軽い点も気がかりだ。
私の目にはエフフォーリアがサートゥルナーリアのように映るが、他馬との能力差から、皐月賞ほどに走れなくとも上位入線という結果ならば、十分にあるだろう。2019年の皐月賞はサートゥルナーリア、ヴェロックス、ダノンキングリー大戦で3頭とも同じタイムの決着(つまり、同指数)だったが、今年はその年よりもエフフォーリアとその他の馬では能力差があるからだ。その点ではサートゥルナーリアよりも少しだけ評価できる。

サトノレイナスはウオッカか?それともレッドリヴェールか?
サトノレイナスは阪神ジュベナイルF2着、桜花賞2着の実績馬で、指数は牡馬に混じっても上位の存在となる。ただ、2014年に牝馬ながら日本ダービーに出走したレッドリヴェールは、阪神ジュベナイルF1着、桜花賞2着とサトノレイナス以上の実績を持ちながら、ワンアンドオンリーが優勝したダービーでは12着と惨敗した。休養明けの桜花賞で好走して、さらにダービーで上昇するということは簡単ではないということだ。
2007年にはウオッカが牝馬ながら日本ダービーを優勝しているが、ウオッカは日本ダービー出走前の時点で指数上、牡馬を圧倒している存在だった。また桜花賞では能力を出し切れておらず、日本ダービーに向けて余力もあった。今回のサトノレイナスは桜花賞で前崩れの展開に恵まれて、自己最高指数を記録しており、レース内容、ローテーションともにレッドリヴェールの方に似ている。
それに次項目で触れるルメール騎手のお手馬だったグレートマジシャンが毎日杯で2着に敗れ、賞金的に日本ダービーが危うくなってから、サトノレイナスの日本ダービー出走が決定した点からも、ここへの出走が既定路線だったかは懐疑的である。少なくとも早い次点から、日本ダービーを目標に掲げていたウオッカとの違いを感じる。
風が吹いたか!?グレートマジシャン
グレートマジシャンはデビュー2戦目のセントポーリア賞で、2着バジオウ(後のプリンシパルSの覇者)に2馬身半差をつけて勝利した馬。セントポーリア賞当日は、雨の影響で決して高速馬場ではなかったが、同レースでは1分46秒5の破格のタイムで勝利し、後に行われた共同通信杯を上回る指数「-16」を記録した。
セントポーリア賞で指数「-16」を記録した馬は、他にドゥラメンテがいるが、同馬はその次走の共同通信杯で2着に敗れた後、皐月賞と日本ダービーを連勝。キャリア2~3戦目の1勝クラスで、3歳重賞レベルの指数を記録するような馬は素質馬であり、その後の出世が約束されたようなものである。
前走の毎日杯ではレコードタイム決着での2着、指数も優秀。着実に成長しているところを見せた。しかし、凡タイム決着だった共同通信杯で能力を出し切らず、余力があったシャフリヤールに毎日杯でクビ差敗れたことで、賞金的に日本ダービー出走が危うくなり、NHKマイルC出走プランも浮上したが、ノーザンF生産馬を始め、出走回避馬が続出。そして日本ダービーがまさかのゲート割れとなった。どうやら天はグレートマジシャンに微笑んだ? いや、微笑ませたようだ。
ただ、今回は前走で超高速馬場の緩みない流れを経験した後の芝2400m戦になるので折り合い面での課題はある。毎日杯で2番手でレースを運び4着に敗れたルペルカーリアが、次走芝2200m戦の京都新聞杯で、折り合い欠いてオーバーペースで逃げて2着に敗れたように、スピード競馬からの距離延長となると、競走馬はメンタル的に行き切りたくなる。今回、逃げ宣言しているバスラットレオンがどこまでペースを引き上げるかが鍵となるだろう。速い流れで折り合いが付けば、同馬が勝ち負けする可能性が高いと見ている。
その他の能力値上位馬
【能力値3位 バスラットレオン】
前々走のニュージーランドTで皐月賞と同等の指数「-21」を記録。単純に前々走と同じくらい走れれば、今回のレースでも十分にチャンスがある。ただ前々走はあくまでマイルでの好指数。洋芝でかなりのハイペースとなった札幌歳2Sで2番手から3着に粘った内容からは、持久力はあると推測されるが、今回は近5走で全てマイル戦を使っているところから、一気に距離が延びる。また今回ももっとも持久力を要求される逃げ戦法を取るようなので、楽ではないだろう。
一方、プラスになるかもしれないのが前走NHKマイルカップで落馬したこと。全くレースに参加しなかったので余力を残せたとも言える。同じ芝1600mのNHKマイルCを好指数勝ちしたキングカメハメハやディープスカイは、ダービー馬となっていることを考えると、可能性は高くないが、ひょっとしたらという気がしなくもない。
【能力値5位 タイトルホルダー】
東京スポーツ杯2歳S、ホープフルSではダノンザキッドに敗れたが、前々走の弥生賞ディープインパクト記念では大勢逆転。好発を決めて楽にハナを主張し、楽々の逃げ切り。前々走は前哨戦らしく、他馬が競って来ず、マイペースで逃げられたのも好走要因だが、タイトルホルダー自身も成長力を見せた。
さらに前走の皐月賞では、厳しい流れを先行して2着に粘っており、決してフロックではない。それだけに前走からさらなる上昇があるかとなると微妙な面もある。レース展開次第では、ノーマークにはできないか。
【能力値5位 レッドジェネシス】
タフな馬場で行われた前々走のゆきやなぎ賞では、出負けして後方からの競馬となったが、3角手前で動いて一気に動いて2列目外まで並びかけ、直線序盤で早々に先頭に立って4馬身差の完勝を収めた。続く前走の京都新聞杯でも緩みない流れを差し切って連勝。ルペルカーリアがペースを引き上げる中、3角まで後方のインコースを追い上げ、3~4角でも上手く馬群の中目を通し、4角で外に出して3列目。直線序盤ですぐに伸びて、2列目を切り裂いて一気に2番手に上がってくる競馬と、展開、そして立ち回りの上手さが上手く噛み合った感がある。
しかし、芝2200mのタフな競馬で急上昇したのは確かで、それだけに距離2400mへの不安は全くない。今回もレースが流れてを持久力を問われるような流れになれば、勝ち負けに加わってくる可能性は十分ある。重い印を打ちたい馬だ。
穴馬は近走充実のアドマイヤハダル
アドマイヤハダルは今春の若葉Sを、好位から突き抜けて3馬身差の圧勝。休養している間に大きく成長したことをアピールする走りだった。さすがに休養明けであれだけ能力全開してしまうと疲労を懸念してしまうようで、前走の皐月賞前はあまり強い調教ができなかったが、それでも4着に善戦。高い潜在能力を感じさせる結果を残した。今回は好位~中団で立ち回る馬にとって、もっとも乗り難しい8番枠の最内を引いてしまったが、前走以上の状態が期待できるだけに、上位争いに加わってくる可能性は十分ある。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)エフフォーリアの前走指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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