【オークス】魔の桜花賞ペースを押し切ったソダシ有力 穴はミモザ賞を高指数勝ちスルーセブンシーズ

山崎エリカ

2021年オークスのPP指数ⒸSPAIA

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ソダシが能力値、最高値ともに1位

桜花賞後、クロフネ産駒のソダシに「距離不安説」が流れた。阪神ジュベナイルF2着、桜花賞4着ながら、オークスでは逃げて12着に大敗した2013年のクロフネサプライズのイメージがあるのだろうか?しかし、クロフネ産駒のホエールキャプチャは、阪神ジュベナイルF2着→桜花賞2着→オークス3着。同産駒のブラックシェルは、皐月賞6着→日本ダービー3着と巻き返しており、その次走の神戸新聞杯でも2着に好走と、芝2400m戦を得意としていた馬である。

2021年オークス出走馬のPP指数ⒸSPAIA



クロフネ産駒というよりも、一気距離延長のオークスの舞台で、逃げることが難しいということなのではないか?距離延長となると、なるべく中盤で脚をタメたいところだが、タメすぎれば後続が早めに追い上げてくるだろうし、かといってペースを引き上げれば苦しくなる…。ましてそれが有力馬であれば、後続全頭の目標になってしまう。

実際、オークスを逃げ切った馬は、1991年のイソノルーブルまで遡らないといない。逃げ馬不在となった今回で、ソダシが逃げた場合は不安であるが、内目の枠に前へ行ってこそのウインアグライアがいるので、同馬の2番手を狙ってくると想定している。そうではないかもしれないが、何が逃げるのかわからないレースでは、展開予想に時間を費やしても無駄。経験上、“強いものは強い”という感覚で予想した方が、意外と上手くいくことが多い。

桜花賞後、オークストライアルの忘れな草賞、フローラS、スイートピーSが行われたが、これらの決着指数は「-14」。桜花賞の決着指数「-19」を上回ることができなかった。オークスはトライアル組が活躍する年もあるが、そういった年は桜花賞と同等かそれに準ずる指数で決着していることが多い。桜花賞のレベルに準ずるトライアルが出現しなかった以上、今年は桜花賞組を中心に考えたい。

その筆頭が桜花賞の優勝馬ソダシである。今年の桜花賞は、メイケイエールの暴走捲りによって、改装前の阪神で行われていた桜花賞のような、淀みのない流れ。いわゆる“魔の桜花賞ペース”だっただけに、前へ行った馬のほうが強いレースをしている。つまり、先行策で優勝したソダシは、とても強い内容だったことになるのだ。また、札幌2歳Sでも速い流れを先行し、あのバスラットレオンを撃破しているように、週末の雨の影響で時計が掛かるほどチャンスが大きくなるだろう。

その他、能力値2~5位を紹介

【能力値2位 ファインルージュ】
デビューから上昇一途で今年1月のフェアリーSを優勝し、ぶっつけ本番で挑んだ桜花賞でも3着と好走。フェアリーSはクールキャットが早めに動いてペースを引き上げ、激流に持ち込んだことで、控えて中団後方で脚をタメたことが功を奏したもの。また、桜花賞も超高速馬場のレコード決着となった中で、内枠を利してソダシの直後から4角まで最短距離を通り、徹頭徹尾ロスのない競馬をしたことが好結果に繋がった。フェアリーSも桜花賞も立ち回りの上手さが講じた部分もあったが、チャンスをしっかりと生かしたことは褒めたい。同馬はキャリアも4戦と浅い馬だけに、大きな伸び代が期待できる。

【能力値3位 アカイトリノムスメ】
新馬戦こそ7着と完敗だったが、その後に3連勝でクイーンC優勝と軌道に乗った。桜花賞以前はゲートに甘さを見せており、出負け続きだったが、前走では五分のスタートを切ってソダシを右斜め前に見る形でレースを運び、3~4角では中目に出しながらの競馬。外からメイケイエールが捲って先頭に立ったことで4列目まで位置を下げたが、直線序盤でしぶとく伸びて徐々に前との差を詰める一方、ソダシにはどんどん離されてしまう形。

しかし、ソダシの脚が上がったラスト1Fで同馬との差をまた詰めて0.2秒差(4着)に好走したことから、速い上がりに対応できなかった可能性が高い。超高速馬場の決め手比べだと分が悪いが、時計が掛かればよりチャンスが広がる。

【能力値4位 ユーバーレーベン】
二の脚が遅く、常に後方からの競馬となってしまう馬。レースが平均ペースで流れた3走前の阪神ジュベナイルFは、ラスト1Fで伸びて、ソダシ、サトノレイナスとの接戦に加わるかの勢いで3着に好走した。しかし、フラワーCはかなりのスローペースで前が楽な展開を、後方から。向正面で中団の後ろまで挽回し、直線で一気に追い上げてきたものの、2着エンスージアズムに並びかけるのが精一杯の3着だった。

また、前走のフローラSも逃げ馬が後続を離し気味に逃げたが、明確にスローペース。内枠でスタートも悪くなかったので、中団中目の位置が取れたが、2角では進路が狭くなって外の馬に接触する雑な入り方で、前目内目が取れず、3~4角では中団外目から追い上げて行く形。4角4番手以内が1着、2着、4着と上位入線した中で、10番手から3着と好走した点は褒められるが、位置取りがあまりに後方過ぎてしまったこと、またその位置から差し切れるだけのトップスピードがないのが明確だった。馬券圏内に食い込めるとすれば、前がやりあって展開に恵まれるか、スローペースなら好位を取るかのどちらかになるだろう。

また、疝痛でチューリップ賞を回避して以来、馬体重が減り続けているのも減点材料。トライアルで体を絞ってしまうと、本番で強い追い切りが出来ないことが弱点となるが、同馬も終い重点の軽い調整になっている。

【能力値5位 クールキャット】
3走前のフェアリーSでは、出負けしたのに2角から動いて、向正面ではもう先頭に立ってしまう等、折り合い難だった影響もあって、マイル~1800m戦ではひと息だった。しかし、前走のフローラSでは過去のレースとは比べものにならないほどスムーズな競馬。ゆったりと先行して優勝と、距離を延ばして活路を見出した。東京芝2400mへの見通しは明るいだろう。

今回は折り合いに定評のあるルメール騎手から、武豊騎手に乗り替わる。その点は少なからず減点材料だが、武豊騎手とてそこまで折り合いが苦手な騎手ではない。おそらく後方で押さえつける、前々走フラワーC時のように折り合いを付けてくる可能性が高い。そのフラワーCではユーバーレーベンを上回るメンバー中最速の上がり3Fタイムを記録しており、そういう競馬ならチャンス十分。重い印を打ちたい馬だ。

穴馬はミモザ賞が高指数のスルーセブンシーズ

前半4F52秒9-後半4F47秒4の超絶スローペースとなった中山芝1800mの新馬戦で、中団からメンバー最速の上がり3Fタイムで差し切って勝利したスルーセブンシーズ。この新馬戦の3着馬が、後のスイートピーS2着馬アラビアンナイトであるように、メンバー質の高い一戦だった。

昇級戦となった次走では、逃げ馬が2番手以下を引き離してペースを引き上げて行く中で、位置取りが後方2,3番手と後ろ過ぎたこともあり、早めに動いた前2頭を捕らえることはできなかった。しかし、ここでもメンバー最速の上がり3Fタイムを記録しており、素質の一端は見せられている。

そして前走のミモザ賞が、忘れな草賞、フローラS、スイートピーSの決着指数を1pt上回る指数「-15」で完勝。前へ行った2頭が競り合ってペースを引き上げたことで、展開に恵まれた面はあるが、それでも2着スウィートブルーム(次走のスイートピーS4着)に2馬身半差、3着馬に6馬身半差を付けての完勝だった。このようにタフな馬場の芝2000m戦で大幅に上昇した辺りから、長距離志向の高い馬と受け取ることができる。

タフな馬場での激走は消耗度が高く、その次走でダメージが出ることが度々あるが、伸び盛りの3歳馬で、この中間の迫力ある動き、加速力ある動きからもそれを感じさせない。人気薄のここは一考の価値があるだろう。


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ソダシの前走指数「-19」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.9秒速い
●指数欄の背景色の緑は芝、茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる女性予想家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。


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