【オークス】王道血統と王道生産者 2つの条件を満たす大穴エンスージアズム

佐藤永記

オークスの父血統別成績ⒸSPAIA

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距離実績がないオークス 適性を血統から探る

オークスをデータで予想するうえで難儀なことといえば距離経験。牡馬クラシックとは違い、1冠目がマイルの桜花賞であり、オークスとの距離差が800mもあるということだ。誰が考えても「桜花賞とは全く違う能力」が試されることになるオークス、牡馬以上に2400mで走れるのかを読み解くのが難しい。

しかも前哨戦である2000mのフローラSは時期的に2回東京の開幕週で前が残りがちなレース。さらにそこから400m延びた場合の結果を予想する上で、果たして参考になるかと言われると微妙で、過去10年を見てもフローラS組の成績は【0-5-3-37】と善戦はするが勝馬は出ていない。むしろ例年2回阪神の中盤に開催される忘れな草賞組が【3-0-1-7】と3勝しており、開幕週ではない芝状態がオークスに近いのだろう。

これを踏まえると、やはり出走経験からオークスの答えを出すのは厳しいと結論付けたい。そこで今回は、出走経験ではない要素で東京2400mをいきなり走れる馬を探す方法として、馬体の傾向に繋がる血統を用いたい。

まずはざっくりと父系を見るとサンデーサイレンス系の父を持つ馬が過去10年で7勝している。やはり近年活躍している王道血統が基本なのだろう。ただ、出走馬全体の勝率から複勝率まで見ると、サンデーサイレンス系の勝率5.7%、複勝率16.4%に対し、それ以外の馬も勝率5.4%、複勝率17.9%であまり変わらない。

オークス過去10年 血統別成績ⒸSPAIA


だが、父がサンデーサイレンス系でない馬で過去10年優勝した3頭を見ると桁違いの馬ばかりだ。2020年優勝のデアリングタクトは父がエピファネイアだが単勝1.6倍、2018年優勝のアーモンドアイは父ロードカナロアで単勝は1.7倍、いずれもオークス前の時点で誰もが疑わない本命候補だった。

あと1頭は2017年のソウルスターリング。桜花賞は1番人気3着と敗れたが、オークスでも1番人気(2.4倍)となり、それに応えた。3頭ともオークスまでの成績に文句をつけられることなく1番人気となって結果を出した馬ばかりで、父サンデーサイレンス系でなくても「ぶっちぎり」で黙らせるものをもっていないと厳しいともいえるだろう。

基本となる父サンデーサイレンス系について、母父の系統の組み合わせを見るとニアークティック系との組み合わせが7勝中6勝、【6-4-2-35】となっている。そして、6勝全てはノーザンダンサーからの流れだ。

結局のところ、王道中の王道血統が強いのである。そして、そんな王道の産駒を多数取り揃えられる体制を整えているのはどこ? と生産者別成績を見るとノーザンファーム(5勝)という結論になってしまうのだ。

オークス過去10年 生産者別成績ⒸSPAIA


社台ファーム(3勝)まで含めると社台系は8勝ととにかく圧倒的だ。他の2勝となっているうち、長谷川牧場生産の馬はデアリングタクト。そして高昭牧場生産の馬は2013年優勝のメイショウマンボ(父スズカマンボ・父父サンデーサイレンス)である。

今回のオークスでノーザンファームと社台ファーム、そして社台コーポレーション白老ファームまで含めると登録21頭中8頭を数える。だが、一番人気になるであろうソダシはノーザンファーム産だが父はクロフネ。血統だけ見るとオークスで大丈夫なのか不安がある。

血統も生産者も両方満たしたエンスージアズム

「王道中の王道血統」である父ディープインパクト(系)、母父がノーザンダンサー系で、生産者が社台系の馬は今年のオークス登録馬に2頭しかいない。1頭目のエンスージアズムは父ディープインパクト、生産は社台ファームだ。桜花賞は8着に敗れたが通過順位は3角11番手、4角9番手でマイルながら位置を上げながらゴールはできていた。岩田望来騎手がうまく乗れるかどうかに懸かってはいるが、面白い存在だろう。

もう1頭はステラリアで父はキズナ、生産は社台コーポレーション白老ファームだ。先に紹介したステップの主流である今年の忘れな草賞勝ち馬である点も魅力的である。

そして最後に、非社台系から推奨したい馬がいる。パープルレディーだ。父ディープインパクト、母父がホワイトマズルという血統で、唯一2400mを経験している馬でもある。3番人気だった前走フローラSは後方から不発に終わったが、開幕週の高速馬場だった影響から、後ろでは勝負にならなかったため参考外とすれば魅力的な1頭だろう。母父のホワイトマズルは種牡馬として2002年オークス馬スマイルトゥモローを輩出している。

この2002年のオークスは良馬場ではあったが時計のかかった馬場状態で、勝ち時計は2.27.7という遅さだった。今年は土曜まで雨が続きそうで、当日晴れたとしても馬場にダメージの残る可能性があり、時計のかかる馬場でホワイトマズルの血が騒ぐかもしれない。パープルレディー自体は馬体重420kg前後と小さい馬体であるため一見非力そうに感じるが、血統に秘められたパワーが発揮されるかもしれない。

馬券はこの3頭(エンスージアズム、ステラリア、パープルレディー)の単複でいきたい。ステラリアはともかく、他の2頭は高配当が見込めるので楽しみだ。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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