【平安S】明暗くっきり! 高速ダート適性があったオーヴェルニュ、なかったマルシュロレーヌ

勝木淳

2021年平安ステークスのレース結果ⒸSPAIA

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中京代替重賞のポイントは

代替開催によって中京で施行された平地重賞はここまで京都金杯(ケイデンスコール)、シンザン記念(ピクシーナイト)、日経新春杯(ショウリュウイクゾ)、シルクロードS(シヴァージ)、きさらぎ賞(ラーゴム)、京都新聞杯(レッドジェネシス)の6つ。レッドジェネシス以外は中京や左回りに好走歴をもつ馬たちだった。中京ダート1900mで行われた平安Sを勝ったオーヴェルニュも今年の東海Sを含め中京ダートは通算3戦3勝。今後の代替重賞のヒントにしたい。

中京ダート1900mは2012年改修後に生まれたコースで、主に2勝クラス以下で使われ、3勝クラスはこれまで4レース、オープンや重賞は昨年のシリウスS(阪神開催の代替)、今年2月アルデバランSの2レース、平安Sは3レース目ではじめて重馬場で行われた。こういった事情があるので、1.54.7のレコードタイムはさほど強調するようなことではない。

過信禁物、アメリカンシード

オーヴェルニュは東海S勝利後に挑戦したフェブラリーSで1.8差11着と崩れて休養。馬体回復に努め、3カ月ぶりの実戦復帰初戦で重賞を勝った。この立て直しは大きい。今後も高速ダートの中距離戦ならば、大きいところを狙える。

高速ダートへの適性は父スマートファルコン、母ギュイエンヌ双方から受け継いだ。スマートファルコン産駒はダート重・不良だと【24-26-24-186】勝率9.2%、複勝率28.5%。良馬場(勝率6.2%、複勝率18.5%)より数字がよく、ダートの道悪血統である。母ギュイエンヌはタニノギムレット産駒で現役3勝中2勝が東京ダート1400mの重・不良だった。母から左回りの高速決着に強いという適性を受け継ぎ、父から中距離適性を譲り受けた。帝王賞は梅雨時に行われ、道悪になることも多い。今年の梅雨は早く、オーヴェルニュに追い風になりそうだ。

2着は1番人気アメリカンシード。こちらも勝ち馬と同様に、ダート重賞初挑戦だったマーチS2.8差14着から巻き返した。前走は落鉄もあったが、自分のリズムで運べずに揉まれてしまったことも大きかった。ルメール騎手は前走を踏まえ、大外枠から多少強引でもいいから迷わずハナを奪いに行った。首の使い方やコーナーリング、向正面での外に流れ気味な走りなど、まだまだ未完成で荒削りな面が多く、もろいところもありそうで、条件、相手、枠順といった要素に左右されそうだ。今回の2着で次走以降も上位人気必至。無条件で信用していいものか。今後はキャリアを重ねて改善したい。

道悪に泣いた3、4着馬

3着3番人気マルシュロレーヌは昇級後、牝馬限定戦に出走、混合重賞は初挑戦だった。1、2着馬は逃げ馬と番手にいた馬たち、いわゆる行った行ったの決着でよく差してきた。前半から揉まれないように外目を意識して進めたため、距離ロスが多く、最後も進路はきれいにとれたものの、前にいた2頭に並ぶまでには至らなかった。

揉まれるリスクを避けたために大味な競馬になったが、現状ではこういった競馬がマルシュロレーヌの持ち味を引き出すためには必要で、高速決着ではどうしても末脚が鈍ってしまう。今後も器用な競馬ができないと、時計が速くならない地方交流重賞では結果を出せても、JRA重賞だと壁に当たりそうだ。

4着は10番人気のアルドーレ。4角14番手から大外をよく追い込んできた。前走アンタレスSもドン尻から追い込んで5着と歯がゆい結果が続くが、不利な条件でも最後は差を詰められるように充実期にはある。本来は時計勝負では分が悪く、乾いた馬場向き。夏場を迎え、良馬場のダートであればチャンスはありそうだが、もう少し流れに乗って競馬をしたいところだ。


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。

2021年平安ステークスのレース展開図インフォグラフィックⒸSPAIA




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