人気薄での好走が増加中! 「コンプレッションフード」を使いこなしている最もアツい厩舎とは?

三木俊幸

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単勝平均配当は1,112円

馬の顔の3分の2を覆うぴったりとしたマスク、「コンプレッションフード」は今流行りの馬具。騎乗中に緊張しやすい馬や、馬房で落ち着きのない馬に効果的だと言われている。昨年、コンプレッションフードを着用して重賞を勝利した馬について取り上げた(メンコの下に謎のマスク 好走の秘密は「ツボ」にあり!)が、着用した馬が実際どれくらいの割合で好走しているのかということについては、触れることができなかった。

そこで今回は2021年4月17日〜5月9日までの開催8日間、合計288レースの映像や競馬場で撮影した写真をもとに出走馬の全頭チェックを実施しデータ化してみた。

コンプレッションフード着用馬最近の成績と使用調教師データ,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


コンプレッションフード着用馬の成績は【6-8-3-48】、65頭中3着内に好走した馬は17頭で、勝率9.2%、連対率21.5%、複勝率26.2%という成績だった。数字だけを見ると特出した点はないが、注目したいのは好走馬の人気。1番人気がゼロだったのに対し、7番人気以下から5頭が3着内に好走するなど、穴をあける場面が多く見られた。

平均の配当は単勝が1,112円、複勝が356円。単勝の最高配当は4月24日の東京10Rを12番人気で勝利したハーフバックの2,630円、複勝は4月25日の阪神8Rで11番人気3着だったピュリフィアンの1,500円が最高配当だった。コンプレッションフードを着用する馬は気性面に課題がある馬も多いだけに、人気薄での激走が起こりやすいと言えるのかもしれない。

注目は奥村豊厩舎

では、このコンプレッションフードを効果的に使用している厩舎はどこなのか。3着内に入った馬を管理する厩舎別データで見ていく。東西別に分けると関西が五十嵐、石坂、石橋、奥村豊、川村、木原、杉山晴、高橋亮、松下、南井の10厩舎、関東は高木、和田勇の2厩舎のみで関西が圧倒的に多い。

年齢別の成績では30代が2人、40代が4人、50代が2人、60代が4人。開業年数では1〜5年目が2人、6〜10年目が4人、10〜15年目と16〜20年目が1人ずつ、21年目以上が4人という内訳で、意外とベテラン調教師も多いことが見てとれる。

しかし、30〜40代で開業10年目以内の若い調教師が半数を占めており、馬の性格に合わせて柔軟にコンプレッションフードを活用しているという印象を受ける。特に奥村豊厩舎は期間内にコンプレッションフードをつけていた馬で3勝、2着2回、3着1回と圧倒的に好成績を残している。

奥村豊厩舎 4/17〜5/9の成績ⒸSPAIA


22回のレースに管理馬を出走させ、そのうちコンプレッションフードを着用していたのは59.1%にあたる13回。勝率25.0%、連対率41.7%、複勝率50.0%と好走確率もかなり高い。対してコンプレッションフードを着用していなかった時の成績は【0-0-1-9】と大幅に落ち込む。

結果を残している馬の中には、福島牝馬Sを勝利したディアンドル、オープン特別で好走を続けているアッシェンプッテル、さらに集計期間内に出走はなかったがチューリップ賞3着のストゥーティなどもいる。どの厩舎よりも積極的に取り入れ、なおかつ結果も残していることからも、今最もコンプレッションフードを使いこなしている厩舎だと言えるだろう。

シャドーロール着用馬には注意

最後に、テレビの映像や実際にパドックで遠目からでもコンプレッションフード着用馬を見分けられるポイントについて紹介する。

一般的にはコンプレッションフードの上に普通のメンコをしているが、奥村豊厩舎の場合はコンプレッションフードを単独で着用していることが多い。頭絡は茶色、ロゴなしで無地の黒いフードが特徴だ。

その他、ロゴが入っている場合は左または中央部分の先端に「HIDEZ」と書かれている。テレビのパドック映像と同じように左横から見た際には、頭絡のすぐ下に文字が見えるので遠目からでも比較的見分けがつきやすい。

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ただ注意したいのは、シャドーロールを着用している場合。5月8日の中京5Rに出走していた杉山佳明厩舎のキーチャンスを例にとって見てみると、赤いシャドーロールの下に赤いコンプレッションフードを着用していた。角度によっては一体化して見えてしまい、気がつかないこともあるので、しっかり確認する必要がある。

ブリンカー着用馬のように成績欄に表示されることがないコンプレッションフード。しかし、注目すべき価値がある馬具だと考える。継続して追いかけることは難しいことではあるが、新たな発見を生むことも多いので、これからもコンプレッションフード着用馬を追いかけていきたい。

ライタープロフィール
三木俊幸
編集者として競馬に携わった後、フリーランスとなる。現在は競馬ライターとしてだけでなく、カメラマンとしてJRAや地方競馬など国内外の競馬場で取材活動を行っている。

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